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彼女は、いつもの時間のバスに乗り、いつもの時間に停留所へと着いた。

停留所は専門学校と彼女が通う高校との間にあり、日差しや雨をしのぐ屋根が掛けられ、ベンチも置かれている。

路線は違うが、同じような時間に着くバスも何本かあり、そのうちの一台のバスから降りてくる彼を待って学校へ行くのが彼女の毎日の楽しみであった。

彼女の乗ったバスが早く着き、その直後に彼が乗ったバスが来る。

本来はもう少し遅い時間のバスでも全然余裕なのだが、彼が混雑を避け早い時間帯を利用しているのを知り、彼女もその時間に合わせた。


只々、彼に会いたくて・・・・



・・・✿・・・✿・・・



憂鬱な月曜日。待ちに待った月曜日。

始まりの月曜日に思う事は、人それぞれ。

だがその日その光景を見た、主に女性達に激震が走った。




翌日の月曜日、凛と奏は仲睦まじく手を繋いで学校までの道のりを歩いていた。

奏の家からの登校は初めての凛に対し、道案内の意味もあるのだが。


奏の住んでいる地域は学校が近距離で四校ある。

奏が通う大学。その五分先には凛が通う男子校。さらに二十分先には女子校。そしてその女子校から十分先には専門学校が。住所に「学園通り」と付くほどで、登下校時間には多くの学生たちであふれかえる地域だ。

その所為か、凛はかなりの有名人。

確かにアスモデウスの影響もあるが、彼自身も美しいのだから悪魔の影響がなくても、今と大して変わりなく騒がれていたのかもしれない。


そんな彼がいつもの登校ルートではなく、反対ルートから愛らしい女性と手を繋いで歩いて来るではなか。

しかも、普段はニコリともしない表情が、愛おしそうに微笑みながら彼女を見つめている。


そんな姿を目の当たりにした女性達・・・主に学生達にとっては正に大事件としか言いようがなかった。



周りにどんな目で見られているかなど全く気にしていない奏と凛は、今一番気になる引っ越しの話に夢中になっていた。

「引っ越しの日程ははっきり決まったの?」

「前の家から荷物を運んでくるのは、明後日になったんだ。父さんは仕事でいないし」

百合子はできる事なら理央の顔は見たくないと、彼の不在時を狙って荷物の運び出しをしようとしていた。

遠野家からのお引越しは、週末に行うようだ。


「凛も立ち会わないといけないでしょ?」

「うん。引っ越しの件もあるから、今日休みの事も含めて先生に話してくるよ。でも、奏の送り迎えはするから安心して」

「え?大丈夫よ。無理しないで」

「無理はしていない。心配なんだ」

「そんな・・・先週まで普通に一人だったんだよ?大丈夫だよ」

数日前まで普通に一人で大学まで通っていたのだ。油断しているわけではないが、今すぐどうこうなるとは無いとみている。

だが、凛は「俺を安心させてほしいんだ」と、一歩も譲らない。

凛が本当に心から心配してくれているのもわかるから、あまり強く拒否もできない。

「・・・・じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう。でも!無理はしないで、本当に」

「わかってる。俺が奏の側に居たいだけなんだから、俺の我儘だよ」

そう言いながら笑う凛は可愛らしく、ついつい顔を赤らめてしまう奏。

そんな奏を見て「可愛い」と漏らす凛に「可愛いのは凛よ!」と、なんとも見ている方がむず痒くなるような、ラブラブっぷり。


出会って四日目、付き合って三日目。そんな短い時間の中で意外だなと思うのは、凛が奏から離れたがらない事だ。

確かに離れていればすぐに会いたくなる。例え同じ屋根の下にいたとしても。

それほどまでに、お互い浮かれまくっている事も自覚している。自制しなければと思うほどに。

だが、凛にとってはそれだけではない。奏に何かあってはという不安から、過保護になっているのだ。

まぁ、奏としてはそれが嫌ではないのだからさして問題ではないのだが。・・・ただ、その事で凛が無理をするのであれば、話は別だ。


恋愛初心者で、どこかその恋心を優先してしまう所もあるが、好きだからこそ互いを思いやる気持ちだけは忘れてはいない二人。

そんな微笑ましやり取りは、周りの人達にどのような影響を与えているのかなど、互いしか見ていない二人には与り知らぬ事だった。



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