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【彼女の教室】 3/27完結「ずっと見ていたのは、あなたかもしれない」 ~後ろの席は空席のはずなのに、誰かが“決めて”いる  作者: Taku


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5/6

第5話 「『手を挙げた』のは、誰だったのか?」~3年C組、45分間の密室推理・第五章~

※この作品は『彼女の計画』シリーズのスピンオフですが、本編未読の方でも独立した作品としてお楽しみいただけます。

【前回までのあらすじ】


九月。

修学旅行の見学コースを決めるアンケートで、選択肢の順番が無意識に操作されていたことが発覚。Aコースが80%の支持を得るが、誰も「Aに行きたい」と言った記憶はない。康介は教壇でしばらく動けなかった。窓の外の揺らぎは、微かにこちらを向き始めていた。


---


【第五章】十月『「手を挙げた」のは、誰だったのか?』


1


十月の半ば。


体育祭が終わり、教室にはまだその熱気の名残が漂っている。壁には各団の応援旗の写真が貼られていた。


黒板の文字。


『学級委員 後期役員選挙について』


康介が教壇に立つ。

「前期の任期が切れる。後期の委員を選ぶ必要がある」


沈黙。


誰も手を挙げない。誰も目を合わせない。


「立候補制でいこうと思う。誰か――」


その時だった。


教室の後ろの方。一番後ろの窓際の席。


誰もいないはずの席から、手が挙がっていた。


2


全員の視線が、その空席に集まる。


沙織の手が止まる。Eが顔を上げる。拓が窓から視線を戻す。瞳の表情が固まる。


康介の声が、かすれた。

「……今、手が挙がらなかったか?」


誰も答えない。


でも、誰もが見たのだ。


誰もいない席から、確かに手が挙がるのを。


拓が、静かに言った。

「“誰かが手を挙げた”ように見えた」


沙織がうなずく。Eもうなずく。瞳も、無意識にうなずいていた。


沈黙が続く。


3


康介が、ゆっくりと後ろの席に近づく。


誰もいない。ただの空席だ。


でも、机の表面に、かすかな跡があった。


鉛筆でなぞったような、薄い跡。


『私は、ここにいる』


康介の手が止まる。


誰も何も言わない。


4


放課後。


沙織は一人、教室に残っていた。キャンバスに向かっている。後ろの席から見た教室の風景。


描きながら、ふと手が止まる。


背中が、一人多い。


数える。拓、瞳、康介、純、E、沙織――六人のはずが、七人いる。


沙織はそのまま、筆を置いた。


何も言わない。ただ、キャンバスを見つめている。


5


その週の金曜日。


もう一度、LHRで学級委員を決める。


康介が教壇に立つ。

「立候補はいませんか?」


沈黙。


沙織が、ゆっくりと手を挙げた。


「……私」


その手が挙がった瞬間、全員が無意識に後ろの席を見た。


誰もいない。


でも、さっきまでそこに「誰か」がいたような気配が、かすかに残っている。


瞳が言う。

「沙織でいいんじゃない?」


康介がうなずく。

「異議のある人?」


誰も手を挙げない。


「じゃあ、後期の学級委員は沙織で」


決まった。


でも、誰もが違和感を覚えていた。


さっきまで、誰かがそこにいたはずなのに。


6


その週末。


沙織は、あの後ろの席に行った。


誰もいない。


でも、机の上に、小さなメモが置かれている。


『私が手を挙げたのに』


沙織はそれを見つめたまま、動かない。


廊下でEに会う。

「これ、誰の字かわかる?」


Eは見て、首をかしげる。

「……見たことある気がする」


「誰?」


「思い出せない」


後ろから瞳の声。

「それ、私の字じゃないよ」


三人でいると、康介と拓も通りかかる。


康介がメモを見て、顔色を変える。

「これ……」


「知ってるの?」


康介は首を振る。

「知らない。でも――どこかで見たことがある」


拓が窓の外を見る。


フェンスの手前。揺らぎが、今日もそこにいる。


「あれが書いたのかもしれないな」


誰も答えない。


7


月曜日。


沙織は、あのメモを机の中にしまった。


でも、何度も取り出して見る。


『私が手を挙げたのに』


この「私」は、誰なのか。


沙織はキャンバスに向かった。


7人目の背中を、もう一度描こうとした。


少しだけ、形になった気がした。


でも、それが誰なのかは、まだわからない。


窓の外の揺らぎは、今日もそこにいる。


でも、少しだけ近づいていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


『彼女の教室』は、本編『彼女の計画』シリーズの登場人物たちの高校時代(同級生設定)を描く全8話の学園ミステリーです。

本編で複雑に絡み合う大人たちの「なぜ」の答えが、この教室の中に隠されています。


また、本編『彼女の計画』シリーズも連載中です。

ご興味のある方は、作者ページよりぜひお越しください。


X(旧Twitter):@KEI67266073

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