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トリックエンジェル ~院内学級の物語  作者: まーしゃ
第3章 エジソンプロジェクト編
28/88

3-8.幼保一元化

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

入園式も過ぎ桜が散りかけた頃のことである。


園長 :「ちょっと泉さんよろしいでしょうか?」


響子 :「はい」


私は園長に呼ばれて園長室に入った。


園長 :「泉さんは今年どの学級も担任として持ってらっしゃらなかったわよね。」


響子 :「はい、今年は少し全体を見るようにと園長先生がおっしゃられて。」


園長 :「ええ、そうです。泉先生もこちらに来て4年目。そろそろ次のステップへ上がっていただくためにそのようにさせてもらったんでしたね。」


響子 :「はい。」


園長 :「実は、事情がちょっと変わってしまってね。」


響子 :「はい?」


園長 :「そういえば、幼保一元化ってご存知?」


響子 :「ええ、幼稚園と保育所をいっしょにしていこうと言う動きです。」


園長 :「はい。少子化の世の中の流れとしてこの幼稚園でも考えていかなければなりません。」


響子 :「ええ、そのとおりだと思います。」


園長 :「だけど、保育園を併設するとなると設備投資しなければならないなど経営的に大変なんです。それに、保育園を併設するとなると保育士の資格をもった先生が必要ですしね。」


響子 :「はい。」


嫌な予感がする。


園長 :「幸いにしてこの幼稚園は幼稚園教諭免許と保育士の資格両方持った先生が多くいらっしゃいます。それで両方を兼ねることができるんですが。」


やっぱり。私は幼稚園教諭免許しか持っていない。リストラの話?!


園長 :「確か、泉先生は保育士は持っていらっしゃいませんでしたよね。」


いよいよ本題ね。私は意を決した。


響子 :「園長先生、確かに私は持っていませんが、熱意なら誰でも負けません。必要なら通信教育等で取ります。ですから。」


響子 :「園長先生、お願いします。辞めろ何ていわないでください。」


園長が手で制止する。


園長 :「いえ、まだ話の途中です。」


え? リストラの話じゃないんだ。


園長 :「そして、泉さん小学校教諭の免許お持ちでしたよね。」


響子 :「ええ、まあ。」


私は大学で小学校・幼稚園教諭の免許を取得した。今となっては小学校教諭の免許でなく保育士の資格をとるべきだったと後悔している。


園長 :「実は市から小学校の代替教員の話が急に来てるんです。しかも、泉先生名指しで。」


響子 :「はあ? 私小学校の先生の経験ないんですけど。」


園長 :「しかも、もし、泉先生が代替教員になられるようでしたらこの幼稚園に幼保一元化のモデル園として援助が出るそうなんです。そうすると設備投資費用の捻出もうんと楽になります。」


響子 :「えっと」


園長 :「もちろん、ずっと小学校教諭していただくのでなく、3年したらこの幼稚園に戻っていただくと言う期限付きです。人生の幅を広げる意味でとても有意義と思うですけどね。」


つまり、私を小学校に送ることで設備投資が可能となり、この幼稚園も安泰と言うことね。私の意思は斟酌されないの?


響子 :「でも、私は園児たちとずっと一緒にいたいです。」


園長 :「保育士の資格を持ってる人が優先になっちゃうわね...」


ぼそって園長が言う。


響子 :「つまり、今回小学校に行かないと、この幼稚園も先細りになり先生をリストラしないといけない。そのときは保育士の資格を持ってないと危ないってコトですね。」


園長 :「そこまで、はっきりは言っていないわ。でも、幼稚園も経営が重要なのよね」


はっきりとは言っていないが、暗に言ってるじゃないですか。


響子 :「はあ。わかりました。期限付きということでしたら、小学校に参りましょう。」


園長 :「わかってくれてうれしいわ。泉先生ならきっとできると思う」


響子 :「それで、いつからですか? 来年度からですか? それだと遅いですね。2学期からですか?」


園長 :「いいえ、明後日からです。」


響子 :「ええ? そんな急なんですか。」


園長 :「はい。実は2年生の担任が急に病気になられてしまい急遽代替教員が必要になったんです。」


響子 :「それはおかわいそうに。どこか身体が悪いんですか?」


園長 :「それがここだけの話心の病なんです。」


響子 :「え? もしかして原因は学校関係なんですか。」


園長 :「ええ、たいしたことではないのですが、クラスに少し変った女の子が二人いて、その子たちのいたずらで心労になられてしまって。他の先生もしり込みしているところでして。」


響子はあたまを抱えた。小学2年生でいたずら好きの女の子ふたり。


響子 :「詩音とポッチですね。」


園長 :「良くご存知で。」


響子 :「まあ、一人は幼稚園時代の担任でしたしね。浅からぬ縁です。なるほどわかりました。私が呼ばれた理由もすごくわかりました。ええ、参ります。」


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響子 :「ということで、事情により学校を離れた先生に代わり、今日から担任になる泉響子です。皆さん、宜しくお願いします。」


ゴンタ:「なんだ、また女の先生かよ。もっと話のわかる男の先生とかじゃないのか」


ひかる:「でも、きれいで優しそうな先生。」


後ろの席で青ざめた二人が座ってる。


詩音 :「優しい? 知らないって幸せよね。」


ポッチ:「学校も本気ね。史上最凶の最終兵器投入してきたわよ。」


響子 :「そこのうしろ二人! 何か言いいました?」


詩音 :「いえ! 何も言ってないです。」


響子 :「そう、それじゃみんなよろしくね。」


響子がにっこりと笑う。


つづく

詩音 :「とうとう、学校側の反撃が始まったわよ」


ポッチ:「プロジェクトが響子先生呼んだじゃないの?」


詩音 :「南さんに聞いたんだけど、市と学校が先手を打ってプロジェクトよりも先に声かけたんだって。それで、プロジェクト側も大混乱してる」


ポッチ:「はあ、てことは学校側が声かけなくてもどのみちプロジェクトが呼んだのね。」


詩音 :「うん。私たちって不幸よね。」


ポッチ:「響子先生の方が不幸のような。」


詩音 :「さ、さて、次回のトリックエンジェルは?」


ポッチ:「『指導実績』です」


詩音 :「私たちも反撃開始します! お楽しみに」


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