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4-12.新学期

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

4月になり入学式も終わり新学期が始まった。


舞  :「入学式ってあんなだったんだね。すごいいっぱい入学生も在校生もいるのにびっくり。」


かのん:「うん、私、幼稚園も行ってないから初めて入学式って見た。すごいおどろいた。」


ひかる:「かのんはともかく舞まで入学式に驚くのは意外よね。」


舞  :「だって、私も去年の一学期は入院してたんだよ。」


ひかる:「とても、そうは思えないほど今は元気だよね。それに、勉強だってあっという間に追いついて優等生だし。」


かのん:「かのんもそうなるかな?」


ひかる:「きっと大丈夫だよ。まずは学校に慣れて健康になること。勉強はそれからでも十分だって木ノ内先生も言ってた。」


 木ノ内先生は加配の先生として空いている時間かのんを見てくれることになった。そして、支援員として副担任の前山先生がかのんのお手伝いに入ってくれた。支援学級のないこの学校では普通学級での支援が基本となる。


 そして、2年生になったら2階になるはずだった教室も使われなくなった視聴覚教室を潰して、1階に教室として作られた。かのんが階段で苦労しないようにとの配慮だった。


 私は、ひかるの発言にちょっと複雑な心境だった。


舞  :「(かのんは治ったわけでない。一時退院にすぎない。また、病院に入院しなければいけない時期が来る。)」


かのんは心臓が悪い。この病気は一進一退をくり返す。少し良くなっても体が大きくなることによって心臓に負担が来る。永遠に小学2年生ならいいけど、少しずつ大きくなって、治ったはずの心臓病は負担が大きくなることによりぶり返す。それだったら、病院に入院し続けたらいいかもしれないが、できるだけ、みんなと同じ生活をしたい。そういうかのんの願いを聞き入れて主治医の秋本先生が許可した。


秋本 :「できるだけみんなと同じ生活をさせてあげたい。調子が悪ければ戻ってくればいい。学校も病院の近くだ。何かあったら私が駆けつける。」


 そういって先生はかのんを送り出した。


かのん:「入学式の校長先生の話、とっても素晴らしかった。やっぱり一番偉い先生だよね。」


私はくすっと笑った。


舞  :「(その校長先生のおでこに光を当てて喜んだ子もいたっけ。)」


詩音が自慢げに書いた不思議な世界のノートを思い出した。


舞  :「(怒られてげんこつもらってた。馬鹿だよね)」


かのん:「何よ、舞。何かおかしいこと言った?」


舞  :「ううん、ちょっと不思議な世界のことを思い出しただけ。」


ひかる:「不思議な世界?」


かのん:「気にしなくていいわ。舞は時々想像の世界にいっちゃうの。ロバンチストだっけ?」


ひかる:「それをいうならロマンチスト。確かに舞ってそういうとこあるわよね。物語好きだもんね。」


私は時々学校でも院内学級の物語をみんなに読んでいる。でも病院ほどは受けない。ひかるくらいだ。ちゃんと聞いてくれるのは。


ひかる:「まるで赤毛のアンだよね。」


舞  :「赤毛のアン?」


ひかる:「読んだことない? 面白いんよ。主人公がすっごくロマンチストなの。だけど孤児なのよ。それで子供のころ友達がいなくてガラスに映る自分を見て、友達にしてたんだ。」


