主人公をおもう:主人公は想う(2)
前作「主人公を思う:主人公は想う」ではまさかの日間短編1位をありがとうございました!
拍手にて、萌香ちゃん中心で続編が読みたいとの温かいお言葉を頂きましたので、続編というか蛇足というか、そんな感じで勢い作成。
前のを読んでなくても、一応大丈夫じゃないかなあとは思います。
どうぞよろしくお願い致します。
私は傍観者である。
SFから歴史ジャンルまで、RPGに始まり恋愛シュミレーションからSTG、漫画にゲーム何でもござれと幅広く触手を伸ばした40年のオタク歴を閉じ、奇想天外にも再び今は花の女子高生を満喫している、転生者でもある。
ありとあらゆる乙女ゲームの設定が蔓延するこの世界には、ありとあらゆる乙女ゲームの主人公たちが存在している。彼女たちは皆が皆、ギリギリ重ならないテリトリーを持っているようだった。
私、こと輪島巡は、そんな奇妙な世界の中で、およそ傍観者という立場を貫いている。つまるところ、単純に主人公の近くに知識を持って在っただけの一般市民であるとも言う。
幼馴染は、今では押しも押されぬトップアイドルになった。彼女を支え、愛し、ときに切磋琢磨する芸能業界の男たちは、誰も彼もがイケメンである。
小学生時代のある同級生は、今はどこぞの御曹司5人兄弟の家で家政婦をしているらしい。彼女に支えられ、愛し、ときに18禁展開へ突入しそうになる男たちは、誰も彼もがイケメンである。
中学生時代のある同級生は、今は海外の地で勉学に励んでいるらしい。金髪だの紅毛だの、様々な文化と交流を深める彼女に各々の愛の語りを披露する男たちは中略。
その他後略。
細く長くの付き合いをする私の人脈には、現在の「主人公たち」の様子が割合正しく報告される。
妙なことだが、もしかして自覚していないだけで、実は私、傍観者補正とかそういうスキルを保持してるんだろうか。
まあ、便利だから不問とするけど。
そして今、高校生になって。相変わらず「主人公」が私の周りで青春を過ごしている。
例えば右斜め前で頭を抱える美少女、夏坂佳織。
彼女は勉強を苦手とする運動大好き快活少女だ。夏休みの出張バイト先で出会う異性との交流を描く乙女ゲームの主人公であるが、先日めでたく幼馴染ルートをクリアしたようである。恥ずかしそうに、何故だか私に報告をくれた彼女は鼻血が出そうなほど可愛らしかった。
ちなみにその幸運な幼馴染には、頼むからあんまり佳織に近付き過ぎないでくれと泣いて頼まれた。確かに不思議と攻略対象に敬遠される傾向がある私だが、そんなに嫌いか。
あるいは例えば、3つ右隣で忙しなく黒板とノートの間で視線を動かし手を走らせる美少女、冬川翔子。
彼女は異世界で巫女として力を奮う、薄倖系少女だ。人外イケメンと鬱展開を交えながら戦いを重ねるゴシック系乙女ゲームの主人公であるが、先日、ついにツンデレ系パートナーと絆を結んだようである。どうしてか私に、細部をぼかしながら恋の成就を語ってくれた彼女は、抱きしめたいほど綺麗だった。
ちなみにその妬ましきパートナーからは、今もストーカー張りの粘着差で殺意漲る視線を頂いている。そんなの食らう謂われはないのに。
そして、このクラスにはもう一人、異色の主人公が存在している。
私は傍観者である。でも最近、その定義がちょっとぼやけてきたんじゃないかと思う。
「めぐるー、お昼一緒に食べようよ。お弁当作ってきたの。味見してくれると嬉しいなッ」
チャイムと同時に、目の前の同級生が勢いよく振り返る。翻る、くるくるドリルに巻かれた細い髪。ふわりと届く甘い香りは、香水か、はたまたフェロモンの一種なのか。
吸い込まれそうなほど輝く瞳に映り込む自分の姿に視線を置きつつ、曖昧に微笑んだ。
「う、うーん、図太い自覚はあっても、あえて針の筵に正座しようという気概はないんだけど」
「ふふ、何それおっかしい。大丈夫、私、料理は結構得意なんだよー?」
「うん。実習で手際見てるし、そこは心配してないよ。味見なんてしなくても美味しいだろうねえ」
「んな……ッ、や、やだあ巡ってば口が上手いんだからぁ!褒めてもデザートなんて付いてこないんだからね!」
赫々たる美貌が笑顔を形成し、鈴を転がすような声音が無防備に振り撒かれるたび、教室内の全男子の口元が緩くなる。相好は崩しても良いけど、ヨダレは垂らさないように。視界に入った隣席の男子に生暖かい目を向けると、遮るように萌香が立ち塞がった。
「巡、ね、屋上で良いよね?」
選択肢が一つしか表示されていない。そんな錯覚に陥りながら、促されるままに立ち上がる。
どうせ今日は週に一度のノー弁当デー。毎日弁当を詰めるのが面倒だからと設けた中休みだ。折角食べるなら、味気ない購買のパンより美少女の手作り弁当に癒されるのが良いだろう。
