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短編うさぎブリーダー

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

詩音 :「ねえ、ポッチ。ものすごいアイデア浮かんだんだけど。」


ポッチ:「ふ~ん。どんなアイデア?」


ポッチが気が乗らない雰囲気で生返事をする。


詩音 :「お金儲け」


ポッチ:「え?! どうするの?!」


さっきまでの生返事から急に興味を示す。


詩音 :「うさぎブリーダー。」


ポッチ:「ブリーダー?」


詩音 :「そそ。うさぎを飼って子供を増やして、それを売って儲けるの。」


ポッチ:「あのさ~。うさぎなんて飼う人いるわけないじゃない。昔だったら考えられるけど。」


詩音 :「そんなことないよ。うさぎを室内で飼うのはやってるんだよ。うさぎはおとなしいし、散歩連れてく必要ないし、朝と夕方活動するから、忙しいサラリーマンに人気なんだよ。」


ポッチ:「でも、なつかないでしょ。」


詩音 :「ううん。ちゃんとなつくし、呼ぶと寄ってくる。」


ポッチ:「学校のうさぎは呼んでも来ないよ。」


詩音 :「そりゃ、一杯で飼ってるからね。一匹で室内で飼うとなつくよ。」


ポッチ:「一匹だと、さみしくって死んじゃうんじゃない?」


詩音 :「それは迷信。本当は一匹で飼うものなの。一杯で飼うと逆にけんかしちゃうの。」


ポッチ:「でもさ、もし、人気ならみんなブリーダーやらない?」


詩音 :「コツがあるの。うさぎにも人気の種類があってネザーランドドワーフとかホーランドロップとかいう品種が人気なのよ。」


ポッチ:「それで、その種類を飼うのね。」


詩音 :「うん、血統書がなくても一匹2万円位するの。」


ポッチ:「ひゅ~。そんなするんだ。でも、そうしたら、お金持ちしか買わないんじゃない?」


詩音 :「そうなのよね~。普通の人はうさぎに2万円もかけないものね。安いうさぎなら2千円で売ってるからね。」


ポッチ:「それじゃあ、みんな安いの買うんじゃないの?」


詩音 :「ちっちっち。それが違うのよ。実はうさぎにも2種類あってラビットといわれる飼育用の小さいのと野兎でおもに狩猟とか食肉用の大きな種類がいるの。安いのはみんなその大きな野兎系なの。野兎系だと猫より大きくなっちゃう。」


ポッチ:「うあ、室内で飼うのは考えちゃうね。」


詩音 :「でしょ。だからみんな小さなラビット系を飼うのよ。えさ代もバカにならないしね。」


ポッチ:「高くて小さいのか、安くて大きいのか。それで悩むんだ。」


詩音 :「うん、それで、ラビット系と野兎系を掛け合わせたミックスならちょうどいいはず、5千円くらいで売れると思うわ。」


ポッチ:「質問、他にも考える人いるわよね。どうしてやらないの?」


詩音 :「さすがポッチいいところに気づくわね。実はさっきちょこっと言ったけど、うさぎって、ものすごく食べるからえさ代バカにならないのよ。1か月で5千円くらいかかるのよ。」


ポッチ:「じゃあ、生まれたらすぐ売らないといけないんだね。」


詩音 :「うん、でもね、うさぎは1~2か月くらい育てないと売れないの。結構ひよわで死んじゃうの。少し大きくなると大丈夫なんだけどね。」


ポッチ:「なるほどね。でもさ、1か月に5千円えさ代かかって、5千円で売ったら儲からないじゃない。」


詩音 :「うん、そのとおり。だから、みんなやらないの。」


ポッチ:「だめじゃん。」


詩音 :「そこが、頭の使いどころよ。飼育する場所を考えればいいの。」


ポッチ:「?」


詩音 :「学校。あそこならえさ代ただでしょ。そしてうさぎはすぐ子供できるから、学校では飼えなくなる。そこで、それを引き取ってネットで売るの。」


ポッチ:「頭いい!」


詩音 :「でしょでしょ。さっそく、2万円でネザーランドドワーフ買いに行くわよ。」


そうして、二人は近くのペットショップにうさぎを買いに行く。


神崎父:「たった2万円のうさぎ? 20万でもいいぞ。ポッチ。」


ポッチ:「ううん、2万円でいい。」


そうしてせしめた2万円でネザーランドドワーフの雌を手に入れる。そして、学校に行き飼育委員の先生にお願いする。


詩音 :「この子、捨てうさなんです。近くの公園で拾いました。お願いです。学校で飼わせてください。」


先生 :「捨てウサ! かわいそうに。引っ越しとかで飼えなくなるとすぐ捨てるのよね。でも、猫とかにすぐつかまって、1週間も生きられないのよね。捨てウサって本当にひどいわよね。うん、もちろん飼ってあげる。」


