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4-18.学会(前編)

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

夏休みも終わり2学期が始まった。


 かのんが北海道の病院で入院しているので美鈴と一緒に学校に通う。学校が終わると美鈴と一緒に家に帰る。美鈴の母親が仕事に行っているため、帰ってくるまでは舞の家に一緒にいる。


そのため、病院のボランティアの回数が少し減ってきている。


それでも週2~3日は通っている。


そんななか、冬子と舞が二人とも草薙先生に呼ばれる。


舞  :「私だけじゃなくて冬ちゃんにも用事なの? 今度は『はしか』でもはやり出したの?」


去年の水疱瘡騒動を思い出し舞が話をする。


草薙 :「いやいや、二人に会わせたい人がいるんだ。キャサリーン!」


奥から背の高い女性が出てきた。


舞  :「キャサリンさんだ!」


冬子 :「え? キャサリンさん? もしかして、この人が草薙先生の彼女ですか。」


草薙 :「だから、それは違うって。前にも言ったじゃないですか。」


草薙先生があきれて話す。


草薙 :「で、二人に用事があるのはキャサリンの方なんだ。」


キャサリン:「イエース」


べらべらべら~と英語で何か話している


冬子 :「冬子、英語わかりません。」


草薙 :「まあ、簡単に言うと来月学会で発表があるから一緒に出席してほしいってことだ。ラインベルク症候群の症例でキロニーネで治った女の子を学会や関係者に紹介したいらしい。」