小さな手が腕に絡まった。周囲の視線が痛い。全男子からは羨望と嫉妬の眼差しが、大多数の女子からは、敵を見るような目を向けられる。
原因など言うまでもないが、この手を振り解く理由には届かなかった。
姫野萌香は転生者である。恐らく神様転生系で、多分魅了チート能力持ち。神様転生ってアレね。神様系のふわっとした存在が「このゲームだか漫画だか好きだったよね。この世界に転生させてあげるから楽しんでね。あ、ついでに好きな能力をあげよう」という感じでふわっと行われる理不尽な生まれ変わりね。
なお、生まれ変わりとか人に言うと漏れなく黄色い救急車を呼ばれるので、万が一前世の自分を感じた過去があっても心に秘めたままにしておくように。
外面、私が知る限りの「彼女の設定」から、さして萌香は遠くない。けれど決定的に違うのは、天然の「主人公」たちの清らかさに比べ、萌香は随分と毒を含んでいることだ。
天然の彼女たちは、生まれ持ったサガのごとき正確さで、立ったフラグを即打ち抜く。否。狙うのではない。むしろ彼女たちが打った球に向けて、イケメンたちがフラグを差し出すのであるか。
対して萌香はハンターだ。華やかで優しげな笑顔の裏で、知ったフラグの立ち位置に至るまで、虎視眈々と刃を磨く。具体的に言うと目が笑ってないときがある。
最近どうしてだか私にも鋭い目が向けられることがあるのだが、もしかして私の転生事情バレでもしてるんだろうか。バレても同好のよしみで痛くないけど──いや、やっぱ痛い。いい年こいたオバハンだった私が乙女ゲーを網羅していたというのは、事実として痛い。バレてないと良い。
とはいえ鋭い目を向けられた後は、単純ににこやかホワワンな笑顔を貼り付けて腕に絡んでくるだけだ。時折そこに佳織や翔子が声を掛けてきてくれることもある。が、大抵私の返事を待たずに萌香が満面の笑みで辞退している。
「萌香ちゃん暑くない?」
「……女の子は寒がりなの。何よ、美少女にくっ付かれて文句でもあんの」
「ううん、嬉しいけど。そんなぴったり貼り付かれると、私汗かきだし、気持ち悪くないかなとか」
「毛むくじゃらマッチョの汗だったら気持ち悪いかもね」
廊下の隅に縮こまるような至近距離で腕をぎゅうぎゅうと抱えられて首を傾げた。胸が当たって気持ち良いなあ、と思いながら、小柄な彼女に合わせて少しだけ背を丸める。周囲には聞こえない小声のやりとりに、向けられる視線は一層強まった。
2面性のある子なのだ。多分、こうして素を見せられる時間が欲しくて2人になろうとしているのだろう。その相手を私に選んでくれたのは純粋に嬉しいことだと思う。
ツンデレらぶ。
「モエちゃん!お昼一緒に……」
お花畑な空間は、教室を出て数分も経たない内に終わりを告げた。
多種多様な針の筵が廊下を一直線に走って到来した。最初はそこそこ漂わせていた愛想が尽きた今、露骨な嫌気を隠そうとも思わない。
肩を落として足を止める。止まった私につられ、つんのめるように傾いた萌香の肢体を支えながら。
……何でこの子ナチュラルに無視しようとしてんの、己のヒーローたちを。
どやどやと2人を囲むのは、普段に増して多い人数の男たち。上から目線で半円を築かれると全力突破を考えたくなるから止めて欲しい。
頭を押さえて今後の展開を思う私に初撃一刀切り込んだのは、テンプレ風紀委員長の冷静メガネである。
「また貴様か。いい加減萌香に纏わり付くのは止めろと、散々忠告しているだろう」
高い位置から見下ろされるのは、いくつになっても気に食わないものだ。
「身の程知らずの平凡顔ちゃあん。俺、アンタがモエの隣に立つと可哀相でたまんなくなるから、心の平静のために離れろって言ったよなーぁ?」
「チンピラ言語をもっと噛み砕いて言ってやろうか?萌香に近寄るな。何度も言った記憶があるんだが、まさかそれも覚えられないほどの低脳、俺の後輩に存在するはずもないから勿論俺の記憶違いだよな?」
……ちなみに、別に最初からこれほど脳の欠陥障害を疑う痛烈な言動をするような子たちではないことを、一応わかって欲しい。
最初は普通に、ちょっと嫉妬心からか敵意をチラ見せして警戒してくる程度の可愛らしい反応だったのだ。元からこんなにクソ性格が悪かったら、普通に乙女ゲーのヒーローとしては登場しない。
ただ、彼ら、物凄くタイミングが悪い。
水をぶっ掛けられた萌香といるところに出没して案の定誤解されたり、偶々声を掛けたら物陰にイケメン共がいたので男目当てだと誤解されたり、厭味をこぼす女子集団の近くを偶然通りすがったらグループの一員だと見られたり。誤解を受けるのも仕方がないタイミングだったかなとは、正直私も思わんでもない。
