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5-8.タグオブウォー

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

松井 :「美鈴ちゃん、これで検査終了です。検査結果は来週でます。その時はお母さんと一緒に来てください。では、また。」


美鈴 :「ありがとうございました。」


私はそう言って、診療室を出た。今日は月に一度の検査の日。また、悪い血の病気が出ていないか確認する日。学校は今日は給食を食べたら授業がないので、そのまま、病院に来て検査をしてもらった。後は、舞ちゃんと待ち合わせをしていつものように舞ちゃんちで夕飯をいただく。今日もお母さんは仕事で遅い。私が病気だった分働かなければいけない。だからしょうがない。


舞ちゃんを待つ間、院内学級の部屋で待つことにした。ここなら、舞ちゃんがそのうち現れる。


美鈴 :「でも、きっとだれも院内学級の部屋にいないわよね。いま、西棟に入院している子いないし。」


私はそう思って院内学級の部屋をのぞいてみた。


部屋では知らない女の子が入院している子たちを相手に本を読んでいた。あれは東棟の子供たち。そうすると、読んでいるのは東棟に入院している子のお姉さんだろうか?


その女の子は長い髪の毛で眼鏡をかけていた。年は私と同じくらい? でも、学校で見たことないからきっとこの街の子じゃない。


その女の子は私に気づきにっこり笑って、手を振った。


私は読んでる本に興味があったので教室に入って行った。


美鈴 :「何よんでるの?」


女の子:「タグオブウォー。この本は童話集なんだ。『リンとシオンの夢の国の物語』という本なの。私が考えた物語集。」


そういうと女の子は子供たちの前で読み始めた。


----------------------------


タグオブウォー



シオンとリンが魔法学校の焼却炉からゴミ箱を抱えて戻ってくる。今日もいたずらの罰として掃除当番をやらされてるようだ。


シオン:「大人ってどうして、ああ、ユーモアがわかんないのかしら。すぐ怒るんだから。」


リン :「まったくよね。私、あんな大人にはなりたくないな。上司の目を気にしたり、いたずら心を忘れたり。何が楽しんだか。」


シオン:「本当よね。アプリコット先生も最初はにこにこしてたのに教頭先生がどなりこんできたら、急に態度変えるんだもん。ひどいよね。」


リン :「それと、教頭先生にくっついてる体育教師。あれも、すぐひっぱたくから大っきらい。」


シオン:「全く、ひどい学校よね。」


リンとシオンは例によって自分たちのいたずらを棚に上げて学校の先生の悪口を言う。


今日はアプリコット先生と授業中、問題の出しあいをして勝ったほうが相手の言うことを聞くというゲームをして、見事勝ったのである。魔法大学校の入学試験をこのふたりは解いてしまったのである。それで、約束通り、授業中に二人で「タコイカナイトフィーバー」を歌って踊っていたら、教頭と体育教師がどなりこんできたのである。


そうやって、教室に戻る途中、誰かが泣いている声が聞こえた。


二人は耳を澄まして声のする方向を探した。体育倉庫のほうからだった。


シオン:「どうしたんだろう」


リン :「どうしたんだろう」


二人は体育倉庫の戸をあけて中に入る。中は薄暗くてじめじめしている。


シオン:「誰かいるの?」


シオンが声をかける。とたんに泣き声が止まる。そして、少したってからおそるおそるといった感じで声がした。


謎の声:「私たちの声が聞こえるの?」


小さな蚊の鳴くような声だった。


リン :「うん、聞こえるよ。私たち魔法使いだから、普通の人が聞こえない声が聞こえるんだ。」


謎の声:「ねえ、じゃ、お願い。私たちを助けて!」


謎の声:「助けてください!」


奥から二人の声が聞こえる。


シオン:「助けるって、あなたたち誰? ここで何してるの?」


謎の声:「私たち、綱引きに使う綱なんです。」


リンとシオンは顔を見合わせる。綱引きの綱はもちろん、体育用具と話をするのは初めての経験だ。よほど、強い思いがあるんだろう。そう思って二人は話を聞いてあげることにした。


綱A :「私たちは今度の運動会で綱引きに使われる予定なんです。でも、私は怪我をしてて、この子は病気なんです。とてもこのままでは出られる状態じゃないんです。」


リン :「どうして、怪我や病気になっちゃったの?」


綱B :「私たちは、一年に一度、運動会の季節にだけ外に出ることができます。それ以外は、このじめじめした薄暗い倉庫の中で過ごさなければなりません。こんなんじゃ病気になってしまいます。」


