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1-1.舞(まい)

この物語にでてくる薬名、治療法、一部の病名、一部の物理法則はフィクションです。

詩音 :「ねえ、くるみちゃん、『対世界』ってどんなところなの?」


隣のくるみの家に遊びに来ている楠木詩音が尋ねる。


くるみ:「ここと同じ世界なの。αベクトル空間の先にあってバランスをとるためにある世界。」


くるみは容姿は中学生みたいであるが立派な大人で理論物理学の研究者である。


詩音 :「同じ世界?」


くるみ:「うん、もうひとりの詩音ちゃんがいて、和恵ママがいて、あきらパパがいて、みんながいる世界。」


詩音 :「くるみちゃんや幼稚園の響子先生もいるの?」


くるみ:「もちろん、いるの。みんなで元気に暮らしてるの。」


詩音 :「へ~、行ってみたいなあ~。いつか行けるんだよね。」


くるみ:「うん。いつかきっといけるの。」


くるみはにっこり笑って詩音に返事をした。


-----------------------------------

雪の中、俺は娘の舞を抱いて病院に急ぐ。


10数年ぶりの大雪。こんな日に舞の容体が悪化した。


交通マヒ。救急車が間に合わない。俺は救急車を待つより走って病院に駆け込むことを選んだ。


俺も目の前がくらくらする。数日前からの風邪が悪化している。


神は本当にいるのか? いるならなぜこんなに俺たちに試練を与えるんだ。


あきら:「舞、舞~」


舞の手がだらりと下がる。おれも目の前が真っ白だ。ここで俺たちは終わるのか。


ひざを着き崩れ落ちた。


女性 :「楠木さん、楠木さん、しっかりしてください。舞ちゃんもしっかりして。だれか、だれかいませんか? 助けてください」


遠くなる意識。車の音。誰かに抱かれている。温かい。


----------------------------------


夢を見た。小さな女の子とどこか知らない場所を歩いている。

どこに行くのだろう。このまま二人で。

後ろから呼んでいる。女の人だ。何言ってるんだろう。

行くなっていっているようだ。


冬子 :「楠木さん行ってはだめです。」


目がさめた。


あきら:「ここは?」


冬子 :「病院です。街外れの。」


あきら:「そうか。…う、舞は!」

 