丸く収めるのは無理だろうなあと思いながら弁解したが、当然のように無理だった。萌香もすぐに誤解を解こうと奮闘してくれたのだが、嫉妬心に駆られたイケメンは、それを健気な思い遣りだと理解したようである。誠に迷惑なことに。そうかわかったと言いながら人を睨み付けるのは良くない行為だと私は思う。
敵意を持つ理由は理解できる。想い人を案ずる気持ちは認めよう。
だがしかし聖母マリアになる修練を積んだ経験は私にはないのである。失礼なクソガキの全てを許容してやれるような度量があるはずもない。
言い返さないのは氷解を諦めた上で年上の矜持を保とうと自制しているだけで、前世に培った図太さがなければ泣き崩れてヒステリーを起こし、人間の尊厳をメッタメタに傷付けるべくありとあらゆる罵倒をまき散らしているところだ。
そういうわけで、戯言に答えてやる義理もなく、そっぽを向いて飛び出そうになる欠伸を噛み殺す。昨今口に手を当てない子も多いけど、やっぱり隠した方が周囲の好感度を下げることは少なくなるのでオバチャンは切にオススメするよ。
ふるりと身体を震わせて、滲んだ涙を瞬きで散らした。お昼は眠い。腹が満たされていようと、空いていようと。
ふと、腕に加わる力が増した気がして眼下に視線を向ける。
肩より少し上にある大きな目。青褪めた顔が私を仰ぎ見ていた。視線が合って、ただでさえ大きな目が転げ落ちそうに見開かれる。
しまった。美少女に欠伸見られたとか恥ずかしい。
誤魔化すように笑うと、彼女はぐっと唇を噛んで俯いた。人類の憧れたる優美なドリルが、ふわりと形の良い輪郭を覆い隠す。
「……まあ、そいつらは言い過ぎだけどな。輪島、お前も、これ以上立場悪くしたくなければちゃんと忠告は聞いておけよ。生徒を吊し上げるような真似したくないからな、俺は」
最初にちょっと他を諫めるような言を含めると、心なしか優しい言い方をしているように感じるよね。しかしあくまで教師として許されんレベルの暴言を吐いておる事実、努々忘れるなよ若造。
年長者だからこそ鼻に付く態度に口を歪めると、聞く気なしと判断したのか、説得──というよりただの嫌みだと思う──の方向が変わったようだった。視線と声の行く末が、私の隣へ移動する。
「姉ちゃん、そいつ、いつもみたいに俺たちに近付くために踏み台にしようとしてるだけだって、何度も言ってるだろ!」
「……モエちゃんが優しいのは知ってるけど、見逃しちゃうと、その子のためにもならないと思……」
「止めてよ」
硬い、低い声がした。一瞬誰の声か理解できなくて、呆気に取られて瞬きを繰り返す。
刺々しい声を、まさか萌香が、彼らに向けるとは思わなかった。向けられた方もそう思ったらしい。驚愕露わに集まる目を、しかし支えとばかりに私の腕を抱き絞める萌香は睥睨をもって跳ね返す。
「どうしたんだ、萌香」
「喋らないで下さい。それ以上、巡を傷付けたら絶対許さない」
体格に勝る私を押し退ける彼女の背中は壮大だった。
萌香は一見儚く健気に咲く美しい花のようで、内面は棘をびっしりと生やしたバラのようなツンデレで、しかしてその実体は、弱みを見せまいと精一杯に頑張っているはいるものの、普通に気の小さな、ただの女の子なのだと思う。
遠くから見ている間は見えなかった壁の向こう。瞳の奥に揺れる感情は、まるで愛情に飢える子供のようだった。頭を撫でれば悪態を吐きながら気恥ずかしそうに大人しくなるし、手を繋げば嬉しそうに笑う。生前子供は持たなかったが、こんなに可愛いなら考えるべきだったと後悔を覚えるほど可愛かった。
攻略対象に常備する笑みはひどく可愛らしいが、私に時折見せる笑顔は桁違いに愛らしい。本当に嬉しそうな、子供のように無邪気な笑顔。思わずイイコイイコしてしまう表情を、彼女はイケメン共の前で見せたことはあるのだろうか。少なくとも、そんなシーンを私は見たことがない。
ゲームの登場人物として見ているせいか、あるいは他の要因か。萌香には大きな壁が見える。本性を見せてはいけないとでも言うような、徹底した可愛こぶりっこはその典型だ。何を思っての猫被りかはわからないが、嫌われる事態を回避したいと思っていることだけは察せられる。
そんな彼女が壁の向こうへ声を荒げるというのは非常事態だ。
思わずその勇姿を見守ってしまった私の視界の中で、震える肢体はやがてゆっくりと首を窄め、小さくなっていく。慌てて背後に庇い直そうと手を伸ばす。
爆発は、温もりに触れた途端のことだった。
「なによ、何よ、何なのよ!私、頑張ってるのよ!?いっぱいいっぱいなんだから!」
「おい、もえ」
「喋んないでったらッ!」
突然の噴火に、こちらも同じく消沈の花に手を伸ばそうとしていた生徒会長が鼻白む。
