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1-2.院内学級

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

3月に入った。


舞の病気は一進一退を繰り返している。


草薙 :「少し、長期戦を覚悟してください。」


祐美子:「長期戦とはどれくらいでしょうか?」


草薙 :「半年、一年、あるいはそれ以上かも」


あきら:「そんなにですか?」


草薙 :「少しずつ良くなっています。しかし、抜本原因のホルモン異常を治すことができないため、対処療法になってしまっています。強力な薬で押さえ込むことも可能なのですが、その薬を使うとさらに副作用が強くなり、将来後遺症を残す可能性も出てきます。正直、副作用のせいで今の状態より悪くなります。」


あきら:「どんな副作用なんですか?」


草薙 :「倦怠感、高熱、吐き気、脱毛、下痢、おなかや背中の痛みを伴います。」


あきら:「うわ」


草薙 :「しかも、投与を止めるとぶり返す可能性があります。そのため、治療そのものがつらいものになります。なので、私はお勧めしません。」


祐美子:「わかりました。」


-----------------------------------


3月に入り、学区の小学校の先生が来た。4月からの小学校の話をしたいとのことだった。4月から舞も小学生だ。だが、このままでは入学は無理だろう。当面休むしかないと考えていた。土曜日の夕方、俺と舞で話をきいた。


あきら:「院内学級?」


先生 :「ええ、院内学級です。」


あきら:「なんですか? それ。」


先生 :「この病院には小学校の分校見たいのがあります。病気で普通の小学校に通えない子供たちが通います。」


そういえばテレビで見たことがある。


先生 :「それで、舞ちゃんをそちらに通わせたらいかがかと思いお伺いさせていただきました。」


あきら:「はあ。病気なのに学校に行かないといけないのですか?」


先生 :「もちろん、調子の悪いときに行く必要はないです。出席できるときに通えば構いません。」


あきら:「病気でつらいのに、さらに勉強でつらくなるのはどうかと。」


先生 :「いいえ、院内学級は決してつらいところではありません。勉強だけでなく、色々な遊びなんかもやります。友達もできます。院内学校に通ってた子は入院してたときは院内学級に通うのが楽しかったと言っています。」


あきら:「そんなものなのか」


先生 :「それに、院内学級に通えば普通の学校同様出席扱いになりますので。」


あきら:「なるほど、留年しなくてすむわけだな。」


先生 :「まあ、小学校は留年しないですけどね。それで、もし良かったら今度、院内学級を見てみませんか?」


あきら:「舞、どうだ、見てみるか?」


まい :「うん、見てみる」


先生 :「では、院内学級の先生に連絡しておきます。明後日の月曜日にやっていますので見てみてください。」


あきら:「はい、ありがとうございます。先生も休日わざわざありがとうございました。」


-----------------------------------


月曜日、会社に有休をもらって院内学級を見学させてもらうこととなった。

冬子も昨日話したら興味があるといって付いてきた。

  

院内学級をのぞいてみると3人の子供と先生が中にいた。


先生 :「こんにちは、舞ちゃん。舞ちゃんのお父さんとお母さん。木ノ内と申します。」


この頃はいちいち弁解するのも面倒なので夫婦と間違われてもそのままにしている。


あきら:「楠木です。宜しくお願いします。」


冬子 :「冬子です。宜しくお願いします。」


冬子が半分俺の影に隠れながら挨拶をする。冬子も別に否定しない。舞は何か言いたそうだが、やっぱり、それについて否定しなかった。


木ノ内:「この学級には本当は今3人通ってる子がいるんですが、今日は一人だけなんです。」


いや、3人いるだろう。俺の怪訝そうな顔をみてか先生が話を続ける。


木ノ内:「女の子二人は実は新一年生になる子で今日は見学なんです。」


ああ、舞と同じなんだ。


舞  :「あ、美鈴ちゃん」


美鈴 :「あ、舞ちゃん、こんにちは。」


木ノ内:「あら、あら、二人はもうお友達なのね。それじゃあ、他のふたりを紹介するわ。」


木ノ内:「この子がかのんちゃん。」


先生が車椅子の女の子を紹介する。


かのん:「こんにちは。かのんです。舞ちゃん仲良くしてね。」


木ノ内:「舞ちゃんや美鈴ちゃんと同じ新1年生です。そして、この子がたかしちゃん。今度2年生になります。3人より一つお兄ちゃんだよね。」


たかし:「こんにちは、舞ちゃん。俺、たかしっていうんだ。よろしくな。」


舞  :「楠木舞。みんな宜しくお願いします。」


木ノ内:「はい、みんな上手に挨拶できましたね。」


木ノ内:「それじゃ、お勉強に戻りましょうか。たかしちゃんはそのドリルの続きね。女子達は、う~ん、今日はご本を読んであげましょうか?」


たかし:「せんせ~い、それだったら俺が3人に話を聞かせてあげるよ。ドリル厭きた。」


木ノ内:「そうね。お願いしようか」


たかし:「よっしゃ~」


たかしは本を持ってくるかと思ったら、なにやらノートを持ってきた。そのノートを元に話を始めた。


話の内容は童話ふうの悲しい人魚の話だった。だけどいわゆる人魚姫の話でなくその内容は今まで聞いたことのない話だった。

3人の女の子は食い入るようにたかしの話をきいた。

俺も思わず、じっと聞き込んでしまう内容だった。


先生が俺たちに耳打ちする。


木ノ内:「あの話はたかしちゃんが作った話なんです。とてもよくできてるでしょう。」


正直、1年生が考える内容とは思えない。


木ノ内:「彼の夢は童話作家になることなんです。こうやって、院内学級にだけ伝わる話を作っていきたいって言っています。」


あきら:「なるほど、これは将来が楽しみだ。すごい才能だ。もしかして天才との出会いってやつじゃないか。将来みんなに『実はあの有名な童話作家だけど小学校2年の時から知ってるんだぜ』って自慢できそうだ。」


木ノ内:「ええ、そうなるといいですね。」


心なしか先生の表情が曇ったように見えた。


たかし:「というお話。みんな面白かった?」


かのん:「うわ~」


かのんが拍手をする。ふたりも拍手をする。悲しいお話だと思ったけど最後はハッピーエンドになる話だった。


かのん:「他にもお話聞かせて~」


美鈴 :「もっと聞きたい~」


たかし:「舞ちゃんも聞きたいか?」


舞  :「うん。」


たかし:「よし、次の話は黒猫ニャーゴの話だ。」



つづく

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