冬子 :「意識不明の重態です」


起き上がり行こうとするが思うように動かない。


冬子 :「楠木さん、だめです。楠木さんも酷い熱です。肺炎を起こしかけてます。」


あきら:「舞に会いたい。どけ!」


冬子 :「だめです。今は身体を治すことに専念してください。舞ちゃんは祐美子さんが見ています。第一、集中治療室ですから、病人の楠木さんが会うことはできません。」


冬子 :「楠木さん無理しすぎです。何でも自分で背負い込むのはだめです。冬子とっても心配です。」


あきら:「しかし、舞も心配だ」


冬子 :「大丈夫です。意識はありませんが、今は小康状態です。最悪の事態は脱しました。」


それを聞いた俺は再びベッドに身体を休め、眠りについた。


次の日


祐美子:「あきらさん、調子はいかがですか?」


あきら:「ああ、だいぶ良くなりました。熱はまだありますが」


健一 :「このばかやろう!舞を殺す気か。冬ちゃんが偶然見つけなければ二人とも雪の中で死んでたぞ」


あきら:「冬子が?」


祐美子:「ええ、倒れている二人をみつけて、助けを呼んで。そのとき偶然、この病院に勤めている草薙先生という方が車で通りかかって、助けてくれたんです。」


あきら:「そうだったのか。 それで、舞は?」


祐美子:「相変わらず意識不明です。」


あきら:「そうか。」


健一 :「後で冬ちゃんが見舞いに来る。御礼をちゃんといっとくんだぞ。」


祐美子:「私たちは、舞のそばについています。だから安心して身体を休めてください。」


健一 :「あきら、俺たちは家族だ。一人で背負い込むな。」


二人が出て行く。


冬子は、この秋くらいからうちにちょくちょく来て夕飯を作ってくれたり、舞と遊んでくれていたりした。

まるで妹のように可愛がってくれた。舞をとりこにするが目的といっていた。

でも、毎日のように来てくれるようになり、幼稚園のお迎えまでお願いするようになって、俺自身が冬子にとりこにされつつあることに気づいた。

和恵が生きていればきっとこんな感じの家庭になったんだと思いながら。


でも、罰があたった。舞が和恵と同じ病気になったのは、俺が幸せを望んだからだ。

和恵と結婚して幸せを望んだからだ。舞との幸せな生活を望んだからだ。

冬子との生活を望んだからだ。冬子を遠ざけていればこんなにはならなかったのに。

そう考え、冬子を遠ざけた。


冬子 :「楠木さん、調子はどうですか?」


あきら:「ああ、だいぶ良くなった。」


冬子 :「それはよかったです。」


あきら:「助けてくれてありがとうな。」


冬子 :「えへへ」


あきら:「でも、どうしてあんなところにいたんだ?」


冬子 :「楠木さんちに行こうとしてたんです。」


あきら:「来るなと言ったはずだが。」


冬子 :「響子ちゃんが家に来たんです。それで、こういったんです。『自分の思いをぶつけないと後悔するぞ』って。なんだかとても説得力のある言い方でした。」


あきら:「…」


冬子 :「それで、判ったんです。私、舞ちゃんと楠木さんのそばにいたいって。それで、断られてもいいからいすわろうって思ったんです。」


冬子 :「そうしたら二人が倒れていて冬子びっくりでした。」


あきら:「俺にかかわると不幸になるぞ。おまえも一時は大分苦労したんだ。また、不幸になることなんてないぞ。」


冬子 :「不幸なんて思ってないですし、もし、それが不幸でも、それが人生です。冬子、後悔したくないです。」


あきら:「そうか。」


冬子 :「まず、身体を治してください。からだの調子が悪いと悪い方向ばかり考えてしまいます。治ってからゆっくり考えましょう。」


あきら:「そうだな。」


冬子 :「それでは、冬子今日は帰ります。」


冬子は同じ高校の1学年下だった。和恵の幼馴染で高校時代、俺と和恵と冬子の3人でよくつるんで遊んでいた。

冬子は高校卒業後、調理師学校に進み、東京のホテルでコック見習を行っていたが、周囲の人間や上司と合わずこの街に戻ってきた。

料理の腕はいいのだが、人見知りで周囲への気遣いに疲れてしまい、失意の中この前の秋戻ってきた。



夕方、響子が見舞いに来た。舞の幼稚園の先生で俺の高校のクラスメートである。


響子 :「やっほー、元気? ってそんなわけ無いか」


あきら:「だいぶ元気になった。」


響子 :「そっか、元気にならないとからかいようがないからな。」