綱A :「私はネズミにかじられてしまいました。そして、この薄暗い倉庫の中ではなかなか治りません。」


綱B :「私たちは手入れもされず、見捨てられたんです。そして、このまま綱引きに出れば、切れたりして私たち死んでしまいます。」


綱A :「だから、この話を大人たちに伝えてほしいんです。お願いします。」


シオン:「わかったわ。伝えるだけ伝えてみる。」


リン :「でも、期待しないでね。この倉庫を管理している体育教師って、魔法学校にいるくせに魔法とか信じてないの。だから、私たちが嘘言っていると思われちゃうかもしれない。」


シオン:「ほんと、大人って頭固いわよね。」


本当は体育教師は魔法を信じていないのでなく、この二人を信じていないのだが。そんなことはおくびにも出さず話をする。


綱A :「でも、二人だけが頼りなんです。お願いします。」


リン :「わかったわ。なんとか話をしてみるわ。」


----------------------------


教師 :「はあ? 体育倉庫の綱が怪我や病気だから使うな? お前ら、また、くだらないいたずら考えてるな?」


シオン:「だって、本当に綱がしゃべったんだもん。」


教師 :「あのなあ、綱は怪我をしたり、病気になったりしないんだ。しかも、しゃべるなんてありえんだろう。さあ、帰った帰った。先生は忙しいんだ。お前たちの暇つぶしには付き合えない。」


やっぱり、信じてもらえなかった。


シオン:「どうして信じてくれないんだろう。」


リン :「大人は大人になるときに『嘘』を覚えるんだって。その代わり、大切なものが目に見えなくなって、人の話が信じられなくなるんだって。」


シオン:「あ~あ。大人にはなりたくないなあ。ずっと、子供でいたい。」


リン :「ほんと~。でも、どうする。」


シオン:「アプリコット先生に相談してみようか?」


リン :「期待できないけどね。」


案の定、アプリコット先生に話をしてみても、信じてもらえなかった。


あんず:「う~ん。信じたいけど。体育の先生を説得するには無理があるわね。」


しょうがなく、二人はとぼとぼ体育倉庫に帰って行った。


シオン:「結局、理解してる振りをして、実は何も助けてくれない。大人ってずるい。」


リン :「ママも言ってた。口だけは立派で『困ったら助けてあげる』ていうんだけどその実何もしれくれないで威張ってるのが上司なんだって。」


リン :「でも、どうしよう。あの綱引きの綱になんていったらいいんだろう。」


シオン:「大人と上司は使い物にならない言って正直に言おう。」


そんな二人を用務員のゲンさんが見かけて二人に声をかける。


ゲン :「いたずらコンビ。今度は何怒られた?」


リン :「あ、ゲンさん!」


シオン:「ゲンさん、きいてきいて。ひどいんだよ~。」


リンとシオンは用務員のゲンさんに綱引きの綱の話をした。


ゲン :「そうさのう、わしには魔法が使えんからわからんのう。でも、その声が、みんなに聞こえたらみんな分かってくれるんじゃないかの?」


シオン:「あ、その手があったわ。」


リン :「どういうこと?」


シオン:「あのね。」


シオンはリンに耳打ちをする。


リン :「それならみんな気付いてくれる。」


シオン:「私たちって頭がいい!!」


リン :「じゃあ、さっそく準備よ。」


そんな二人をゲンさんは温かく見守った。


----------------------------


次の日、運動会の予行練習だった。予行練習って言うのは本当の運動会の前に本番そっくりに行う練習のことだよ。


上級生:「先生、この綱に変な張り紙貼ってあります。」


用具係の上級生が綱引きの綱を準備しているときに言った。


先生 :「なになに。『怪我をしてるので今日は休ませてください』に『今日は病気なので休ませてください』だと?なんじゃこりゃ。」


2本の綱を用意してあるが、両方とも変な張り紙がしてあった。


先生 :「くだらないいたずらだ。気にしないではがして使うぞ。綱が怪我したり病気になるわけない。それに2本しかないんだから休ませるわけには行かない。」


綱引きの参加者が入場してきた。慌てて綱を持って準備がなされた。


綱引きを行う参加者が綱の右左に並んで準備をする。


先生 :「位置について。よ~い。」


そのときだった。


「やめてー!」


大きな声が響いた。


慌ててピストルを持った先生がピストルをおろす。


「怪我してるって言ってるじゃない。引っ張ったら痛いじゃない!止めてよ!」


その声は綱引きの綱から聞こえる。


綱A :「人間なのにどうして相手の気持ちがわからないの? こんな大勢でひっぱったら痛いに決まってるじゃない。綱の代わりに人を引っ張ればいいじゃない。そうすれば痛みがわかるわ。」