眼前で止まった手を思い切り払いのけて、萌香は身を切るように叫びを上げた。
「こんなに頑張ったことないんだから!人に好きになって貰おうって、なんにもわかんないのに、こんなに真っ暗なのに、頑張って歩くの初めてなんだから!何で邪魔するの?どこが私のためなのよ!」
気付けば廊下のざわめきが消えていた。
津々と集まる視線の数々から少しでも隠せないものかと身を寄せる私に、涙を浮かべた萌香がタックルを食らわせる。うふぅ、と肺の空気を残らず吐き出して、それでもしっかりと胸元に受け止めた私は天晴れであった。
「ねえちゃ」
「近寄らないで!来ないでよ!私のためならどっか行ってよ!あんたたちのせいで巡が私のこと嫌いになったら──」
ぎゅうぎゅうと細い腕が脇腹を締め付ける。火事場の馬鹿力ってこの場合適切だろうか。物凄く痛い。しかしここでちょっと離してとか言おうもんなら、私が私の良心に押し潰されて死ぬことは請け合い。
男たちの嫉妬ビームを無関心バリアで蹴散らしつつ、肩口に埋まった小さな頭を優しく撫でる。
「もう、私、どうしたらいいのよぉ……!」
冷たい滴の温度がした。左肩、萌香の目元が張り付く場所で。
「……萌香ちゃん、泣いて」
「ごめん、ごめん、ね、私のせいで……ッ」
腕の中ですすり泣く、思っていたより小さな身体。途方に暮れた子供の表情に──ふつりと私の中の何かが切れた音がした。
それが先日の話である。
「あんたたち、ちょっとそこ座んなさい」
強い日差しの降り注ぐ真夏の屋上。どんな性癖があればこんな熱中症を危ぶむ場所に集合するのかなど知りたくもない。ただ一つ助かったのは、頑張ってイケメン共を収集する手間が省けたということだった。
「は?なぁんで俺らがアンタに命令されないきゃいけねェん」
「ぐだぐだ言わんと座んなさい!」
「はいぃ!」
食べ欠けのパンを片手に凄むチンピラを一喝すると、意外にもぴしりと姿勢を正した。
隣のわんころが呆れた顔で溜息を吐く。
「何ですか先輩、その良い子の返事」
「うるっせぇよ!オメーだってきっちり正座してるじゃねェか!」
「いや何か妙な圧力が」
「何をコソコソ喋ってんの」
「ごめんなさい!」
揃った返事に満足して頷いた。
視線を巡らせれば、生徒会長から教師まで、やけに素直に足を揃えている。昨日のやりとりには、さすがに思うところがあったらしい。
「昨日は」
露骨に反応した男たちの様子を窺いつつ、私は言い聞かせるように口を開いた。
「取り乱した萌香ちゃんを保健室に連れて行って、どうにか落ち着いた後も何やら不安定で離れたがらなかったので、ご両親に連絡の上、私の家に連れて帰りました。夜は一緒のベッドで眠りました。魘されていた萌香ちゃんを抱きしめたらほんにゃり笑顔を浮かべたときには地上に舞い降りた天使かと思いましたが、朝も少し調子が良くなさそうだったので、今日は学校はお休みして貰っています。今はおうちのにゃんこと戯れる女神と化している頃かと思います。帰ったら先日に引き続き、一緒にお風呂を予定しております。何か質問は?」
「配置換えは」
「ありません、風紀委員長。他に質問は」
「生徒の様子を見守りたいので写真の提出を要求したい」
「却下します、先生。質問タイムを終わります」
「何だその羨ましいの!?」
「素直なのは良いことですが、質問タイムは終わりました」
「質問かなあ……」
萌香の無事を知って緊張の糸を解いた様子の男たちが、まだ何か用かと言わんばかりの視線を寄越す。
用である。別に気に食わない連中に、愛しの彼女の現状を報告する義務があるわけでもなし、何故これがメインイベントだと思っているのか。
養豚場のブタを見る目で見下ろす私に、足を崩し掛けた男たちが無言で姿勢を正す。
「萌香ちゃんのこと、どう思ってますか?」
「好きだ。愛していると言ってもいい」
「愚問だな。今更何を……」
「質問を変えます」
己の間違いを眼前に晒されてふがいなさを責める。
途中開きの口を閉じて待機スタイルへ戻った男共を眺めながら、切り口を変えて再出撃。
「萌香ちゃんに、幸せでいて欲しいと思いますか?」
「当たり前だろう。輪島、何を言ってるんだ?」
「じゃあ、何でそんな猪突猛進なんですか」
きょとんと一斉に首を傾げる様子が憎らしい。
アホな子ほど可愛いと言うな。あれは嘘だ。容姿か性格が可愛い子かつ好意を持っている子がアホなのが可愛いだけで、好意という好意を根こそぎ取っ払った対象が可愛いこぶっても脳の血管が圧力を増すばかりである。
ていうか、本当に心に当たるものはないのか。よう、そこで視線反らしてる先生さんよ。
「……反省、は、常にしている、つもりなんだ、が」