あきら:「勘弁してくれ。」


響子 :「冬ちゃんちにこの前いったんだ。」


あきら:「ああ、冬子から聞いた。」


響子 :「大事にしてやれよ~。いい子でしょ~。」


あきら:「おまえなあ。」


響子 :「和恵も冬ちゃんなら許してくれるよ。和恵とあきらと冬ちゃんで高校のとき何時もつるんでたじゃない。」


あきら:「・・・」


和恵は微熱が続く原因不明の病気になり、無理をして舞を生んだ時に天国に召された。

まだ、元気だった高校時代、和恵と俺と冬子はいつも一緒にいた。俺と和恵の仲を取り持ってくれてのも冬子だ。

和恵と冬子はまるで姉妹のようだった。


響子 :「私もつくづくお節介だよね。自分の思いを貫ければいいけれど、大人になって、周りが見えるようになるとだめだね。冬ちゃんみたいな一途さがうらやましいわ。」


あきら:「???」


響子 :「そうそう、今度つかさがこの町にやってくる。この病院で看護婦やるから、仲良くしてね。」


あきら:「つかさが? 久しぶりだな。懐かしい人がくるのはうれしいな。」


つかさは響子のいとこで、何回かあったことがある。


響子 :「舞ちゃんも早く治るといいね。」


あきら:「ああ。」


響子 :「大丈夫だって、信じてれば必ず治るって。パパがそんな元気がないとダメだぞ。」


あきら:「ああ。」


響子 :「じゃ、またね。元気出しな。」



----------------------------------


相変わらず、舞は目を覚まさない。

自分は退院の日を迎えた。


今日は俺も舞の集中治療室に入ることを許された。

冬子も入ろうとしたが、止められた。


看護婦:「ご家族以外の方は..」


あきら:「冬子は家族だ。入れてやってくれ。」


看護婦:「そうですか。失礼しました。それならどうぞ中に。」


冬子がはっとして俺の顔を見た。そしてうれしそうに微笑んだ。


祐美子さんと健一さんが待っていた。祐美子さんと健一さんは死んだ和恵の両親だ。


あきら:「舞…」


祐美子:「手を握ってあげてください。」


あきら:「ああ。」


温かい。


祐美子:「死んだらこの温かさは感じられません。これだけでも感謝しましょう。」


あきら:「ああ、そうだな。前向きに考えよう。」


健一 :「先生が話をしたいそうだ。家族に聞いて欲しいそうだ。」


嫌な予感がする。だが、逃げるわけには行かない。


あきら:「ああ。」


4人で向かう。


カンファレンスルームで先生が待っていた。


山田 :「主治医の山田です。」


祐美子:「お世話になっています。」


俺も頭をぺこっと下げる。


山田 :「ほかならぬ舞ちゃんのことです。現在、小康状態が続いていて命の危険はひとまずないのですが。」


皆黙って聞いている。


山田 :「今のままでは、目を覚ますことは難しいと考えています。正直申し上げまして、原因不明で私には手の施しようがありません。」


ある程度覚悟していた言葉だった。


あきら:「意識がないとしても生きてけるんですよね。余命3ヶ月とかそういう話じゃないですよね。」


山田 :「ええ、そういう話じゃないんです。色々手を尽くしていますが、ただ、長くなりそうです。」


祐美子:「はい、先生にはいつも感謝しています。ありがとうございます。」


あきら:「舞をどうか宜しくお願いします。」


そういうしかなかった。何年もたって意識を取り戻すこともある。今あせってもしょうがない。俺は自分に言い聞かせた。


-----------------------------------


2、3日した後、我々4人は山田先生に呼ばれた。舞は相変わらず意識不明が続いていた。


山田 :「ご紹介したい方がいます。」


草薙 :「草薙です。宜しくお願いします。」


草薙先生。俺と舞が道で倒れたとき助けて車でこの病院に運んでくれた先生だ。


あきら:「その節は大変お世話になりました。なんとお礼を言っていいやら。それにご挨拶が遅れて申し訳ございません。」


祐美子:「本当でしたら私たちのほうからご挨拶に行かなければならないものをわざわざお声かけ頂いて恐縮です。」


草薙 :「いえいえ、とんでもございません。実はあのあと私用でちょっと病院を休んでおりました。ご挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。」


