十五華
「明日、藤里様に身請けを受けるとご報告します。
だから、花街の今までの思い出とこれからの4年間を過ごすために…一晩だけ、一緒に過ごしてください」
俺は戸惑った。まさか菖蒲がこんなことを言うとは思わなかったし、その雰囲気にはけして引かない強さがあった。
(…女ってやつはこれだから怖い。たった21歳でこんな目をしやがる…)
俺は初めて中庭で菖蒲を見た時を思い出した。
凛とした雰囲気を纏い、一挙一動は繊細。しかし会ってみるとその瞳には熱いものを秘めていた。
「わかった」
窓からは日が沈んだ後の薄明かりが差し込んでいた。
俺は菖蒲の腕をつかみ床に押し倒した。
「女を抱く時までいい先生じゃいられないぜ…いいんだな?」
菖蒲は目を閉じて頷いた。
「ん…ふぁ…」
いきなりの深い口付けに菖蒲は濡れた声をあげる。
俺は着物の帯に手をかけた。紺色に銀の花柄の着物の前を開くと若々しい身体に指を這わせる。
「きれいだな…」
俺は菖蒲の身体をゆっくりと溶かしていった。
「んぁ…はぁっ、んっ…」
部屋には密やかなお互いの衣擦れや水音が満ちていた。
「菖蒲、いいか?お前が欲しい…」
俺は菖蒲に負担をかけないように尋ねる。
「は…い、きて…」
誘うように菖蒲は俺の背に手を回す。
それに応えて俺は身を沈めた。
「ぅんっ…あっ、ぁん…遠藤…様」
「こんな時に様付けか…?要だ」
「かなめ…さん?…はぁ、あっ…」
「いい子だ…」
俺が言うと菖蒲はぎゅっと回した腕に力をこめ口付けをしてきた。
「ぅんっ…要さん…かなめさんっ…あっ、はぁ…ぁんっ」
そうして俺達は互いに求めていった。