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トリックエンジェル ~院内学級の物語  作者: まーしゃ
第2章 院内学級編
14/88

2-1.50日祭

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

冬子 :「明日は10時に日川神社の隣の会館ですね。はい、大丈夫です」


冬子が電話を切った。


あきら:「49日の法要もいろいろやり方があるが神社っていうのも変ってるな。」


冬子 :「人それぞれです。神社でやる場合は50日祭っていうらしいです」


あきら:「ふ~ん、そうなんだ。」


舞  :「お友達関係は私と冬ちゃんだけ出席。あとは、家族と親族が中心。」


あきら:「ご家族もつらいだろうな。子供に先に逝かれてしまうのが何よりもつらい。パパも舞が天国にいきそうになったとき、どんなにつらかったことか。」


冬子 :「でも、天国に行きそうになったのと、天国に行ったのとは全然違います。」


あきら:「そうだな。」


舞  :「後、草薙先生とつかささんも来るって。」


あきら:「そうか。」


早いものでたかしちゃんの49日の法要が行われる。舞は通夜にも葬式にも入院してて出れなかったので、今回呼ばれた。そして、かのんちゃんと美鈴ちゃんはまだ入院していて、今回も出られない。


-----------------------------------


お母さん:「今日は皆さんお集まりいただきありがとうございました。正直まだ、息子の死をちゃんと受け入れられていません。でも、今日この50日祭で一区切りが付きそうです。息子はその短い、本当に短い人生の中で、ほとんど病気で戦っておりました。ずっと、頑張っておりました。でも、やっと頑張らなくてよくなったんです。ゆっくりと神様のところで休んでほしいと思ってます。」


周りからすすり泣きがもれる。私も涙でぐしょぐしょになった。


冬子 :「舞ちゃん、たかしちゃんが悲しみます。泣いている舞ちゃんを見たら、どんなにたかしちゃん天国で悲しむでしょう。ここは笑顔みせましょう。」


舞  :「そういう冬ちゃんだって泣いてるじゃない。」


ふたりでぐしゅぐしゅやっている。


50日祭の会食の席のときだった。たかしにいちゃんのお母さんが冬ちゃんと私の席にやってきた。


お母さん:「今日はよくおいでいただきました。お二人にはたかしが生前本当にお世話になりました。ありがとうございました。」


舞  :「いえ、私たちのほうがお世話になってました。どれだけ、たかしにいちゃんの物語に勇気付けられたか。」


お母さん:「ありがとうございます。時々思うんです。何のためにたかしは生まれてきたんだろうって。ただつらい思いをするために生まれてきたのかって。」


冬子 :「...」


お母さん:「でも、違うんですね。あの子はあなたたち院内学級の子供たちの心の中でしっかりと生きてるんですね。それがたかしが生まれて来た意味だったんですね。」


舞  :「...」


お母さん:「実は、たかしの遺品を整理していたら、こんなものが出てきたんです。そして、これを舞ちゃんに渡して欲しいと書いてあったんです。」


お母さんが一冊のノートを出した。


舞  :「これは?」


お母さん:「はい、たかしが考えて書いた物語集です。」


受け取って中を見る。そこには、人魚水族館、黒猫ニャーゴ、桜祭り、トリックエンジェル、星の子しおんといった数々の物語がかかれていた。


舞  :「こんな大事なものもらっていいんですか?たかしちゃんの思い出がいっぱい詰まった。」


お母さん:「はい、それがたかしの望みですから。それに私たちが持っていても役に立ちません。物語は語り継がれてはじめて意味があります。」


舞  :「でも。」


お母さん:「それで毎年命日にこの物語を私たちに話してくれませんか? そうすれば思い出がよみがえります。」


舞  :「ええ..はい。わかりました。毎年行きます。」


お母さん:「ありがとうございます」


お母さんは泣き崩れる。親戚の人が近づき慰め、席につれていく。



帰り道、舞は考えた。


(なんで、このノートをたかしちゃんは私にくれたんだろう)

(一番仲の良かったかのんでなく、美鈴でもない、私に。)

(かのんや美鈴なら、今でも院内学級で周りの人に伝えていけるだろうに。)


舞  :「そうか。そういうことか。」


冬子 :「舞ちゃん? どうかしました?」


舞  :「冬ちゃん、私、院内学級でボランティアやる。このたかしちゃんの物語をみんなに伝えていくの。たかしちゃんはそれを願ったの。だから退院まじかだった私にこのノートを託したの。」


冬子 :「冬子もその考えいいことだと思います。冬子も実は考えてました。院内学級のボランティアできないかと。一緒にやりましょう。」


舞  :「うん、つかささんや草薙先生にお願いして、無理やりでもボランティアさせてもらおう。」


冬子 :「舞ちゃん、頑張りましょう」


舞  :「お~」


こうして冬子と舞は院内学級のボランティアをすることになった。


つづく。


お待たせしました、2章ボランティア編突入です。退院した舞が冬子と一緒に院内学級でボランティアを始めます。2章は3章へのつなぎの位置付けで短編あわせて5話くらいを想定しています。ではでは。

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