冬子 :「そんなのでしたらお安い御用です。冬子、一生懸命頑張ります。」


舞  :「冬ちゃん、頑張るのは私の方なんだけど。でも、いいですよ、私でよければ。場所はこの街ってことはないから東京?」


草薙 :「いや。ちょっと遠い。だから冬子さんに付き添ってもらおうと思って二人を呼んだんだ。」


冬子 :「大阪ですか? 冬子一度大阪に行ってみたいと思ってました。冬子大阪でくいだおれます。」


舞  :「大阪の食べ物っておいしいの? いってみた~い」


二人で勝手に盛り上がる。


草薙 :「いや、その、もうちょっと遠いんだ。」


冬子 :「九州の博多ですね。天神とか中洲とか。あそこもおいしいです」


舞  :「違うよ、北海道だよ。札幌。」


冬子 :「北海道もいいです。すすきのあたりでバターラーメンです。」


草薙 :「いや、外国なんだ。」


舞  :「外国?」


草薙 :「サンフランシスコなんだ。」


舞  :「サンフランシスコ?」


冬子 :「ああ、びっくりしました。外国って言うからアメリカみたいな遠いところを想像しました。なんだ、サンフランシスコですか。中国ですね。冬子安心しました。」


草薙 :「いや、だから、サンフランシスコはアメリカだよ。」


冬子 :「は?」

舞  :「へ?」


--------------------------------------


ということで、10月に1週間学校休んで舞は冬子と一緒にサンフランシスコに行くこととなった。


学校を休むことになるから、先生は怒るだろうと舞は思っていたが、草薙先生が校長先生に話をしてくれ、担任の先生もいい機会だからっていってOKをもらった。


響子 :「秋のサンフランシスコなんていいわね~。」


響子が冬子の夕食を食べにきている。


あきら:「何がいいんだか具体的に言ってみろ。」


響子 :「あきらも細かいとこ突っ込むわね~。雰囲気でいったのよ。」


舞  :「ねえ、パパ、サンフランシスコって仕事で行ったことあるって言ってたよね。何があるの?」


あきら:「なにもない。あえて言うなら坂かな。坂はいっぱいある。街はきれいだけどな」


響子 :「ケーブルカーにゴールデンゲートブリッジ。確かにそれくらいしか聞かないわね。」


冬子 :「でも、ガイドブック見ると面白そうなのが一杯あります。歩いて回れる見たいです。早く行きたいです。」


あきら:「冬子、お前が主役じゃないんだ。あくまで舞なんだからな。そこんとこ理解しとけよ。」


響子 :「でも、確かに冬子が付添っていうのもちょっと不安ね。」


あきら:「じゃあ、響子付き添ってくれるか?」


響子 :「無理よ。幼稚園があるもん。それだったら、あきらが行けばいいじゃない。父親なんだし。」


あきら:「おれだって仕事だ。休みなんかとれるか。」


舞  :「でも、パパ、今年夏休みとってないよね。」


あきら:「ああ、忙しくてな。来月には暇になるけどな。って、そうか、社長に聞いてみるか」


舞  :「やった~。パパも一緒に行こう。」


数日後


あきら:「社長が休みをくれた。『娘の病気でアメリカの先生に診てもらう』と話したら即答でOKしてもらった。」


冬子 :「あきらさん、嘘はいけません。」


舞  :「そうだよ~。パパ悪い人。」


あきら:「嘘は言っていない。実際に舞は向こうの専門医と会って話をするんだろう。細かく検査してもらうわけではないけど、診断してもらうようなもんだ。」


舞  :「まあ、そうだけどね。」


そうやって、あわただしく準備を行った。航空機代とホテル代は招待ということでキャサリンたちの方で持ってくれる。しかし、鞄とか言った旅行用品の準備や舞のパスポートをとったりといったこまごまとした準備で大忙しだった。


美鈴 :「いいなあ、サンフランシスコ。」


舞  :「ごめんね~。美鈴も一緒にって思ったんだけど美鈴のお母さんや松井先生に目を吊り上げて反対されちゃったからね。」


美鈴 :「うん、しょうがないよ。まだ、病気治ったわけでないからね。」


美鈴は退院しているけど治ったわけではない。維持療法といって再発防止のためメロとかお薬をのんでいる。そのため、風邪にかかったり、疲れたりするのは厳禁だ。飛行機に乗って長時間移動することなんか許されない。


冬子 :「美鈴ちゃんにはおみやげ買ってきます。アメリカの国旗の模様のついた洋服とかお人形さん買ってきます。」


美鈴 :「ありがとう。でも、なんでアメリカの国旗なの?」


あきら:「アメリカの国旗には星が50個も付いてるからだ。」


美鈴 :「あ。そだね。」


お星様大好きな冬ちゃんらしかった。


舞  :「美鈴、期待させてごめんね。でも、ちゃんといいもの買ってくるね。」


そうこうしているうちに出発の日となった。


響子先生や美鈴と美鈴のお母さん、祐美子さんと健一さんに見送られながら駅を出発した。隣町の大きな駅でバスに乗り換えてそこから成田空港に向かう。


あきら:「冬子、なんだ、その大きな荷物は?」


冬子 :「お弁当です。冬子がよりに腕をかけて作りました。」


あきら:「ピクニックに行くのと違うのはわかってるよな。」


冬子 :「あきらさん、失礼です。これは機内食の代わりです。舞ちゃんを飢え死にさせるわけにはいきません。」


あきら:「あ、忘れてた。」


舞を旅行に連れて行くのはある意味大変だ。食事があわないからだ。どんなにおいしい店に連れて行っても「まずい」「がまんして食べなさい」の応酬となる。そして、最大のネックは機内での食事だ。レストランですらぶうぶう文句を言うのに機内食なんて出したら…


冬子 :「冬子、あきらさんがこの調子だと、これからの旅とっても心配です。でも、安心です。冬子がこんなこともあろうかと荷物の中に一杯食材と調味料持ってきましたから。」


得意げに話す冬子。だけど、この食材、機内持ち込み制限とアメリカでの検疫に引っ掛かり、大半を没収されてしまう。


冬子 :「空港の人もアメリカ人もとてもせっかちでくいしん坊です。冬子が料理してあげるって言ったのに、おなかがすいて待ち切れなかったのか材料のまんま持って行ってしまいました。あのまんまじゃ不味いと思います。」