結構若い割にはしっかりした先生だ。だけどどことなく憂いがある。


草薙 :「それで、今日みなさんをお呼びしたのは、ほかならぬ舞ちゃんの病気のことです。」


あきら:「はい」


草薙 :「山田先生に話を聞いて、越権行為だと思ったのですが、実はアメリカに研修に行ったとき、よく似た症例の患者さんの治療に携わっていました。」


健一 :「ほう。」


草薙 :「まいちゃんはラインベルク症候群のような気がします。」


祐美子:「はあ。ラインベルク症候群?」


草薙 :「このごろ学会で話題になり、私もその研究をアメリカで行ってまして日本に帰国したばかりなんです。」


健一 :「それで、どこの疾患なんですか」


草薙 :「脳です。脳の下にある脳下垂体のホルモン分泌異常です。」


祐美子:「原因がわかったって言うことですか。」


草薙 :「根本となる原因はわかりませんが、何らかの理由でホルモンバランスが崩れて、本来、ばい菌とか病気とかに働く免疫が自分の身体を攻撃しているんです。」


あきら:「間違いないんですか。」


草薙 :「ほぼ間違いないでしょう。そこで、ご相談です。この病気に対して対処的な治療法があります。免疫の攻撃を抑える薬があります。

ステロカイドというのですが、少し、副作用の可能性があります。そのため、大量投入はできないのですが試してみませんか?」    


あきら:「お願いです。舞を助けてください。副作用は怖いですが、舞が治るなら試してください。お願いします。」


祐美子:「治る可能性があるということでしょうか?可能性は低いのでしょうか?」


草薙 :「ええ、もちろん絶対とはいいません。でも、奥さんも亡くされ、同じ病気で娘さんも苦しんでいる。医師として放って置けないでしょう。全力を尽くしたいんです。」


あきら:「あ、ありがとうございます。」


俺はこの先生を信じることにした。


--------------------------------------


翌日から草薙先生の下で治療が始まった。少しづつ薬を様子見ながら投入している。


しかし、舞は目を覚まさない。


草薙 :「呼びかけてあげてください。肉親の方の声で気づくこともあります。」


あきら:「ああ。」


手を握り、と「舞」呼びかける。しかし、反応はない。


草薙 :「あせらず、ゆっくり時間をかけていきましょう」


あきら:「舞…」


このつらい日々はいつまで続くのだろうか? 弱気になる自分を奮い立たせるため期待をもてることを考え始めた。


あきら:「舞、目を覚ましたら何をしたい?」


そのとき、ふと思った。


...冬ちゃんと温泉 


あきら:「そうだ!」


舞が病気で倒れる前、俺達3人は温泉旅行に行くことを約束していた。

舞は冬子と温泉旅行に行くことをすごい楽しみにしていた。

しかし、その願いは舞の病気でかなえられなかった。


俺は冬子を呼んだ。そして頼んだ。冬子はよろこんで受けてくれた。


冬子は舞の手を握り、こう呼びかけた。


冬子 :「舞ちゃん、冬子と一緒に温泉いきましょう。」


舞が反応した。そしてゆっくり目を開けた。


まい :「冬ちゃん…」


あきら:「舞!」


まい :「パパ。ここはどこ?」


舞は意識をとりもどした


俺はその日泣きつづけた。


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集中治療室から一般病棟に移った。だが、大部屋でなく個室だ。感染症が怖いかららしい。

そして、熱が完全に下がったわけではない。入院が続く。


草薙 :「舞ちゃんの免疫力を少し下げることによって、病状の悪化を防いでいると考えてください。しかし、そのため、ちょっとした病気でも重症化してしまいます。つまり、風邪でも命取りになる可能性があります。」