舞  :「なんかそれショック。まるで私にお友達いないみたい。」


ひかる:「そう言ったんじゃないよ。単純に自分と同じ子が友達なんて赤毛のアンみたいだって思っただけ。」


かのん:「きっと、その子、右利きだよ。舞ちゃん左利きだから、ガラスに写る友達なら反対の右利き。」


結局二人は不思議な世界の話を信じてはいなかった。


舞  :「(信じてくれるのは美鈴だけか。しょうがないけどね。)」


神崎 :「そうそう、また、今度天文台行かない? 少しあったかくなってきたし。」 


かのん:「うん、行こう! 今度は北の空見たい!」


星好きのかのんが即座に返事をする。


神崎 :「ひかるちゃんも楠木さんも来るよね。」


舞  :「もちろん」


ひかる:「私もいいわよ」


舞  :「ねえ、もう一人連れてきていい?」


神崎 :「いいけど。誰?」


舞  :「美鈴。」


神崎 :「え? 私?」


舞  :「ううん、丸山美鈴って子。」


ひかる:「ああ、美鈴ちゃんね。もう退院したんだもんね。」


神崎 :「丸山さんね。いいわよ。賑やかの方が楽しいわ。じゃあ、今度の土曜日の夜ね。」


---------------------------------------------


土曜日の夜、かのんのママと神崎さんのパパに連れられて街外れの天文台にやってきた。


山本 :「またちびちゃんたち増殖したな。こんどは、いち、にい、さん、、5人か。しかも女の子ばっかり。」


かのん:「女の子の方がうれしいでしょ。」


山本 :「もう少し、大きい女の人の方がいいかなあ。」


かのん:「いったなあ~。」


案内人の山本さんとかのんがじゃれあってる。すっかり、おなじみさんになっている。


神崎さんはもう先に一人で、観測所に向かっている。手には星座早見盤を持って空と比べている。


神崎 :「北斗七星見つけた!」


神崎さんがうれしそうに言う。


そんな神崎さんを見ながら私たちはゆっくり後を追いかける。


神崎パパ:「星の見え方は意外と普通なんですね。天文台というからもっと星が見えるかと思ってました。」


山本 :「ええ、街外れとはいえ、市街地ですからね。結構光が多くて、肉眼では3等星までしか見えません。山の中の天文台のようにはいきませんね。」


神崎パパ:「でも、なんでこんなところに天文台を建てたんですか?」


山本 :「教育の一環ですよ。星に親しんでもらうために。ここならではの楽しみ方があるいんです。」


そういうと山本は神崎さんのお父さんに双眼鏡を渡した。


神崎パパ:「双眼鏡? 望遠鏡でなくてですか?」


山本 :「はい。低倍率の双眼鏡の方が楽しめることもあるんですよ。例えば、南にふたご座としし座の間にぽっかり穴が開いたように黒くなってるところがあるでしょう。そこをのぞいてみてください。ボルックスとレグルスの間くらいです。ちょうど、あの三本杉の真ん中の木の上あたりです」


神崎パパ:「どれどれ」


そう言ってそのあたりを双眼鏡でのぞいてみる。


神崎パパ:「え? なんだこれ! 宝石箱がある!」


かのん:「かのんにも見せて。」


そう言って、かのんが双眼鏡を取り上げる。


かのん:「あ! かに座のプレセペ星団! きれい!」


私たちも交代で見せてもらった。箱の四隅に星があり、その中に宝石のように一杯星がちりばめられていた。


美鈴 :「きれい。」


ひかる:「でも、双眼鏡使わないと見えない。」


山本 :「はい、肉眼では5等星くらいなのでここでは見えません。でも、望遠鏡だと逆に大きくなりすぎてよく見えないんです。双眼鏡がちょうどいい感じです。」


神崎パパ:「なるほど、これだと何となく星座がわかるんですね」


山本 :「はい。例えばこれで北極星の周りを見てください。」


かのん:「あ、北斗七星みたいに柄杓が見える。」


山本 :「ええ、普段は暗くて見えないのですが、双眼鏡ならばっちりです。」


みんなで交代で双眼鏡で星を見る。


神崎 :「そういえば、なんで、北斗七星のおおぐま座も北極星のあるこぐま座も熊のくせに尻尾が長いの?」


山本 :「え? えっと、それはね~。うん、はい、かのんちゃんよろしく。」


かのん:「山本さんわかんないんでしょう。」


山本 :「そんなことないぞ」


かのん:「ほんとかな。 でも説明するね。あれは親子の熊なんだけど、もとは人間の母と子だったの。だけど、ゼウスの妻のヘラの怒りにふれて熊の姿にさせられちゃったのよ。それで、ゼウスがかわいそうにって思って、夜空に放り投げたの。」


舞  :「でも、それだとしっぽが長くなる理由になってないよ。」


かのん:「しっぽをつかんで思いっきりの力で投げたのよ。だから、しっぽが長くなっちゃったの。」


ひかる:「へ~。かのん、よく知ってるわね。ちょっと意外。」


かのん:「なんか、前にも誰かに言われた気がする。」


美鈴 :「あはは。それ淳君だよ。『勉強できなさそうに見える割には知ってる』って」


ひかる:「別に深い意味はないわ。本当に感心してるのよ。」


かのんがふくれっ面をする。


そんなかのんをほっておいて神崎さんが山本さんに提案する。


神崎 :「ねえ、星座早見盤のここのところに渦巻きがあるんだけど、これ見たい。」


山本 :「これは銀河だね。望遠鏡じゃないと見えないよ。じゃあ、この天文台で一番大きな40cmの望遠鏡で見てみよう。」


かのん:「やった~。」


ふくれっ面をしていたかのんが機嫌を直して山本さんと神崎さんについていく。


舞  :「かのん、車いす!」


かのん:「大丈夫。これくらいなら平気。」


舞  :「もう。」


私は口では文句を言ったけど、こうやって、みんな治って、一緒に遊びに行ける日が来たんだと思うとすごくうれしかった。

 

この日の思い出は私と美鈴にとって一生忘れられない思い出となった。


つづく


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