舞  :「そうだね。今度はちゃんと料理してから持ち込もうね。」


舞が余計なことを言う。その結果、帰りは、ホテルで無理やり調理して持ち込むはめになった。


-----------------------------------------


サンフランシスコ国際空港に着くと、あきらはレンタカーを借りた。


舞  :「電車じゃないの?」


あきら:「ああ。アメリカでは電車は使わない。基本車での移動だ。」


舞  :「でも、パパ運転できるの?」


あきら:「バカにするな。会社じゃ車を使っての移動が基本だ。それに出張に来た時もレンタカーを借りている。」


舞  :「すご~い」


舞が妙な所に感心する。


冬子 :「冬子、おなかがすきました。さっそく行きましょう。」


待ちきれない冬子がさっさと車に乗り込もうとする。冬子が左のドアを開けて中に入ろうとした時、冬子が固まった。


冬子 :「あきらさん、この車、欠陥車です。すぐ代えてもらいましょう。きっと冬子たちが旅慣れてないからって馬鹿にされてんです。」


舞  :「どうしたの?」


冬子 :「助手席にハンドルが付いています。だけど、運転席にはハンドルが付いていません。これでは、運転手さんが運転できません。」


あきら:「あのなあ。アメリカでは左が運転席。右側が助手席なんだ。」


あきらが馬鹿にしたようにいう。


冬子 :「あきらさん、馬鹿にしましたね。ちょっとした冗談です。冬子知ってます。」


冬子がプイと膨れる。


舞  :「(本当に知ってたのだろうか?)」


舞はあきらと顔を見合わせる。


車で20分くらいでサンフランシスコの市街地のユニオンスクエアのホテルに着く。キャサリンさんが用意してくれたホテルだ。ホテルに車を止めて、さっそく食事に出かける。


冬子 :「冬子いいお店見つけました。あそこに行きましょう。お寿司にかつ丼、ラーメンがあります。」


舞  :「すごい! 冬ちゃん、英語読めるんだ!」


冬子 :「当然です! これでも中学高校6年間英語習いました。」


あきら:「おい、冬子。そこの看板見て言ったんだろ。」


看板には日本語で「寿司、かつ丼、ラーメン」と書いてあった。サンフランシスコでは日本人観光客目当てに日本語の看板がところどころにある。


冬子 :「あきらさん、最悪です。アメリカに来てまで細かいこと気にしてはいけません。まったく困ったものです。さあ行きましょう。」


冬子がずんずんとお店に向かっていく。


あきら:「冬子待て! 何もアメリカに来てまで日本食はないだろう。他行こうぜ!」


冬子 :「あきらさんにしてはナイスアイデアです。確かにアメリカで日本食はどうかと思います。」


あきら:「いい場所知ってる。ついてきな。」


あきらはずんずん坂を降りていく。


舞  :「パパ、どこ行くの?」


あきら:「ケーブルカー乗り場だ。この坂の下にある。」


坂の下に着くと人だかりができていた。ケーブルカーの始発駅があった。


あきら:「ここから乗るぞ。」


間もなくケーブルカーが到着する。そして、満員だった車内から一杯人が降りる。


冬子 :「舞ちゃん、さあ、乗りましょう。あきらさん、3人分のお金よろしくです。」


冬子が舞の手を握りずんずん進む。


あきら:「まて、まだ早い。」


人が降りると駅員がケーブルカーの周りにとりつく。そして、ケーブルカーを回し始める。


あきら:「方向転換が必要なんだ。」


舞  :「おもしろ~い。人で押しながら回すんだ!」


冬子 :「アメリカとても遅れてます。いまどき電車を回すなんて「てっぱく」でしか見かけないです。しかも人で回すなんて変です。」


あきら:「観光地なんだよ。風情があっていいじゃないか。」


3人はケーブルカーに乗る。そして、ケーブルカーは再び坂を登り始める。途中で泊っているホテルを左手に進みながら坂を登っていく。鈴なりになった人を乗せケーブルカーは坂を登る。坂を登りきったところでケーブルカーは止まり、車掌が通る声で言う。


