第1話 「空気が決めたこと」~3年C組、45分間の密室推理・第一章~
※この作品は『彼女の計画』シリーズのスピンオフですが、本編未読の方でも独立した作品としてお楽しみいただけます。
【序章】4月『何でもない日の、何でもない決め方』
四月の午後。窓の外では桜が散り始めている。
LHRのチャイムが鳴る。今日決めるのはクラス委員。
「誰かやりたい人?」
康介の問いに、誰も手を挙げない。沙織は窓の外、Eは本、拓は雲を見ている。
「じゃあ、いつも通りで」
瞳が立ち上がる。
「立候補がいなければ、話し合いで決める。それが最適でしょ」
誰も逆らわない。
「じゃあ、拓がやる?」
瞳が笑う。
拓は答えない。
「じゃあ、拓で決まり」
その一言で、決まった。
「ちょっと待って」
純が口を開く。
「拓さん、やるって言ってない」
教室が静まる。Eが本から顔を上げる。沙織も窓から視線を戻す。
拓が、ゆっくりと瞳に向き直る。
「“別にいい”って言っただけだ」
長い沈黙。
拓は続ける。
「“決まったこと”には二種類ある。“みんなで決めたこと”と、“気づいたら決まってたこと”」
誰も何も言わない。
チャイムが鳴る。
「決めなかったんだよ」
瞳が微笑む。
教室を出る最後の一人、純が机の上に落ちているものを見つける。
小さなメモ。
『今日は、何も決まらなかった』
誰が書いたのか、わからない。
窓の外、校庭のフェンスの手前に、揺らぎのようなものがあった。
純は、そのまま教室を出た。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本編となる「彼女の計画」シリーズもぜひ、お楽しみください。
ご興味のある方は、作者ページよりぜひお越しください。
『彼女の教室』は、本編『彼女の計画』シリーズの登場人物たちの高校時代(同級生設定)を描く全8話の学園ミステリーです。
本編で複雑に絡み合う大人たちの「なぜ」の答えが、この教室の中に隠されています。
次回 第2話「あの日の『いいね』は、誰だったのか?」
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