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トリックエンジェル ~院内学級の物語  作者: まーしゃ
第3章 エジソンプロジェクト編
29/88

3-9.指導実績

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

響子は詩音とポッチの指導実績を見て愕然とした。


...ふたりともテストはほぼ満点。どの教科にもぶれがない...


...知能指数はポッチのほうが上...


...10年に一度出るかでないかの天才が二人同じクラス...


...時々辛らつないたずらを用意周到に準備をして行う。その場合、学校側の不備や担任の先生の矛盾といった痛いところをついてくる...


...国家の極秘プロジェクトが裏で動いている形跡あり...


そういえば、校長が赴任してきたとき言っていた。


校長 :「とにかく、平穏無事に進級させればよいです。多少のことは大目に見てやってあげてください。エジソンの母になった感じでお願いします。」


つまり型にはめるなってこと?


他の児童はどう指導する?


校長 :「あのクラスは問題児は2人だけです。それ以外の子はあの二人を押さえ込めば同調したりしないでいい子達です。でも、あの二人を押さえ込めないと一気に学級崩壊の危機に晒されます。」


なるほどね。


校長 :「ただし、ポッチのお父さんはモンスターペアレント気味なので注意願います。」


職業は弁護士だったはず。いづれ家庭訪問が必要ね。



先生 :「あの~」


響子 :「はい。あ、前山先生。」


前山先生は今回の欠員の中で補充された先生の一人だ。ほかにも川上先生と言う新任の先生もこられている。この3人は新しくきた先生と言うことで色々話がしやすい関係になっている。


その中でも前山先生はうちのクラスの副担任だ。初めての私に対してのサポート役に学校がつけてくれた。


前山 :「実は、詩音ちゃんたちのことですが。」


響子 :「何か、やったんですか?」


前山 :「いえいえ、まだ何も。でも、校長からも要注意人物と言われてますが、いまいちピンとこないんです。ごく普通の活発な女の子にしか見えないんですが。」


響子 :「まあね。確かに表面上は普通の女の子よね。」


前山 :「確か先生は詩音ちゃんの幼稚園時代の担任でしたね。幼稚園の時はどうでしたか?やっぱりいたずらばっかりやってましたか?」


響子 :「ぜんぜん。確かに活発でみんなを引っ張ってくタイプだったけど、いたずらはしなかったわ。ただ、ちょっと変った子だったわよ。」


前山 :「ほ~。どんなところが?」


響子 :「晴れてるときは外で遊ぶんだけど、雨が降ってると教室の中で遊ぶじゃない。」


前山 :「ええ、外では遊べませんからね。」


響子 :「そうすると、他の子は教室でお絵かきとかをしてるんだけど、彼女は宿題やってたの。」


前山 :「宿題?」


響子 :「そう、三条博士の宿題。」


前山 :「三条博士って、あのノーベル賞の三条博士ですか。」


響子 :「そう、そして、時々『先生わかんない』っていって聞きに来るの」


前山 :「ほほう、それで。」


響子 :「私もわかんないから、適当にごまかしてた。」


前山 :「どんな問題でした?」


響子 :「三角関数。」


前山 :「はあ?」


響子 :「しかも加法定理とか余弦定理とか使わないと解けない問題。」


前山 :「幼稚園ですよね。」


響子 :「そうよ。今はガウス平面とかフーリエ級数とか勉強してるみたい。」


前山 :「ご冗談を」


響子 :「疑うなら確かめてみるといいわ。私だって信じたくない。」


前山 :「...」


響子 :「結局、その知識をもてあましてるのよね。だからいたずらに走る。なんかいい目的を与えてあげればいいんだけど。」


前山 :「泉先生は彼らのいたずらの被害を受けたことはないんですね。」


響子 :「そんなことないわよ。去年2回あったわよ。わざわざ幼稚園に来てやられた。」


前山 :「はあ。」


響子 :「一回目は『先生学校じゃ飼えないから幼稚園で飼って』っていわれて、こ~んな大きいウシガエル持ってきた。」


そう言って、私は両手でその大きさを示した。そして、その姿を思い出して身震いをした。


響子 :「そのときの担任の先生が、『身近な生き物を持ってきて見ましょう』って、言っちゃったのよね。それで、他の子はザリガニとかメダカとか持ってきたんだ。あの二人はわざわざウシガエルを取ってきて持ってきたのよ。こんなやつ」


あらためてその大きさを示す。


前山 :「まあ、確かにウシガエルを持ってきてはいけません。とはいってないですからね。」


響子 :「他にも、幼稚園で飼ってるロバを連れ出されたこともあるわ。」


前山 :「はあ」


響子 :「私が悪いんだけどね。見つからずにやれるもんならやってみなさいって。防犯装置がいっぱいあったから見つからずに連れ出すことなんて不可能だと思ったんだけど、防犯装置無効化されて連れ出されたわ。」


前山 :「はあ。」


響子 :「とりあえず理科系は得意だから気をつけてね。それと挑発しちゃだめよ。不可能と思うこともやっちゃうから。特に光とか音とかには要注意ね。波関係は猛烈に強いから。」