こうしてまんまと学校で飼うとととなった。


そうして、何ヶ月かして、子ウサギが生まれる。


先生 :「かわいいわね~。お母さん、もしかしてネザーランドドワーフじゃない? ほかのうさぎと違って生まれる子供も気品があるわね。」


なにも知らない先生が言う。


ポッチ:「でも、このまんま増えすぎるのも問題じゃないでしょうか?」


先生 :「たしかにそうよね~。どうしましょ。」


詩音 :「先生! 私、里親探します! そうして引き取ってもらいます。この子たちかわいいからきっともらってくれます。」


先生 :「そうね。じゃ、里親探しよろしくね。」


詩音 :「はい!」


詩音がネットで早速広告を打つ。


ポッチ:「詩音、売上金の一部を施設に寄付するって書いといて。」


詩音 :「どうして? そんなことをしたら、儲け減っちゃうじゃない。」


ポッチ:「後々のこと考えるとそうしといたほうがいい。」


詩音 :「ふ~ん。ポッチがそこまで言うのなら、そう書いておく。」



数日後、早速里親が見つかった。引き取りに来たお客さんは喜んでうさぎを持って帰る。


ポッチ:「越後屋。まんまとうまくいったじゃないか。」


詩音 :「お代官様、それはお互い様です。どうかこのお菓子を。」


ポッチ:「うむ。ずいぶんと高さのあるお菓子箱だな。」


詩音 :「底をあけていただければ」


ポッチ:「おお~」


詩音 :「ぐふふふ。分け前は半分ずつで。」




ポッチ:「ねえ、詩音、商売も順調に乗ってきたけど、いまひとつ儲からないわよね。」


詩音 :「うん、10匹売っても5万円にしかならない。」


ポッチ:「だよね~。なんかもっと儲かる方法ない?」


詩音 :「それは考えてるんだ。やっぱり、ある程度のうさぎの赤ちゃんは育たないから、どうしても歩留まりが悪くなるわ。そこで、赤ちゃんのうちから売ってしまう方法を考えたの。えっとね。3百円でうさぎが手に入るってネットで広告を打つの。」


ポッチ:「3百円じゃ大赤字だよ。」


詩音 :「ちっちっち。くじ制にするの。正確には応募者抽選のうち、お一人の方に当選でうさぎを渡すの。参加料が3百円。外れた人もゲーム感覚で3百円なら気にしないでしょ。」


詩音 :「そして、外れた人にはそのうさぎの写真を送るの。つまり、うさぎの写真を3百円で買ったともいえるわ。ただ外れで何ももらえないよりいいでしょ。」


詩音 :「さらに、ネットに出すのは、生まれたばかりのうさぎたち。1か月たつとしっかり者になって大丈夫だけど、少しかわいくなくなるわ。やっぱり赤ちゃんうさぎのほうがかわいい。」