綱全体から声が聞こえる。先生達が慌ててかけよって綱を調べる、なんの変哲もない綱だ。


児童 :「気味悪い」


児童 :「なんかののろいか?」


児童 :「これ、引っ張ったら途中で切れちゃうんじゃないか?」


がやがやと声が聞こえる。


先生達が協議している。


しばらくして先生から説明があった。


先生A:「一応、念のため綱を交換します。ちょっとお待ちください。」


そうして、もう一本の綱が用意される。


あらためて参加者は綱を持って準備する。そのときだった。


「触らないでーー!」


また、綱から声が聞こえる


綱B :「病気だって言ってるでしょ。つらいんだから触らないでよ。」


皆、綱から手を離す。なにごとかと参加者の間でざわざわと声が聞こえる。児童の中には座り込んで泣いてしまった女の子もいる。


綱B :「あなた達だって病気のとき、大勢で押しかけて、みんなでべたべた触られたら嫌でしょ。そんなことくらいわかるでしょ。どうして人間って自分勝手なの。自分達の楽しみのためなら、相手がいやだって言ってるに何やってもいいの?」


参加者たちが顔を見合わせる。


先生 :「綱がしゃべるなどありえない。さあ、続きをやりましょう。」


一人の先生が意を決してそう発言する。


児童 :「やりましょうって、この状態で行ったらどんな事故がおきるかわからないじゃないですか。綱が切れたり、あるいは暴れだしたらどうするんですか。」


先生 :「綱が暴れることはないだろう、いくらなんでも。」


児童 :「綱がしゃべる事だってありえません。」


先生達が協議する。


しばらくして


先生 :「綱引きの予行演習は中止だ。それと心当たりがある。リン、シオンこっちに来い。」


先生がリンとシオンを職員室に呼び出す。


先生 :「おまえたちだな? こんないたずらをしたのは。 運動会を妨害して楽しいか。」


シオン:「だって、本当に綱が怪我したり、病気なんだもん。」


リン :「本当なんです。ボク達は綱が喋るのをみんなに聞こえるように魔法をかけただけなんです。」


先生 :「見え透いた嘘を。もう、お前たちの嘘にだまされないぞ。」


リン :「本当なんです。信じてください。」


あんず:「その子たちを信じてあげてください。」


後ろからアプリコット先生が現れる。後ろに用務員のゲンさんがいる。


シオン:「アプリコット先生! それにゲンさん!」


あんず:「話はゲンさんから聞きました。どうやら本当に綱は傷んでいるようです。」


ゲン :「わしは魔法のことはようわからん。でも、用具のことならわかるぞ。確かに、綱は傷んでいて切れかかっているし、もう一本はカビが生えて傷んでおる。」


先生 :「え?」


ゲン :「物は大切に手入れをしないとな。1年に一度使ったら後は暗いじめじめした体育倉庫の中じゃあ、そりゃ、痛むわ。ちゃんと手入れせんと。」


先生 :「そうだったんですか。すいませんでした。」


シオン:「そうよ。私たち嘘ついてないもん。」


リン :「そうです。この話は魔法学校委員会に訴えさせていただきます。」


あんず:「もう、あんたたちももうゆるしてあげなさい。先生たちも反省してるから。しょうがない。カステラ出してあげるか。」


シオン:「やった~!」


あんず:「食べ終わったら、みんなで綱たちを助けないとね。」


それから、先生たちとリン達は綱引きの綱を体育倉庫から取り出し、切れかかったところをつなぎ直し、カビの生えたところを洗い落として、お日様のひかりに当てて、乾かしたんだ。