「反省するだけして行動が伴わないとか大人の風上に置けない幼児退行例ですよね」
ぐうの音も出なくなって土下座体勢へとシフトチェンジした一番右端を切り捨てて、クエスチョンマークを飛ばす悪ガキ共へと視線を戻す。
なまはげに怯える子供のような目に、良い傾向だと頷いて。
「萌香ちゃんが女の子に虐められてるの知ってますか?知ってますよね、何度も助けに入ってるんだから。で、どうして元を絶とうとしないんですか?助けることで自分が萌香ちゃんのナイトだとでも思ってるの?バカなの?」
「は?」
「ちょ、おま」
「あんたたちが萌香萌香って周りの迷惑顧みずに過剰にチヤホヤするから、周囲が無駄に嫉妬して、萌香ちゃんに敵意が増すんでしょう。そこんとこどう思ってんの。まさか気付いてないとかないわよね。希代の天才風紀委員長、どうなの」
「こ、好意を全面に押し出して何がわる」
ペーン、と。高い空に響き渡る間の抜けた音がした。平手でこめかみを叩くとそういう音がするらしい。
第二次土下座生産に、残りの男たちの腰が浮く。運動神経の良い輩は既に身を反転させ、手を地面につき、今にも走り出そうという状態である。
男子ともあろう者、逃げ出そうとは嘆かわしい!
「座んなさいッ!」
「ごめんなさい!」
座りなおすのは褒めて遣わすが、こっち見なさい。あと膝痛くない?コンクリ床でのスライディング正座って。
しかし子供は風の子元気の子。男の子であれば多少の痛みはただの通過儀礼というもの。そこまで頓着してやる必要もなさそうなので、ハンカチひとつ握らせて説教を続行。
「ほんとに好きなら相手の幸せにも目を向ける!どうしてそれができないのこのボンクラども!萌香ちゃんにラブラブ光線発射するのはいいけど、周りにも愛想振りまく!目を眩ませて嫉妬の矛先が向かないようにする!実害を伴う前に、否、嫌煙が発生する前に攻撃前防御!先制ガードッ!素早さも防御力もないとかユニットとして使えなさすぎる!」
「待ってそれ何のゲームの話」
人の話に口を挟まない。
猛禽類の眼光を飛ばすと、同級生の男が顔を青くして身を竦めた。今発言したのも睨み付けたのも、萌香の弟だったはずだけど。何故隣がダメージを食っている。
「ていうかほんと馬鹿なのあんたたち!?何で好きな子の前で人格を貶めるような毒舌吐くの!?アウトローがカッチョイイとか思ってんの!?ないわーマジないわー!あれでしょ?そういうの若い子たちの間でチョベリバとか言うんでしょ!?」
「ふっる!」
「女の子に向かって古いとか失礼ぶっこいてんじゃないわよこのスカタン!」
「何で一々語彙が古いんだお前!」
「人様に向かってお前とか言うんじゃありません!」
「母ちゃん堪忍!」
「なあ、え、何のゲームの話だったん、さっきの」
「人生という名の壮大なゲームに決まってんでしょう!設定が細かいの!システムがあり得ないほどめんどくさいの!ゲーオタでさえ確定できない攻略情報に踊らされるほどの超難易度かつオートセーブ対応の最新システム搭載自動更新型大容量なの!」
「あ、お前ゲーオタ」
「一回で聞けない悪い子は尻を出しなさい」
「おお俺じゃねぇーしさっきの!」
静粛に!と手を打ち鳴らす。
途端に静寂に支配された屋上に、階下でスポーツに励む若人の清々しき声が響いた。あれぞ学生に相応しい音色であると私は思う。こういうカオスな空間ではなく。
咳払いに身を震わせる男たちが上目遣いにこちらを見上げる。恐る恐るといった風情に、深く溜息を吐いた。それにもビクリと肩をすくめる。
薄っぺらい敬語が飛んで、前世のオバチャン口調が飛び出している。普段の口調が演技ってこともないが、説教といえばオバチャン口調だよねという自分の偏った価値観のせいだろうか。オタク気質と交じり合ってカオスであることは認めよう。しかし今更正す気も起きず、「現行年上」への無礼は今まで被った多大なる無礼によりチャラであると勝手に決めた。
テンションを落ち着けて、一端閉じた口を再び開く。
「叩かれたら痛いんじゃなくて、人間嫌われるだけでも痛いのよ。好きなら、そういうのからも守ってあげるべきじゃないの?何か起こったら助けるんじゃなくて、何も起こらないように心掛ける。あんたたちも、自分のせいで萌香ちゃんが痛がるの、嫌でしょう」
「……だから、萌香を傷付ける前に、お前を近付けないように」
「それに、萌香ちゃんは、悲しんだの。私は誤解だって言って、萌香ちゃんもそう言った。それは本当のことだったけど、あんたたちは信じなかった。私にイジメかってくらい暴言吐いてどうにかしようとした」
「……」
「好きなのはわかるし、好きだから伝えたいのもわかる。過保護になっちゃうのも理解できる。でもやり方が悪いの。一直線に排除じゃなくて、もっとお手柔らかにやんなさい」