草薙 :「そのため、このクリーンフロアでの治療を当面続けたいと思います。」


このクリーンフロアには、舞のほかにも何人か入院している。その中で、舞と同級生の女の子が隣の病室にいる。丸山美鈴ちゃんだ。舞とはすぐ仲良くなった。


舞  :「美鈴ちゃんは、いつから病院にいるの?」


美鈴 :「お正月終わったくらいから」


舞  :「じゃあ、私と一緒くらいなんだね。」


美鈴 :「でも、まいちゃん、ここに来たの一週間くらい前じゃない?」


舞  :「うん、それまでは集中治療室にいたんだって。意識不明だったから。」


美鈴 :「まいちゃん、私よりも重いんだね。それで、頑張ったんだね。これから二人で頑張って、早く退院しようね。」


舞  :「うん、頑張る」


まだ、「頑張る」という言葉が禁句になっていない二人だった。


美鈴ちゃんは怪我をすると血が止まらなくなったり、病気になるとなかなか治らなくなる病気らしい。そのため、舞と同じく感染症を恐れてこのフロアにいる。

このフロアに入るには許可が必要で、ちゃんと消毒して入るのはもちろん、マスクの着用も義務付けられる。また、風邪などをひいたら入れない。


----------------------------------


舞  :「早くおうちに帰りたいな~。冬ちゃんのハンバーグが食べたい。幼稚園にも行きたい。響子先生にも会いたい。」


もうすぐ3月だ。卒園式も近づいている。


冬子 :「舞ちゃん、頑張りましょう。お熱下がったら退院できるって草薙先生も言っています。」


舞  :「でも、しんどい。本当に早く治んないかな。それに病院のご飯おいしくないし。」


舞は微熱が続いており、少し元気になったとは言えつらそうだ。


冬子 :「あとで、カップヌードル買ってきて上げます。先生には内緒だけど。」


舞は生ものを食べてはいけない以外は食事制限はない。だから、果物とかお鮨とかは食べられない。でも、加熱した食べ物なら大丈夫だ。

本当はカップヌードルみたいなものは良くないのだろうが、黙認されている。結構、このような環境ではおいしいらしい。


あきら:「舞、後で響子先生がお見舞いに来てくれるって。」


舞  :「本当? 楽しみ~」


しばらくすると響子がお見舞いに来た。つかさも一緒だった。


響子 :「やっほ~」


つかさ:「楠木さん、ご無沙汰しています。」


舞  :「せんせい~」


舞が駆け寄る。


響子 :「元気になったわね~。あ~、でも、お熱まだあるみたいね。」


舞  :「うん、お熱あるけど元気だよ」


あきら:「響子、つかさ、忙しいのにわざわざ来てくれて悪いな。そうだ、つかさは会うの初めてだよな。黒木冬子さんだ。」


冬子 :「黒木冬子です。宜しくお願いします。」


俺の影に隠れるように挨拶をする。


つかさ:「内山つかさです。初めまして。いつも響子お姉ちゃんからお話を聞いてます。」


舞  :「ねえ、パパ、この人誰? 」


あきら:「ああ、もしかして舞もつかさのこと初めてか? 響子先生のいとこのつかさだ。」


つかさ:「舞ちゃんよろしくね。」


まい :「よろしくお願いします。でも、響子先生と良く似てる。」


あきら:「髪の毛以外はそっくりだ。あと、性格は違うがな。つかさのほうはおしとやかで、響子のほうは凶暴だ。」


響子 :「ん? なんか言った?」


あきら:「いや、別に。」


つかさ:「響子おねえちゃん。。病院なんだから。それに今日の目的。」


響子 :「そうそう、幼稚園のみんなが作ってくれたんだ。」


そういって千羽鶴を袋から出した。よく見ると、鶴の形がまちまちで、いびつなのもある。


響子 :「みんなが舞ちゃんの病気が治るのを祈って折ってくれたんだ。まだ、園児だからきれいには折れてないけどね。」


結構、こういうの俺は馬鹿にしていた。そんなものもらって何がうれしいんだと。作るほうもただの偽善だと。

でも、こうやって実際もらってみると、人の温かい心に触れたようで涙がでてくる。


響子 :「それと、何人の子は手紙を書いてくれた。もう、ひらがなが書ける子もいるんだ。4月からは小学生だからな。」


響子は手紙の束を舞に渡した。


舞  :「ありがとう。」


満面の笑みで手紙を読み始めた。


つかさ:「楠木さん、あの、こう言っては失礼かもしれませんが、大変でしたね。」


あきら:「まあ、一時期に比べれば落ち着いたよ。舞も少し良くなってきた。」


つかさ:「でも、看病とか大変ですよね。」


あきら:「まあね。基本夜も一緒に付き添って寝てるからな。でも、毎日は大変なんで、祐美子さんと冬子と3人で交代で付き添っている。」


つかさ:「お仕事は?」


あきら:「ああ、元の職場に復帰したよ。何とか社長にOKしてもらった。健一さんに『仕事して収入を安定させるのも看病のうちだ』っていわれてね。」


つかさ:「そうですか。よかったです。だいぶ落ちかれたんですね。私も4月から、こちらで勤務します。その際はよろしくおねがいいたします。」


後ろで、響子が冬子をからかっている。


冬子 :「例え、響子ちゃんのお願いでも、楠木さんは渡しません。楠木さんはもう私のとりこです。」


響子 :「じゃ、舞ちゃんもらおうかな~」


冬子 :「舞ちゃんはもっとダメです。もしもどっちかといわれたらなくなく楠木さんあきらめます。でも、舞ちゃんは冬子の大事な宝物ですから上げられません。」


つかさ:「響子おねえちゃん...」


響子 :「あはは、冗談よ。あきらも舞ちゃんもあなたのものよ。」


昔の仲間が集まってこう話していると、やっぱり、昔の楽しかった頃を思い出す。そして、今、舞が加わり新しい風が吹き始めた。


つづく

初めまして。まーしゃと申します。

医療関係の小説を書きたくてこのお話を書き始めました。「神様がくれた病気」子供たちはそう言って自分の身の上の不幸を前向きにとらえ頑張っていきます。そして、頑張ったご褒美をきっと神様がくれるでしょう。

そんなお話です。

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