十二華
そして昼時、遊女が起き出した頃に遠藤は紅伽楼を訪れた。
「よっ、約1ヵ月ぶりか?元気そうでよかった。」
「遠藤さんこそ、個展のご成功にお祝い申し上げます。それに展覧会での評価、ずいぶんと噂を耳にしますよ。本当におめでとうございます」
遠藤は先週自身の個展を開いていた。それに加え大きな展覧会で最優秀賞をとったためここ1ヵ月は大忙しである。
「ああ、わざわざ個展を見に来てくれたのに案内できなくて悪かった。ありがとう」
「ところで…あの絵、どうするんですか?」
「そうだな…いつか菖蒲にやるよ。あいつが花街を出ていく日にでも。ところで菖蒲の絵は?」
自分がモデルなのは恥ずかしいが、菖蒲がどんな画風になるのかは興味津々だ。
「それが…わざわざ来ていただいたのに大変申し訳ないのですが、書き終わっていないんです。
菖蒲もいろいろあってここしばらく忙しくて…」
遠藤は肩を落としたように言った。
「そっかぁ…楽しみにしていたんだが」
「仕方がなかったんですよ。書きかけですがまたアドバイスをしてあげてください」
藤里がフォローを入れ、遠藤を菖蒲の部屋に促した。
襖が軽く叩かれた。
「菖蒲、私だ。遠藤さんをお連れしたよ」
部屋では菖蒲が絵を書いていた。
「あっ…いらっしゃいませ。お忙しいなか来ていただいたのに終わらなくて。本当にすみません」
「よう、久しぶりだな。元気そうでなによりだが…少し痩せたな。
絵はずいぶんと丁寧に進めていていいが、身体は大事にしろよ?」
すると藤里が口をはさんだ。
「あなたが言えた話ではないでしょうが…
仕事に没頭すると他のことなんて目に入らないんですから。」
「はいはい…さて、菖蒲。絵を見せてみろ」
「はい、お願いします」
遠藤の指導が始まったため藤里は部屋をでた。
(さて…あとは任せましたよ?遠藤さん)