「あれ、ちょっと思ってたんと違う」
チンピラチャラ男が小首を傾げた。
気にせず続ける。
「良い、未来への可能性を残しなさい。腹に一物持った人が近付いてても、上手くやれば萌香ちゃんの味方になり得るの。見敵必殺なんて古いわ。今は敵すら欺いて味方に付ける駆け引きの時代よ」
おお、と萌香の弟が感嘆の声を上げた。風紀委員長の眼鏡がきらりと陽光を反射した。
気にせず続ける。
「時と場合を考えて。ちゃんと事実を見て、自分たちの影響力を振り返って行動しなきゃいけない。私は萌香ちゃんを嫌いにならなかったけど、少なくともあんたたちとは関わり合いになりたくなくなったよ。選ばなかったけど、あんたたちに会わないように、萌香ちゃんを遠ざける選択肢だって当然あった」
「突然真面目に戻るのを止めないか?」
「ずっと真面目よ、私は」
少しだけ考えた、萌香との距離。思い付いて即座に否定した考えを、過去、誰かが選ばなかったという確証はない。
萌香を踏み台にしてイケメンに近付こうとしていなくても、結果として距離は近付くだろう。嫉妬した女子にいびられるか、もしくは私と同じようにイケメンに疑われるか。そうして萌香から離れた子が、いなかったとは限らない。
「排除するんじゃなくて、近付いた子は取り込むの。最初がどうであろうと、とにかくまずは害を与えないようにすれば良い。勿論行き過ぎた子は蹴って良いわよ。躾ってもんだわ。でも打算から近付いた子は、どっかで転機があればむしろ萌香ちゃんの味方になる。友達になれる可能性だってあるじゃない。怪しいみんなを威嚇して、害意のない人まで遠ざけたらいけない。行き過ぎて、萌香ちゃんを囲むのを、あんたたちだけにしちゃいけない。萌香ちゃんの可能性を、好意を免罪符にして狭めるのは、いけないことでしょう?──大事なら、悲しませるような行動は、しないこと。できるわね?」
ゆるく頷きながら、なるほど戦略、と呟くのは萌香の弟だった。チンピラも、へー、と間の抜けた声を上げている。彼らはどうも思考幅のネジが緩いのか、突発事象に強い柔軟思考のようである。
その他、俯いて身動ぎすらしなくなった堅物寄りの棒たちを見詰めて1分。ようやく口を開いたのは、さすがの代表、生徒会長のプライド高き男だった。
「……ご」
「ん?」
「…………ごめんなさい、もう、しません」
内容は、まったくもってプライドの欠片の見られない謝罪であったが。
しょんぼりと肩を落とした彼らに溜飲を下すと同時、少し怒りすぎたかな、という気もする。
子供が知らぬ道理を進んでしまうのを正すべきは大人の役目である。が、数度の注意という段階を経て噴火を味あわせるのが本来の躾の工程だ。それを、今まであやふやに済ませてきたのは自分で、最初からこうも頭ごなしに説教を食らっては、まだ尻に青さの残る青少年──一名を除く──には理不尽でもあっただろう。
ふ、と短く吐いた溜息に、上目遣いの様子見が走る。視線が合うと、すぐさま慌てて落ちた。うむ、怒りすぎたらしい。これは近所の鬼婆に対する反応である。
「よろしい。わかったら、ちゃあんと実行しなさい」
「はい──あの」
「なに」
おずおずと切り出したのは、最も身を縮込めて反省を体言している唯一の大人たる教師だった。とはいえ、大人の渋みを帯びるか帯びないかという程度に若々しい青年。思い直すと、まあ周囲の教育の行き届かなさがちょっと表層に現れちゃっただけとも考えられる。となれば尻がうっすら水色くらいなもんだろうか。
子供を見る目で視線を合わせ、続きを優しく促して。
「母さんって呼んでも、良いだろうか……!」
「こんな大きい子産んだ覚えはありませんッ!」
しばき倒した。
それから。
美形どもと結託して、現場教育を徹底した。これでも前世においてはオタク兼社会人として活躍した私である。2次元から3次元まで幅広く、周囲との軋轢を緩和させる手段の100や200、伝授するに困ることはない。
良いか、性格の良い輩には、同じく性格の良い輩が添うことが多い。更にこの世界、美形の友人には美形が連ねることが多い。つまり、メイン美形に近付けばサブユニットの友人に会える機会を手に入れられるということだ。
そこんとこ踏まえてチラつかせながら、メイン美形と仲良しこよしな萌香と仲良くしておけば……!と錯覚する環境を用意する。凡人代表の私もその輪の中に半身を置いて、周囲との繋ぎと化す。
萌香を苛めれば、美形の友人とお付き合いできる環境を失う。仲良くすれば万が一。嫉妬の矛先をずらして私を苛めても環境を失うので、手出しはできなくなる。
後は適宜応用。その場その場で対応を変えて、円滑化に励むことで逆ハーレムに対する女の嫉妬攻撃を排除する!
