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第20話 挑発

一回戦、万場ねこに勝利し、その後も順調にコマを進めていた俺は現在、自分の配信の裏でとある配信を見ていた。


画面に映るのは一見軍服のように見えるフォーマルな服装を華やかにアレンジして着こなす青年。

その青年こそ俺の準決勝の対戦相手、OneDshipワンダーシップ所属、薙又レイだ。


[レイくん頑張って!] [薙又ァ!応援してるぞ」] [ソラくんとの試合も楽しみ!]


薙又レイ「ありがとうございます!私も楽しみです!前回、ソラトさんに敗れてから、本当に全てをかけて練習してきました。あの時足りなかったものは何か、あの時の自分を超えられるのか。それは、決勝の舞台で証明します!」


曇りのない瞳で彼は言い放った。


あーこりゃ凄い自信だ。努力は裏切らないとでも思ってるんだろうな。あまりにも眩しくて目を背けたくなっちまう。


しかし俺は次の対戦相手としてその様子を観察する。


薙又レイの配信は正のエネルギーに満ちていた。

そのエネルギーをどうにかして俺のエネルギーに変換できないだろうか

奴の自信は自分の努力から来ている。それは言動からも明らかだ。

逆に言えばそれは努力に依存しているとも言える。それはまるで均衡の取れていない原子のように不安定な状態だ


薙又レイ「ソラトさんのあの堅実な立ち回りは、本当に尊敬しています。自分も取り入れようとしたんですが中々難しくて、それでも自分なりの立ち回りを身に着けたつもりです」


[ソラトくんも凄いもんね!] [薙ァ!お前の努力を俺は見てたぞ!][今来た人へ、決勝は19時予定です!]


彼の目線は画面の前の俺ではなく、その先に居る事務所の先輩、匂坂ソラトの元へと向いている


しかしまあ俺のことは眼中にも無いってか。本当に俺の存在が見えてねーのか相手の実力が分かってねーのか


俺はそこらへんにあったアカウントを引っ張り出しキーボードを叩く


[でも準決勝の相手強そうじゃない?](俺)


薙又レイ「そうですね。ですが今日までやってきたことを出し切るまでです!」


簡潔に屈託のない声で薙又レイは言った。どうやらやはり薙又レイの物語に俺の姿は存在しないらしい。


「言うじゃねーか。見えぬなら見させてやるよ薙又レイ、ってな」


そうして、誰も知らない因縁が俺の中で渦巻いていた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暁野ひなた「さあ、いよいよ準決勝!決勝への切符をかけた、この戦い!まずご紹介するのは1P側!これまで圧倒的な勝利を我々に見せてくれました。果たして今宵も見せてくれるのか!新進気鋭のダークホース、憂生イツカ選手!」


暁野ひなた「対する2P側は、ソラト選手とのリベンジに向けて、険しい道をひた走る!残る壁はあと一つです!ここを勝って決勝までたどり着けるか!不屈のチャレンジャー、薙又レイ選手!」


画面が暗転し両者のアバターが映し出される。


[レイ君ー!][ファイトー!][薙又ァ!][ソラ君も見てるよー!]


暁野ひなた「それでは、バトルスタートです!」


準決勝のゴングが鳴った。


試合開始のコールを終え、実況モードを解いたひなたがミナモに話しかける。


暁野ひなた「ミナモちゃん、注目ポイントはどんなところになるのかな?」


審ミナモ「そうね。注目すべきは憂生イツカ選手の変幻自在の攻め、そして薙又レイ選手がそれにどこまで対応出来るかになってくると思うわ。」


その解説通り、俺は初見殺しの連携を繰り出す。すると薙又ァ!はそれを見事に受け流して見せた。


イツカ「へえ~やるじゃねえか。流石に練習はしてきたみたいだな」


俺が口を開くと相手もそれに合わせて口を開いた


レイ「お褒めに預かり光栄です。ソラトさんに勝つために研鑽を積んできましたからね」


そう言って今度は相手の攻めのターンがやってくる。


その攻めに対し、俺はコントローラーを動かしながら口を挟む


イツカ「研鑽ねえ、これが?」


言い終わりと同時に相手の攻めに対しカウンターの一撃を食らわせる


相手のキャラが吹き飛び体力が削れる。


レイ「どういう意味ですか」


レイが問いかけてきた。

先ほどまでの余裕は消え、たじろぐような声色。

当然だ。開幕のやり取りとは違い、先ほどの一撃は意識外からの一撃。暗に何時でも喉元に切っ先が届きうることを相手に印象付けることができた。

試合の状況的にも、そして精神的にも俺は優位に立ったのだ。


ここで喰らわせるべきは特大の嘲笑、俺は口を開く


イツカ「お前がやってたのは練習の”フリ”なんだよ。」

イツカ「全部、全部がファンのアピールの為、お前は頑張ってる自分が評価されることに酔ってただけなんだよ」


暁野ひなた「ええっ!?ここで憂生イツカ選手から挑発が飛び出したよ…!」


レイ「違う、私はただ純粋にソラトさんに並びたくて…!」


純粋、確かにそうなのかもしれない。しかし純粋ということはそれだけ読みやすいということでもあり


イツカ「だったらさっきまでの配信はなんだ?試合直前までファンと余裕こいて談笑してたじゃねーか」


先ほどの配信を思い出す


お前が練習をしている間、俺も練習をしている

お前がゲームをしている間、俺もゲームをしている

お前がファンを喜ばせている間、俺は自演をしている


OK!下位互換ヨシ!


まあ実際俺の言っていることはハッタリに過ぎない。だが相手が背中を見せたからには畳みかけるのが礼儀ってもんだ。


俺は相手のキャラがダウンした所に起き上がれないよう技を重ねていく。


[いやああああああああああ]

[やめてええええええええ]

[試合中のVCはルール違反では]

[がんばれ…!]

[あああああああああああああああ]

[さすがに?]


暁野ひなた「これではレイ選手起き上がれない!」

     「VCがルール違反との声もあったけどそこはどうなの?ミナモちゃん!」


審ミナモ「想定していた使い方では無いけれど、ルール違反ではないわ」


言葉と共に一撃、また一撃と重い攻撃を喰らわせていく


暁野ひなた「口撃、口撃です。口に撃と書いて巧みに攻撃が飛び出している!レイ選手も頑張って!」


イツカ「どうだ?分かったか?幾ら練習したところでお前が、俺に、勝てるゲームじゃなぁい!」


レイ「そんな、俺は…ここで…」


暁野ひなた「勝者!憂生イツカ選手!」


審ミナモ「最後は一方的になってしまったけれど、見事な勝負だったわ。健闘を称えましょう」


[nf]

[薙又ァ!よく頑張ったぞ!]

[負けちゃったけどかっこよかった]

[あんなこと言われなかったらもっといけたのに…]

[お疲れさまでした…]


大会の雰囲気が少し香ばしくなってくる


何はともあれ たいありだ

俺は決勝にコマを進めた


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