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1-6.トリックエンジェル

たかしが院内学級の部屋にみんなを呼んだ。今日は土曜日なので院内学級の授業はお休みだ。


私とかのんと美鈴がきた。


たかし:「今日は取って置きのお話をしようと思うんだ。この院内学級だけに伝わる秘密の話なんだ。ききたいかい?」


美鈴 :「うん」


私もうなづいた


かのん:「どんなお話?」


たかし:「トリックエンジェルってお話さ。」


舞  :「とりっくえんじぇる?」


たかし:「ああ、『いたずら天使』って意味なんだ。」


かのん:「おもしろそう。聞かせて、聞かせて」


たかし:「よしわかった。じゃあ、大人しく聞いてるんだぞ」


3人はうなずく。


たかし:「ある世界に、そう、こことは別の世界だ。そこに二人の子供の天使がいたんだ。ところが、その二人の天使はとってもいたずらだったんだ。いたずらして人を驚かしてばっかりいたんだ。」


舞  :「悪い天使ね。」


たかし:「そう、悪い天使だ。でも、憎めないいたずらばっかりしてたんで周りの大人もあんまりおこらないんだ。だからどんどん悪さをしちゃう。」


かのん:「たかしにいちゃんみたい」


たかし:「あちゃ~。俺ってそんなかよ」


美鈴 :「あはは。」


たかし:「その二人は天使のくせに魔法使いの帽子をかぶり、魔法使いのマントをはおい、魔法使いの杖を持って魔法でいたずらするんだ。」


美鈴 :「魔法使いの帽子ってどんなの?」


たかし:「こんなんだよ」


たかしはその二人の姿が書かれた画用紙をみんなに見せた。黒くてふちがあって、とんがってて、先がちょっと曲がってるやつだ。


かのん:「はろうぃんでかぶる帽子だ」


たかし:「かのんはよく知ってるね。そう、ハロウィンで魔法使いの格好するときにかぶる帽子だ。」


舞  :「でも、天使なのにどうして魔法使いの格好をしてるの? すこしお馬鹿なの?」


たかし:「とんでもない、その二人は学校でも1,2を争うくらい頭がいいんだ。そうじゃないといたずらなんて思いつかないからね。」


舞  :「じゃ、どうして、魔法使いの格好してるの?」


たかし:「きっと、かっこいいファッションだと思ったんじゃないかな。」


舞  :「ふ~ん、へんなの。やっぱりお馬鹿じゃない?」


かのん:「それで、それで」


かのんが先をせがむ


たかし:「ふたりは、さんざん学校の先生にいたずらして、毎日笑いながらすごしてたんだけど、だんだん飽きてきちゃってつまんなくなっちゃたんだ。」


美鈴 :「ふ~ん」


たかし:「それで、新しい刺激を求めて別の世界でいたずらすることにしたんだ。」


舞  :「飽きたんならいたずら止めればいいのに」


かのん:「舞ちゃ~ん。それじゃお話続かないでしょ~。それで、たかしにいちゃん続きは?」


たかし:「別の世界についた二人はひとりの女の子と出会うんだ。その女の子は家の中でベットでねていたんだ。そしてさっそくいたずらを開始するんだ。」


かのん:「どんないたずらしたの?」


たかし:「まずはびっくり箱」


美鈴 :「それじゃたかしにいちゃんとおんなじだよ」


たかし:「へへへ。そうか?」


かのん:「続き~」


かのんは私と美鈴がときどき話の腰を折るが気に入らないらしい。


たかし:「それ以外にも、いろいろなトリックをするんだけど、その女の子は笑ってばかりいるんだ。」


美鈴 :「どうしてなの?」


舞  :「もしかして、その女の子もお馬鹿?」


たかし:「舞ちゃ~ん。そんなこと言っちゃダメだよ」


たかし:「でも、いたずら天使の二人もそこが不思議だったのでその女の子に聞いたんだ。なんでそんなにおかしいのかって」


かのん:「ふんふん」


たかし:「そうしたら、その女の子は病気を患っていたんだ。だから、毎日苦しんでばかりいたんだ。だけど、自分を信じてて頑張って治そうとしてたんだ。友達もときどきお見舞いに来てくれるんだけど、悲しそうな目をしたり、目をそらして『頑張って』としかいわないんだ。もう、十分頑張ってるのにね。」


3人は目を伏せる。


たかし:「だけど、いたずら天使の二人は、ちゃんとその女の子のほうをみて、いろんなことをやってくれたのがうれしかたんだ。例え、それがいたずらだったとしてもね。」


たかし:「その話を聞いたいたずら天使たちはその女の子に質問したんだ。」


かのん:「なんて、なんて?」


たかし:「『お医者さんはどうしたの?』って。そしたら女の子は『この病気は治らないからって見放された』って答えたんだ」


美鈴 :「・・・」


たかし:「そしたら、今度は天使たちは『お薬はないの?』って聞いたんだ。そうしたら、『この病気に効くお薬はないって言われた』と答えたんだ。」


かのん:「・・・」


たかし:「そうしたら最後に天使たちは『あなたが痛いときにからだをさすってくれるお母さんはいないの』ってきいたんだ。そうしたら『お母さんは私が生まれたときに死んじゃった』って答えたんだ。


舞  :「・・・」


たかし:「二人の天使はすごいショックをうけたんだ。自分の才能にうぬぼれて、面白おかしく生きてきた自分が恥ずかしいと思ったんだ。」


たかし:「それで二人は相談したんだ。自分たちの力でこの女の子を治して上げることはできないかって。そして、よく考えた上で、一つの方法を思いついたんだ。自分たちは子供でまだ女の子を治せないけど、治せる人を魔法で呼び出すことはできるって。」


たかし:「そこで、二人は魔法を唱え始めるんだ。二人で向き合い、杖を 交差させてこう呪文を唱えるんだ『アイル、アイム、アイフ。アイレ、アイメ、アイヒ。』そういって世界一のお医者さんと、お薬をつくる世界一の科学者と世界一優しいお母さんを召喚してしまうんだ。それで、その3人が力を合わせて女の子を治しちゃうんだ。」


たかし:「だけど、いたずら天使は力を使い果たしてしまったんだ。もう元の世界に帰ることも、いたずらすることもできなくなっちゃうんだ。この召喚魔法は究極召喚魔法で一生に一度しかできない魔法だったんだ。それをきいた女の子は泣いて二人に謝ったんだ。後悔してないのかって。だけど二人はこういったんだ。『なんで謝るの?かけがいのない友達ができたのになんで後悔するんの?』って」


いつも間にか3人は泣いていた。すこしして落ち着いてから


かのん:「その後3人はどうなったの?」


たかし:「お話はこれでおしまい。その3人がどうなったかはだれも知らない。だって、このお話は昔のお話じゃなくて未来のお話だから、その先なんてだれもしらないんだ。」


たかし:「どうだった。今日の話はこれでおしまい。」


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私はこの物語がたかしにいちゃんの話の中で一番大好きな話だ。本当に起きるか起きないか、かのんと美鈴と3人でよく話した。

かのんと美鈴はこの話は本当に起る未来の話だと思ってる。でも、私はそこまでは信じていない。ちょっと無理がある。だから、私は物語として純粋に楽しんだ。


信じる信じないどちらにしても、私たち3人には忘れられない物語である。


つづく

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