これが結構楽しかった。普通に生活していてはそんな場所に身を置くことはない。シミュレーションゲームを現実で動かしてるような感じ。敵は所詮尻に殻の付いたヒヨッコなので、戦略を間違っても大して痛くないというところが余裕をもってプレイできるのでまた良い。強くてニューゲームシステムは発売される全ゲームに搭載されるべき機能であると私は思う。
ただし今のところ、笑顔を向ける女子生徒の中に、萌香が素顔を晒すほどに友情を温められた者はまだいない。まあ、萌香もどちらかといえば打算で生きる人間のようだから、計算高い女子とは案外気が合うかもしれないし、気長に見守ることにしよう。
できれば性格の良さがまるわかりな佳織や翔子と仲良くして欲しいと思っているのだが、不思議と波長が合わないのようなので、またの機会を窺いたい。
で。
「萌香ちゃん、日直お疲れさま」
「……なんで巡とみんなが一緒にいるの」
最近、萌香と出掛ける機会が随分と増えた。靴箱から預けていた背を起こし、片手を上げて微笑む。
萌香の視線は生憎と、私の背後へ透過していた。
何故か最近毎回付いてくる、イケメンどもの塊に。
「あれ、萌香ちゃんが誘ったんじゃないの?この人たちまた普通に合流してきてたけど」
「誘ってない。折角二人の時間なのに誘うわけないでしょ!」
「姉ちゃん、意地悪言うなよ。俺も一緒に遊びたい」
「オンナノコ二人じゃ危ないぜー。ボディガードしてやんよ」
「帰りに寄りをするのは校則違反ですよ。全く仕方のない人だ……」
「ま、生徒会長たる俺が責任もって監督してやるから安心しな」
「生徒会長自ら規則破ったらいけないんじゃないんですかね、先輩」
よくまあこんなに揃うものだといっそ感心する他ない。
生徒会長だの風紀委員だのというのは忙しそうにしていたから忙しいもんだとばかり思っていたのだが、様子を見るにそうでもないのだろうか。または、このためだけに時間をあけるべく奮闘した結果なのかもしれない。そうであればいじらしい。
それを労うつもりは、残念ながら萌香にはないようだったが。
「かえれー!」
「素の萌香も可愛いもんだな」
「猫かぶりより味がありますよね」
跳ねて怒りを露わにする少女の微笑ましさといったらなかった。キャンキャンと吼える様は言うなればパピヨン。蝶ではなく、犬の方の。脱ぎ捨てた猫なら私の隣で寝てるよ。
私に向けていたツンデレ顔が、まだ逆ハーレム要員のみにとはいえ発揮されるようになって、表情が増した。感情の発露が多くなったことで、気のせいではなく彼女は以前よりのびのびとしている。
人に慣れない小動物が私にだけ慣れてるっていうシチュエーションも、ずっとは問題だが、一過性のものと仮定すると超可愛い。いずれはコミュニケーションの輪を広めるだろうと考えると、子供の成長を見守る母のような心地にならなくもない。
「巡だって嫌だよね、こんなしっつれいな男どもと一緒なの。巡のこと泣かしておいて!」
「え、泣いてないよ」
「泣いてたじゃん!ほらぁ、私がブチ切れた日!」
「もしかして:欠伸。……あー、それであんな突然爆発したのねえ」
「じゃあいいよな、母さん」
「あんたは仕事に戻んなさい」
いつの間にか現れた教師をすげなく追い返し、鼻を鳴らす。
何でかあの一件以来そこそこ懐くようになった男子諸君に、今となっては「生意気なクソガキ」以外の感情はない──半眼で眺めながらも、時々、あら可愛いじゃない、と思う対象である。つまり、あんまり悪意を抱いていない。
煌びやかで人目を惹く鬱陶しいほどの容姿は困り者だが、本人の咎であるわけじゃなし。集まる視線を我慢するのはやぶさかではないだろう。
「萌香ちゃんの好きにして良いよ」
「さすが母ちゃん、話がわっかるゥ!」
「わかった、じゃあヤダ」
あっさりと言い切って、肩を落としながらもしつこく追従する男たちから逃げるように、さっさと私の手を引く萌香。
よろしい、ならば逃走だ。今から走ってもどうせ追い付かれるだけだから、今日はバス停で乗車したと見せかけて降りる方向で行こう。アイコンタクトはばっちりである。言葉など必要ない。なにせ、このやりとりも回数を重ねているので。