ポッチ:「詩音、本当悪よね。」



ポッチ:「すごい、応募一杯じゃない!」


詩音 :「平均50口。つまり1万5千円ね。いままでの3倍。さらに口コミで広がってる。」


ポッチ:「このまま行けば100口も夢じゃないわね。」


詩音 :「うん!」


しかし、そううまくはいかない。当選したうさぎが引き渡す前に死んでしまった。あかちゃんうさぎは体が弱く、ちゃんと育つかわからないリスクがある。


ポッチ:「どうするの? 当選した人おこるわよ。」


詩音 :「大丈夫、大丈夫。そんなこともあろうかと対策はとってあるわ。」


詩音が自慢げに言う。


詩音 :「免責事項にもし死んだ場合は1千円を払いますって書いてある。だから1千円払えば大丈夫。みんな先物買い感覚であきらめてくれるわ。これを資本主義というの。」


ポッチ:「とことん悪知恵が働くわね。」



こうやって、商売も軌道に乗ったところで、突然、つまずいた。親ばれしたのである。


関係者が一堂に集められ対策会議が開かれる。


和恵 :「詩音ちゃん? ずいぶんと悪知恵働かせたわね。」


詩音 :「詩音、何も悪くないよ。増えて困ったうさぎを欲しい人にあげてるだけ。その時かかる手数料をもらうのは悪くないと思う。」


和恵 :「悪いことです。」


詩音 :「え~。だれも困ってないじゃない。学校も増えすぎたうさぎの対応を考えなきゃいかないし。えさ代だってバカにならないんだよ。それにもらった人は喜んでる。」


和恵 :「お金もらってることが悪いんです。」


詩音 :「じゃあ、リサイクルショップとか古本屋さんをやってる人は悪い人なの? 廃品回収屋さんは悪い人なの? 処分に困った物を預かって、それを欲しがってる人に売るって立派なことだと思うの。」


和恵 :「えっと。それは。」


あきら:「確かにそれはそうだ。でも、一口300円でうさぎを買えますといっておきながら、抽選で50人に一人しかもらえないのはどうかな?」


詩音 :「じゃあ、トレーディングカードとかはどうなの? 欲しいレアカードは何枚も買わないと当たらないでしょ。それとおんなじ。」


あきら:「でも、カードはレアじゃないカードが手元に残るだろ。」


詩音 :「うん、でも、このボランティア活動もうさぎの写真が残るから同じ。」


あきら:「うう~。」


響子 :「でも、ボランティア活動じゃないでしょ。立派な営利目的。そこが問題なの。」


ポッチ:「営利目的じゃないですよ。 実際にかかった経費はいただきますが。飼育を人を雇って考えると1匹五千円ではとても足りません。それに、売上金の一部は寄付するってちゃんと書いてあります。 立派な慈善事業です。」


詩音 :「(さすがポッチ。このいいのがれのための売上金寄付だったのね。)」


ポッチ:「それにこれが営利目的というなら児童を働かせたことになり法律違反となります。学校側も責任が問われます。でも、これは、あくまでボランティアです。」


響子 :「うう~」


志穂 :「勝負あったな。詩音とポッチの勝ちだ。」


あきら:「志穂先輩!」


和恵 :「そうです、ちょっとやりすぎです。」


志穂 :「そうだな。確かに一口300円で募集するのは射幸心をあおることになりちょっとやり過ぎだ。それはやめてもらおう。でも、増えたうさぎを売ることは認めよう。雑種としての市場価格より高いから市場を混乱させることもない。一方、決して、ぼっているわけでもない。ビジネスモデルの勝利だな。」


詩音 :「ええ~! 一口300円はだめなの~?!」


志穂 :「全面禁止にしてもいいのだが。」


詩音 :「ちぇ~。わかりました。志穂さんわかりました~。」


詩音が口をとがらせて返事をする。


こうして、詩音のうさぎブリーダーは認められ今も続いている。


もちろん、さらに悪だくみを考える詩音だがその話はまた別の機会に。


おしまい



ポッチ:「短編うさぎブリーダーでした。」


詩音 :「たまにはいいわよね。こんなほのぼのした展開。どこかでやってそうな感じ。」


ポッチ:「でも、法律とか倫理観とかすれすれじゃない? 本当にこんなことやったらすぐ辞めさせられると思う。」


詩音 :「特に一口300円のやり方はまずいわよね。でも、実際は無料オンラインゲームで同じようなもの多いわね。」


ポッチ:「小さく一部有料って書いてあって、実はお金払わないと勝てない仕組みなのよね。」


詩音 :「しかも、アイテムはくじ引き制。100枚ひいて当たりが1枚とかね。」


ポッチ:「それで1枚500円くらいするんでしょ。ほんと頭いいわよね。」


詩音 :「これだから大人って。」


ポッチ:「このお話も原題が『う!詐欺ブリーダー』だったんだけど、あまりに露骨だからやめたんだよね~。」


詩音 :「後、舞ちゃんに見つからないようにしないと。ばれたら一番怒りそう。」


ポッチ:「うんうん。現代社会の縮図とかいっても通じないだろうしね。」


詩音 :「はあ。大人の社会ってやだやだ。」


ポッチ:「さ、気を取り直して次回の予告行きましょう。」


詩音 :「うん。次回のトリックエンジェルは?」


ポッチ:「『団欒』です。」


詩音 :「いよいよ5章もあと2話。和恵編のクライマックスです。」


ポッチ:「お楽しみに~」

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