前山 :「それで三角関数やフーリエ級数なんですね。」


響子 :「まあね~。でも、私がこっちに来てからぱたっていたずらがやんでるのよね~。」


前山 :「先生が怖いからでは?」


響子 :「まさか~、以前からやられてるのに、私が来たからって止める理由はないわ。あの子たちのいたずらぱったりやんでるのには絶対何か別の理由があるわ。」


前山 :「理由?」


響子 :「ええ、何か大掛かりないたずらを仕掛ける準備とか。まあ、本人たちに聞いても絶対口割らないだろうから、少し様子見ですね。前山先生も何か気づいたら教えてください」


前山 :「わかりました。って?あれなんですか?」


前山先生が窓の外の校門の方を指差す。そこにはロバに乗った2人の少女がいた。


響子 :「あいつら、早速何か始めた!」


そいうって一目散に職員室を飛び出した。


----------------------------------


響子 :「あんたたち、サクラを連れて何やってるの?!」


詩音 :「先生、きいて~。パリカールかわいそうなんだよ~。」


ポッチ:「幼稚園追い出されました。飼い主がいないから。」


詩音 :「飼いならされたロバと言えども、こんなに大きいと後ろ足で蹴飛ばされたり危険きわまりない。特に飼い主がいないと言うこと聞かないのがロバの習性であり、飼うのは危険だって。」


ポッチ:「保健所から指導があったみたい。」


詩音 :「危なく、サクラ本当にさくら鍋になるところだったんだから。」


確かに、サクラは眼をつけられていた。最初は小さかったから良かったが大きくなるにつれ幼稚園からいい顔をされなかったのは事実だ。なんとか面倒を見ると言う条件で飼っていたのだった。


響子 :「それで、どうして小学校につれてきたのよ?」


詩音 :「学校で飼うに決まってるじゃない。ねえ~、ポッチ。」


ポッチ:「そうだよね。詩音」


響子 :「そんなの無理に決まってるでしょう。」


詩音 :「校長先生の許可もらってる。」


響子 :「え?」


詩音 :「いいよっていってくれたもん。」


やけに手回しがいい。


響子 :「校長先生が良いと言っても担任の私が許さない。」


ポッチ:「え~。残念。じゃあ、詩音行こうか。」


詩音 :「うん」


響子 :「ちょっと、どこに行く気?」


詩音 :「保健所。」


ポッチ:「かわいそうだけど。しょうがないよね。飼えないだもん。」


詩音 :「響子先生の家でもこんな大きいの飼えないでしょう。というか普通のおうちじゃ、こんな大きいロバ飼えない。近所迷惑にもなるし。」


ぽっち:「飼えないからって、山に逃がすのもね。自分でえさ取ることもできないからすぐ死んじゃうよね。」


詩音 :「大人って無責任よね。可愛いからってもらってきて、飼えなくなるとポイッだもんね。」


響子 :「ちょっと、人聞きの悪いこといわないでよ。わかりました。わかりました。許可します。でも、その前に飼育委員の先生にも聞いてみなきゃ。」


ぽっち:「すでに話は通してあります。私たち飼育係ですから。」


なんだ、この用意周到さは。サクラを小学校で飼う以外の選択肢は事前につぶされている。指導書にかかれていた「辛らつないたずらを用意周到に準備して実行する。」というのを思い出した。


響子 :「あんた達、このために飼育係に立候補したの?」


詩音 :「たまたまだよ。た・ま・た・ま」


とても信じられない。


響子 :「あんたたちの狙いは何?サクラを小学校に持ってきても何の得にもならないでしょう。」


詩音 :「ひど~い。先生も困ってるだろうって思って、一生懸命頑張っているのに、なんで疑うかな~」


響子 :「いや、その、ごめん。」


詩音 :「うん、じゃあ、パリカールを新しい小屋に連れて行くからじゃあね~。」


響子 :「新しい飼育小屋まで準備されてるのか。」


ふたりを見送りぼそっていう。


前山 :「すごいですな。大人を完全に手玉に取っている。しかも、いい事をした以外には見えないし。泉先生、本当に彼女たちは純粋にサクラを助けようとしたんじゃないですか?」


響子 :「う~ん。信じたいんですけどね~。今までの行動を見てるととてもとても。保健所に連絡して指導するように言ったのは彼女たちって考えるほうが素直じゃありませんか?」


前山 :「まさか~。でも本当ならすごい策士ですな。」


響子 :「ええ、すごい策士です。当然なにか狙ってるんでしょうが、今のところしっぽすらつかめませんね。」


私と前山先生は複雑な思いで職員室に戻っていった。

  

つづく     



ポッチ:「いよいよ逆襲開始だね」


詩音 :「えへへ、細工は流々。果報は寝て待て。楽しみ楽しみ。」


ポッチ:「ほんと、詩音の悪だくみには感心しますわ。」


詩音 :「あら、越後屋さん、あなたの悪だくみの方が一枚上ですわよ。まさか、あんな物語にしちゃうなんて。」


ポッチ:「えへへ」


詩音 :「ということで次回トリックエンジェル第30話は」


ポッチ:「『のっぽさん』です。」


詩音 :「院内学級の物語の新作です。お楽しみに~」




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