ばいばい、と飛んできた女生徒からの挨拶に手を振り返す萌香に口元を綻ばせながら、少女との逢瀬の内容を組み立てる。明日、逆ハーレム要員たちが一人の漏れもなく血の涙を流すような、そんな充実した放課後になると良い。
私は傍観者である。でも最近、その定義がどうにも形を成さなくなってきたように思う。傍観というには主人公の付近にあって、物語にそこそこ絡まれてる、そんな気がする。
傍観者である立場は悪くなかった。でも、今となっては輪の外の小島に一人住んでいた過去を思うと、戻るにしては味気ない。
彼女たちは「主人公」という存在だから、私は最初から持っていた好意をもとに、ストーリーに障らないよう、当たり障りのない行動を取ってきたように思う。それがどうだ、今、萌香のストーリーは破綻しているのに、彼女は生き生きとより愛らしい。
例えば、そうだ、これを機会に、相変わらず私を刺々しい目で威嚇する「主人公」たちの取り巻きに遠慮せず、絡んでみてはどうだろう。「主人公」たちは私の、年下の「友人」だ。友人とコミュニケーションを取って何が悪いのか。べったり張り付く輩から、偶には彼女たちを借り受けて、皆で遊びに行ったらきっと楽しい。
素晴らしい考えだと自画自賛した。順風満帆、つっかえのない「外側」から、中を覗き見るだけの世界から、手を突っ込んでみたらきっと、今まで見えなかったところが見えるようになるだろう。想像すると高揚する。彼女たちの、娘のように年下の友人たちの新たな面が見えるのは、とても歓迎すべきことだ。
「巡、なんか上機嫌?凄い嬉しそう」
「うん、嬉しい。萌香ちゃんが可愛いからねぇ」
「……ふん、私が可愛いのなんかあったりまえでしょっ」
「萌香ちゃん、お澄まし顔でもお耳が真っ赤よ」
「う、うるさいのぉ!あんた性格変わってない!?」
「きらい?」
「大好きよ!」
にっこり笑って背後に視線を送る。
微笑ましそうな顔を保ちつつも、ギリギリと軋む歯を止められない負け犬共。無言で快哉を伝えると、今にも飛びかかってきそうな体勢に移行した。できるものならすると良いが、全力で萌香に非難の意を伝えるから覚悟しておくように。
うん、こんなふうに他のメンツにも絡んでみよう。突然喧嘩を売るには翔子の付き人とかだとちと怖い気もするので、順々ランクアップに努めることにするのが良い。
最初は誰が良いかな。取り巻きが怖くない子っていうと、周囲の目があるから一般市民に手を出しにくい、有名人に囲まれた芸能人なあの子かな。
「お」
「うん?」
門を潜ったところで覚えのある声がした。顔を上げると、門に縋るようにして立つ男が、青い顔でこちらを凝視していた。
随分と久しぶりな姿だ。主人公の好感度アドバイザー──もとい、友人の友人であり、ちょっとばかり交友に距離があるが、一応私の友人である。相変わらず苦労性を遺憾なく発揮しながら、つい先程脳裏に浮かべた、芸能界で頑張る少女に付き従っている健気な青年だった。
はて、平凡より少し上に属する毒気のない彼の顔は、確か健康的な小麦色をしていた記憶があるんだけれど。
萌香を庇うべく男たちが壁になった。凹凸から見える彼の顔がこれ以上ないほど引き攣って。
「俺というものがありながら、巡のうらぎりものーッ!」
逃げた。
「なにあれ?」
「わかんない」
脱兎の勢いで遠ざかる背中を、イケメンたちに囲まれたままのんびりと見送る。うむ、芸能界で勤しむ友人にコンタクトを付けるのに丁度良い理由ができた。何だったのかはさっぱりわかんないけどナイスアシストである。
そういえばこないだ家にも来てたみたいだけど、何かあったのかな。かくいう芸能人の子と遊んでたから不在だったし、楽しかったねメールと一緒に用件について彼女に聞いてみたところ、近く通ったから寄ってみたとかじゃない、と返信があったからほっといたけど。
帰ったら彼女に電話しよ。
腕に一層ぎゅうとしがみ付く萌香をあやしながら、本日の予定枠が一つ埋まった。
主人公が前世オバチャンだったのは、のほほん傍観の他、実は前作に取り巻き説教シーン入れたいなーと思ってたせいです。入らなかったけど。
説教と言えば母ちゃんだよね!
なお、うちの母は言葉少なに威圧してくるタイプなので、無言の父親と一緒にダブル威圧されると死ぬかと思います。
長々お付き合い頂きありがとうございましたー!