綱たちの喜んだこと。喜んだこと。


そして、すっかり元気なった綱引きの綱と運動会本番を迎えたんだ。


ワッショイ、ワッショイ。赤勝て。白勝て


どっちが勝ったかは分からないけど。楽しい運動会だった。


おしまい




-------------------------------


女の子:「どうだった? 面白かった? みんな物は大切に使わないとだめよ。それと、うそついちゃだめよ。嘘をつくのは大人になってから。」


子供たちは「うん」とうなずく。


女の子:「じゃあ、今日はこれでおしまい。また今度来たら読んであげるわ。」


そういうと子供たちは病室に帰って行った。


後には私と女の子だけが残った。


美鈴 :「面白い本だね。 あんまり見かけないけどとなり街の子?」


女の子:「え? 青葉台だよ。」


美鈴 :「え~。すごいご近所さん。 今日はこの病院のお見まい?」


女の子:「うん、そんなところ。ちょっと楠木さんに渡すものがあって。」


美鈴 :「舞ちゃん?」


女の子:「うん、ここで待ってれば舞ちゃん来るって。美鈴ちゃんも舞ちゃん待ってるの?」


美鈴 :「うん、そうだけど。でも、なんで私の名前知ってるの?」


女の子:「え? そんなの当たり前じゃない。クラスメートじゃない?」


美鈴 :「え?」


こんな子いたっけ。記憶に全然ない。眼鏡かけた髪の長い女の子。もしかして違うクラスなのでは?


美鈴 :「えっと、2年1組だよね。」


女の子:「そだよ。花の丘小学校の2年1組。どうしちゃったの?」


そんな、思い出せない。


女の子:「美鈴ちゃん、変だよ。まるで私のこと忘れちゃったみたい。昨日だって社会科見学で一緒にお弁当食べたじゃない。それで、美鈴ちゃん箸忘れて貸してあげたの覚えてないの?」


確かに昨日は社会科見学だった。そして、本当に箸を忘れた。でも、でも、借りたのは舞ちゃんであなたではない。


美鈴 :「ち、ちがう。」


女の子:「まあ、人の記憶なんて当てにならないわ。でも、親友のこと忘れるなんてちょっとショックだな。」


美鈴 :「そんな。私、あなたと今日初めて会ってる。」


私はもう何が何だか分からなくなってきた。


舞  :「どうしたの?」


いつものようにオーバーオールを着た舞が入ってきた。


女の子:「あ、舞ちゃん、美鈴ちゃんがおかしいの。私のこと忘れちゃったっていうの。」


舞  :「え? 美鈴ちゃんどうしちゃったの? いつも3人で遊んでるじゃない。それをどうして。」


舞ちゃんまでそんなことを言う。


女の子:「この前の日曜日、二人とも青葉台のうちに来たじゃない。」


舞  :「うん、うん。」


美鈴 :「思い出せない。思い出せない。」


女の子は舞と目を合わす。


女の子:「ねえ、美鈴ちゃんしっかりして。本当に忘れちゃったの? ゆっくりでいいから思い出して。」


女の子は私の顔をじっと見る。この顔、どこかで会ったことある。やっぱり、私大事なこと忘れてるんだ。


舞  :「メロの副作用ね。白血病の薬。ゆっくり思い出そう。美鈴ちゃんが悪いわけじゃない。」


きっとお薬のせい。でも、今日の検査でそんなこと言われなかったのに。


美鈴 :「うん、ごめんなさい。でも、だんだん思い出してきた。なんとなく前にも会ったことがある気がする。」


舞  :「そうでしょう。あわてずゆっくりと思い出して。」


女の子:「うん、人の記憶なんていい加減なもの。そうやって思い出を忘れることで前に進めるの。お母さんが言ってた。」


舞  :「そう、いい加減なもの。海馬君のいたずら。」


女の子:「美鈴ちゃん、目をつぶってごらん。息を整えて。ほら、だんだん思い出してくる。一緒に歌ったことを。一緒に踊ったことを。」


美鈴 :「うん。」


私は目をつぶって、女の子のいう通りにした。


私が悪い。なんで、大事な友達を思い出せないの。お薬のせいなの? 


