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悲しいとか辛いとか憎いとか・・・そんな感情の前に、母が死産した時に見せた父の顔が鮮明に甦り、そして妙に納得したかのようにストンと、胸に落ち着いた。

本能的にわかっていたのかもしれない。だけど、それを認めたくなかったのだ。

何かはわからなかったけれど、こうなってしまった事に父が関わっていたのだと。


不思議と心は凪いでいた。

単純に、驚きと罪悪感と怒りに疲れてしまったのかもしれない。


凛は大きく息を吐き、重ねられた奏の手に自分の手を重ね縋る様に力を込めた。

頭の中は正直真っ白だ。これから先、どう行動していいのかわからない。でも、父親と話をしなくては・・・確かめなくては、と言う気持ちだけは強く沸き上がってくる。

「大丈夫?」

再度問いかける奏に、今度はしっかり彼女の目を見て頷いた。

「ありがとう、ございます」

重ねた手はそのままに、凛は依子に頭を下げた。

「正直・・・頭の中が真っ白で、何も考えられないけど、父親と話をしようと思います」

父と話して、依子の言った事を肯定されたら・・・その時はどうしたらいいのか・・・

このまま、何も知らなかった時の様に一緒に住めるのか?言葉を交わせるのか?愛する事ができるのか?

色んなことが今度は竜巻の様にグルグルと回り始める。

そんな事などお見通しとばかりに、依子は奏と吉祥に「準備しておいで」と告げた。

「何を?」とは聞く事無く、奏は凛の手を優しく撫で「すぐ戻るから」と吉祥と共に部屋を出ていく。

「じゃあ、俺も念のために準備してくるよ」

そう言って神威も部屋を出て行った。

訳が分からず依子を見れば、大丈夫という様にほほ笑んだ。

「家まで送るよ」

「・・・・え?」

父親とは話さなくてはとは思うが、どこかで尻込みする自分もいる事は否めない。

此処は居心地は悪いが、安心する場所だった。できる事なら、もう少しだけ此処に居たいとさえ思うほどに。

不安が顔に出ていたのか、依子ははっきりと言葉で凛に告げる。

「大丈夫。我ら四人もついていく」

「え?」

「だって、もうあの家には住めないだろ?というか、危険だ」

「き、けん?」

「そう。君の父親に全てを告げそれが肯定されたとしよう。彼等は恐らくもう遠慮などせず君の中の悪魔を利用しようとするはず」

「利用って、俺は何もできない・・・」

「信仰の対象だよ」

「・・・・・え?」

「悪魔信仰の教祖に祭り上げるんだよ」

「・・・・・・・・」


目の前が真っ暗になった。


教祖だって?俺が?しかも、悪魔信仰の・・・・・

「既に仲間が儀式に参加し、全てを把握している。その人達は既に信者なんだ。水面下では既に凛くんは教祖様になっている可能性が高い」

教祖だって?本人が知らないだけで、そんな団体が出来てる?


自分の知らない所で事が進んでいるかもしれないという事に、凛は体を震わせた。

「それに何もできなくはないんだ。君は正真正銘。悪魔憑きなのだから」

「っ・・・・」

「現に色んな人間を魅了していただろう?本人の意思とは関係ない所で」

凛は言葉を失くした。

今まで、相手が勝手に言い寄ってきながらも、靡かない凛を最後は罵っていった。

それに対し、どんなに平気な顔をしていても、傷つかない事などないのだ。

自分が悪いのか?何故自分が悪いのだ?と。何時も自問自答の繰り返しだった。

だが、どんなに考えても分からなかったのは当然だ。

依子に改めて言われて、初めて納得する。

これまでのあの忌まわしい体験は、全て悪魔の所為だったのだと。


「まぁ、今まで自分がどんな状態だったかも分からなかったんだから仕方がないが、訓練次第ではコントロールできるはずだ」

「え!出来るんですか!?」

もしそれができれば、これからの生活を変える事が出来るかもしれない。

半信半疑の表情で依子を見つめる凛に、彼女は強く頷いた。そして、


「できるさ。アスモデウスを凛くんに隷属させればいいのだから」


と満面の、そしてどこか意地の悪い笑みを浮かべた。


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