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第25話 面談2

「イツカ杯の件なのだけど、私たちと共同開催にしてもらえないかしら」


淡々とした口調で話す彼女の口から出たのは共同開催という言葉だった。その言葉だけではピンと来なかったので俺はさらに問いただす。


「共同開催って。つまり、お前らの事務所、MetaMittoプロダクションが俺の大会に協力してくれるってことか?」


「その認識で構わないわ。貴方にはミナモ杯のシステムを使ってほしかったの」


「ちょっと待て。流石にそれは事務所が許さないと思うんだが」


「それは大丈夫!もうOK貰ってるから!ミナモちゃんの頼みだからね~!先輩モーレツに頑張っちゃったよ~」


モーレツに頑張ってどうにかなることなのかという疑問はさておき、既に用意は周到。


仮にMetaMittoプロダクション協賛となればミナモ杯のフォーマットをある程度流用できる。俺の運営の負担も減り、大会のクオリティも上がることが予想される。俺からすれば断る理由などない。

しかしまだ話が掴めない


「俺からすればその話はめちゃくちゃ有難い話だ。だけどお前らはどうしてそこまでするんだ?」


俺がそう問うと少し考えた様子で


「どうして…難しいことはよくわからないけれど、あなたには借りがあるし…」


「またそんなこと言って~。この人はミナモちゃんを利用する悪い人かもしれないんだよ。」


ぐっ…能天気なことを言っているようでこいつはさっきから痛いところばかり突いてくる。

別に利用してやろうなんて思って大会を開いたわけじゃないが、間接的にガッツリ利用しているのは事実だ。

俺が何も言えないでいると暁野ひなたが続けて話す


「まあ私たちにも思惑が無いわけでは無いんだけどね。ミナモちゃんが大会に参加するなら、共同開催の方がミッ友の皆に納得してもらえると思ったんだ~」


すると審ミナモも何やら慌てた様子でそれに続く


「そ、そう。これは言わば共犯関係。あなたと私の共犯関係なんて…ふふっ、面白いわね」


今の暁野ひなたの言葉で俺もようやく合点がいった。


確かにこいつらのファンからすればどこの馬の骨とも知れないやつの開催した大会に参加させられている状況よりも、公式のイベントとして開催したほうが納得感が強くなると言えるのかもしれない。


「なるほどな。そういうことなら俺としては何も文句はねえな。それで話を進めていくか」


こうして俺達は大会の詳細を決めていった。


大会本番は来週の土曜日、明日告知をして参加受付はそこから二日間。その後集計してトーナメントを作成する。参加人数によっては抽選あり。

参加は誰でもOK。ただし、成りすましを防ぐためゲームのアカウントと紐づけをする必要がある。後はミナモ杯のフォーマットを流用して何とかなる算段だ。


現実的に規模は大きくできなかったが、俺の中のコンセプトは一応維持できているのでプランとしては及第点と言ったところだろうか。


そんなこんなあり、話が大体纏まったところで締めに入る


「今日は俺の為に時間取ってくれて助かったよ。今日はこの辺にしようと思う。告知は明日手筈通りで」


「了解よ。こちらこそありがとう。本番、とても楽しみにしているわ。貴方の強さに、また触れてみたいから…。それじゃあ、私は先に失礼するわね」


声色は甘く、改まった様子で彼女はそう言うと、嵐のように通話から抜けていった。


何が強さだよ。相変わらず煽りにしか聞こえないが別にそんなに煽られた気はしない。


突然二人になった空間で俺が一人そんなことを考えていると、もう一人が口を開く。


「ミナモちゃん抜けるの早!まあいいや。そうだ君。ちょっといいかな?私の今思ってる本音なんだけど、大丈夫?」


「全然構わねーよ」


「正直ね、私は君にもこの大会に思うところはいっぱいあったよ?でも当のミナモちゃんはあんな感じで、めちゃくちゃ乗り気だよね。だから私はミナモちゃんの為に全力で出来ることをするって決めたんだ。」


大きく振りかぶるように少しの間が空く。


「それでやっぱり気になるのは君がちゃんと大会を成功させる気があるかどうかなんだよね。…それだけは君の口から教えてくれないかな~って?」


彼女の能天気な口調から放たれたのは剛速球のストレートだった。


初対面の俺に対してここまで腹を割って話すその姿勢には戸惑ったが、おそらくこれがVtuber暁野ひなたの礼儀なのだろう。


ならばこちらもそれに応えるのが筋である。喉の奥、そのまた奥の腹の底から言葉を引っ張り出し俺は言った。


「当たり前だろ。この大会は視聴者と参加者、それぞれの主張をぶつけ合う場所だ。それが出来りゃ成功、出来なきゃ失敗ってことだ。」


「君の主張は何なのかな…?」


「気に入らねえ奴をぶっ倒す。それが俺の主張だよ。そして絶対に成功させる。分かったか?」


しばしの沈黙。通信のノイズだけが耳を叩く。やがて、少し呆れたような、けれどどこか楽しげな溜息が聞こえた。


「ふむふむ~?うーん。理解はできないけど…やる気は伝わったよ!ミナモちゃんに免じて私も賭けてみようかな!あ、でも本番はミナモちゃんにちゃんと優しくするように。じゃあね~」


ぽすっ、という軽い切断音と共に、彼女のアイコンも消える。


どうやら俺の考えは理解されなかったようだがまあ仕方ない。なぜなら俺自身もこの想いが一体何なのか、理解できていないからである。


間違いなく本心ではあるのだが、果たしてその先にはいったい何があるというのだろうか。


先のことを考えるのはどうにも苦手なので、答えはイツカ杯にある。そう結論付けることにした。

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