女の子:「さあ、こんなつらい世界なんか捨てて、私たちと一緒に行きましょう。リンとシオンの暮らす夢の国へ。そこでは病気に苦しむことなんてないわ。」


美鈴 :「うん。」


そのとき、部屋に誰かが入ってくる音がした。そして、


パン、パンと何かをたたく音がする。


舞  :「はい、そこまで~。ちょっといい加減にしなさいよ。美鈴に変なことしないで。どこへ連れてくつもり?」


目をあけるとそこには新聞紙を丸めたのを持って舞ちゃんが立っていた。


美鈴 :「舞ちゃんが二人!?」


女の子:「いったいなあ、舞ちゃん何するのよ!」


舞? :「そうそう!」


女の子ともう一人の舞ちゃんが頭を押さえてる。


舞  :「何言ってるのよ。二人で美鈴だまして。」


美鈴 :「どうして舞ちゃんが二人?」


舞  :「ああ、私そっくりなのは詩音。私のまねしてるのよ。」


詩音 :「てへっ」


美鈴 :「え~!? 詩音ちゃん? じゃあ。もうひとりのこの子は? 舞ちゃんは知ってるの?」


舞  :「うん。この頃よくあってる。」


美鈴 :「一体どういうこと?」


舞  :「この子の言ってることはほとんど正しいわ。本当に花の丘の青葉台に住んでるし、花の丘小学校の2年1組だし、ひかるやゴンタのこともよく知っている。」


美鈴 :「でも、会ったことない。」


舞  :「うん。会ったことないわ。私もクラスであったことない。美鈴も今日初めて会ったはず。この子の名前教えてあげるね。神崎美鈴。つまり『いたずらポッチ』」


美鈴 :「ええ~?!」


舞  :「いかにも、昔から知ってるふりして、美鈴に近づいてきてたぶらかしたの。そりゃ、同じクラスよ。対世界だけどね。」


ポッチ:「てへ。もうちょっとで連れてけたのに。舞ちゃん、タイミング悪すぎ。」


美鈴 :「詩音ちゃんの友達のポッチ!? じゃあ、やっぱり対世界の人?」


舞  :「うん。対世界の神崎さん。ポッチはこっちの神崎さんと違っていたずら好きの困ったちゃん。」


ポッチ:「ひど~い。そんな紹介はないと思うよ。」


美鈴 :「なんだ~。びっくりした~。どうりで会ったことないのによく知ってると思った。」


ケラケラと美鈴が笑う。


ポッチ:「対世界だから出来事が同じなのよ。あらためまして。神崎美鈴です。呼ぶ時はポッチ。」


美鈴 :「は、はじめまして。丸山美鈴です。お名前は前から舞ちゃんからよく聞いてます。」


舞  :「ところで、今日は何しに来たの。ポッチ?」


ポッチ:「舞ちゃんに頼まれていた本のコピー持ってきたんだよ。タグオブウォー。」


そういってポッチは舞にコピーを渡す。


舞  :「わあ、ありがとう。これでみんなに読んであげられる物語の種類が増えるわ。」


ポッチ:「どういたしまして。」


詩音 :「そろそろ帰らないと。舞ちゃん、美鈴ちゃんまたね。今度、夢の国に一緒に行こうね。」


ポッチ:「そうね。もう戻らなくっちゃ。遅くなっちゃったからね。今日は楽しかった。じゃあ、またね。」


そう言ってポッチ達は帰って行った。


舞  :「変な子でしょ。」


美鈴 :「うん。でも面白い人。物語を書いて読んで、いたずらするなんて。まるでたかし兄ちゃんみたいな人。」


舞  :「まあね。でも、これから賑やかになるわね。詩音とポッチがこっちに来るようじゃ、どんないたずらされるかわかったもんじゃない。」


でも、舞ちゃんの顔は全然困った風じゃなかった。


------------------------------


詩音 :「どう? 丸山美鈴ちゃんは?」


ポッチ:「元気してた。まだ、大丈夫。」


詩音 :「そう、よかった。」


ポッチ:「でも、やっぱりびっくりした。」


詩音 :「でしょう。だってあまりに似てるんだもん。こっちの丸山美鈴さんに。」


詩音はニヤっと笑ってそう言った。


つづく






ポッチ:「ということで『タグオブウォー』でした。」


詩音 :「久しぶりの作中作で久しぶりの院内学級の物語よね。」


ポッチ:「志穂さんとの約束で書かないといけないからね。」


詩音 :「どういうこと?」


ポッチ:「約束したじゃない。『人のために役立たないいたずらしちゃだめ』って。」


詩音 :「ああ~、物語にしちゃえばどんないたずらもOKになる!」


ポッチ:「でしょう~。」


詩音 :「ポッチも悪い子よね~。人のこと言えないけど。」


ポッチ:「てへ。さて、次回のトリックエンジェルは?」


詩音 :「『木箱』です。なんで私たちが対世界に行けるようになったかのお話です。」


ポッチ:「本当は5章の第一話になるはずだった話です。」


詩音 :「お楽しみに~。」

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