車掌 :「チャイナタウン!」


あきら:「さあ、おりるぞ!」


あきらは二人に声をかける。3人は人をかき分け何とか降りる。


冬子 :「ふう、疲れました。日本の満員電車よりも混んでました。女性専用車を作るべきです。」


あきら:「一両しかないのにどうやってつくるんだ。」


あきらがつっこむ。


舞  :「でも、なんでここで降りたの?」


あきら:「ここで食事をするからだ。」


そう言ってあきらはずんずんと歩いていく。


あきら:「ここだ。」


3人の目の前には焼肉屋があった。


冬子 :「あきらさん、変です。さっき、わざわざアメリカにきて日本食屋さんに行くのは変だって言っておきながら、中華街なんて。日本でも食べられます。」


舞  :「しかも、韓国料理の焼肉屋さんなんてさらに変!」


あきら:「文句は食べてから聞こうか。」


そういうとあきらは2人を連れて店に入る。


あきら:「スリーパーソン。」


あきらは指を3本立てて店員に声をかける。店員はにこりともせず3人を席に連れていく。


冬子 :「この店、店員の教育できてないです。『いらっしゃいませ』ひとつ言えません。」


あきら:「それは日本の文化だ。海外に来てまで期待するな。」


冬子 :「でも、これでは、味など全く期待できないです。」


舞  :「私もそう思う。」


あきらはにっこり笑って、注文する。


あきら:「オーダー、プリーズ。カルビにロースにハラミにタンね。あとライスが3つにビアを2つ。」


あきらは日本語でメニューを指しながら指で数を示して注文する。店員はメモをとり、去って行った。


舞  :「日本語で大丈夫なの?」


あきら:「別にメニューを示して、数を指で出したから通じるよ。アメリカに来たから無理やり英語で話そうとするから通じないんだ。ボディランゲージ交えて話せばたいがい通じる。こういうのはパターンがあって、パターンさえ合ってれば言語は関係ないんだ。」


舞  :「パパ、すご~い」


舞が感心する。


冬子 :「でも、ちょっと足りなくありませんか? それに野菜もないです。」


そう言っているうちに、山もりのお肉が来た。


あきら:「一人前の量が違うんだ。そして、サラダはバイキング形式で食べ放題。まあ、食ってみろ」


そうして3人は肉を焼き始める。たれをつけて食べると舞がびっくりした声を上げる。


舞  :「おいしい! 冬ちゃんの料理には勝てないけど、すごいおいしい。」


冬子 :「おいしいです。なんでこんなにおいしいんですか? 日本でこんなおいしい焼肉屋さん知らないです。」


あきら:「そりゃそうだろ。韓国で本当にいい腕を持った料理人は日本には来ないさ。アメリカで一肌上げようとするから、うまい店が多いのさ。これを日本で食べるとしたら板橋あたりの隠れた名店に行かないと無理だな。」


あきらは自慢する。


そんな自慢話を冬子と舞は半分聞きながら夢中で食べる。


冬子 :「もう、冬子おなかいっぱいです。これ以上食べられません。」


舞  :「私もおなかいっぱい。もうむり。後はパパ食べて。もったいない。」


あきら:「おれも、おなかいっぱいだ。」


冬子 :「でも、もったいないです。」


あきら:「大丈夫だ。ドギーバック、プリーズ」


あきらは店員に声をかける。


舞  :「ドギーバック?」


あきら:「ああ、自宅の犬に残りを食べさせるからもち帰り用の袋をくれって意味だ。」


冬子 :「うち犬かってないです。」


舞  :「それにかってたとしても、日本に持ち帰れないよ。」


あきら:「ちがうちがう。犬のためって言うのは名目で人間が食べるんだよ。でも、ちょっと恥ずかしいから犬用っていうんだ。」


冬子 :「冬子感心しました。ちゃんと残さず食べれます。」


あきら:「ああ、システムとしてしっかりしている。ホテルに持ち帰って食べよう。調理器具を借りられなかったらキャサリンさんに言って助けてもらおう。」


結局、ホテルには調理器具を借りられなかったのでキャサリンさんに言ってキャサリンさんの家で冬子が料理することとなった。もちろん、キャサリンさんはフォークとナイフを落として「アンビリーバボー!」を連呼したが。


つづく

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