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【彼女の教室】 3/27完結「ずっと見ていたのは、あなたかもしれない」 ~後ろの席は空席のはずなのに、誰かが“決めて”いる  作者: Taku


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4/5

第4話 「『ここに行きたい』は、誰の声?」~3年C組、45分間の密室推理・第四章~

※この作品は『彼女の計画』シリーズのスピンオフですが、本編未読の方でも独立した作品としてお楽しみいただけます。

【前回までのあらすじ】

七月。

教室の後ろの席に置かれたスマホに表示されたのは、非常階段を撮った写真。そこには拓と瞳、そしてそれを見るEの姿が写っていた。つまり、Eをも見ていた「四人目の視線」の存在が示唆される。純が拾ったメモには『あの日の「いいね」は、今、押された』と書かれていた。何かが動き始めた予感の中、夏休みを迎える。


---


【第四章】

九月『「ここに行きたい」は、誰の声?』


1


二学期最初のLHR。


九月の日差しはまだ夏の名残を帯びている。教室の窓は開け放たれ、蝉の声が途切れ途切れに聞こえる。


黒板には担任の字でこう書かれていた。


『修学旅行 見学コース最終決定』


A:歴史的な寺院と庭園コース

B:モダンアート美術館コース

C:自由散策


康介が教壇に立ち、Googleフォームを開く。


「昨日のうちにアンケート取った。もう過半数が回答済みだ」


誰も答えない。沙織は窓の外。Eは本。拓は雲。


「じゃあ、結果を確認する」


康介がフォームを開く。画面をしばらく見つめて、動きが止まった。


沈黙。


「……Aが80%だ」


瞳がのぞき込む。

「みんな寺と庭園が好きなんだね」


その言葉に、数人が「そうだね」とうなずく。


拓が、窓からゆっくりと顔を戻した。


「Aに行きたいって言ってたやつ、いたか?」


教室が静まる。


2


誰も答えない。


沙織の手が止まる。Eが顔を上げる。瞳の表情が、ほんの少し強張る。


康介はフォームの設定を確認している。その指が、途中で止まった。


「……選択肢の順番、途中で変わってる」


沈黙。


「最初はA・B・Cの順だった。でも、途中からAだけが一番上に固定されてる」


拓がのぞき込む。画面には確かに変更の痕跡があった。


「これ、最初の選択肢が一番選ばれやすいんだよな」


康介の声は平坦だった。でも、その目は画面から離れない。


誰が変えたのか。


数秒の沈黙。視線が、自然と康介に集まる。


康介は何も言わない。ただ、自分のスマホを見つめている。


3


Eが、小さく言った。

「“見やすくしよう”と思っただけかもしれない」


沙織が続ける。

「悪意があったわけじゃない」


瞳が言う。

「それで決まっちゃったんだね」


誰も悪くない。誰も意図していない。でも、Aが選ばれた。


康介の視線が、一瞬だけ後ろの席に向いた。


すぐに戻す。


何も言わない。


拓が呟いた。

「“選んだつもり”と“選ばされた”の境目って、どこにあるんだろうな」


誰も答えない。


沈黙だけが、教室に落ちる。


4


チャイムが鳴る。


「じゃあ、Aで決定ね」


瞳がそう言って立ち上がる。


沙織もキャンバスを片付ける。Eも本を閉じる。


康介は、教壇に立ったまま動かない。


教室を出る最後の一人、純が机の上を見る。


小さなメモ。


『選んだつもりが、選ばされていた』


純はそれを手に取り、一瞬だけ康介の背中を見た。


康介はいつも通り、何でもない顔で廊下を歩いている。


でも、その背中は少しだけ、小さく見えた。


5


窓の外。


フェンスの手前。


揺らぎが、微かに動いた。


たったそれだけ。


でも、その瞬間、教室の空気が変わった気がした。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


『彼女の教室』は、本編『彼女の計画』シリーズの登場人物たちの高校時代(同級生設定)を描く全8話の学園ミステリーです。

本編で複雑に絡み合う大人たちの「なぜ」の答えが、この教室の中に隠されています。


また、本編『彼女の計画』シリーズも連載中です。

ご興味のある方は、作者ページよりぜひお越しください。


X(旧Twitter):@KEI67266073

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