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依子の話がひと段落した時、タイミングよく奏が戻ってきた。
「ごめん!遅くなっちゃった」
「話は済んだのかい?」
「うん。断ってもしつこくてさぁ」
「じゃあ、行くのか?」
何処か不安げな凛が、隣に座った奏を見た。
「行かない、行かない。私、ああいうの苦手なのよ」
その言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。
あからさまな安堵感に少しだけ恥ずかしくなり俯くと、奏は当然の様に凛の手を握った。
「合コンより凛とシロと一緒にいた方が楽しいもの」
奏の手の温もりが心地よく、ほっと息を吐く。
これが『波長が合う』という事なのか・・・それだけではないような気もするが、今はよくわからない。
確かに波長だけでなく、性格や考え方も関わってくると依子さんが言ってたな。
奏の事は依子さんから聞いた事くらいしかわからないけど、無条件で全てを受け入れてしまうのは、多分・・・・・
彼女と触れ合うと、不思議と安堵感に満たされる。ただ、それだけではない、どこか胸の奥がムズムズするような感覚もある。
でも、悪いものでは無い事は確かで、どこか浮足立つような気持ちよさ。
昨夜もずっと繋いでくれていたその手に、どれほど勇気づけられた事か。
思い出し、繋がれた手に無意識に力を込めた。
そんな凛の気持を知ってか、奏が凛に寄りかかる様に身を寄せてきた。
「なんか、凛に触ってると落ち着くんだよね。離れたくないっていうか・・・なんでかな?依ちゃん」
「奏には言ってなかったか?凛くんと奏は魂の波長の相性がすこぶる良いんだよ」
「え?本当?だからシロにもメロメロなの?」
「まぁ、そうだな」
「わぁ、マジかぁ。何かあるとは思ってたけど・・・」
奏も初めての感覚と感情に戸惑いを隠せないが、ついつい本能のままに動いてしまう。
兎に角、凛に触れていたいと思う。そして無意識に、行動に移してしまうのだ。
女性嫌いの凛ではあるが、此処まで密着してなお心地よいとさえ感じる奏の体温。
だが凛は朧気だが、奏に対する気持ちが何なのか、本能的にわかり始めてた。
性的な雰囲気皆無ではあるが、女性に体を寄せられても不快に思わない。むしろギュッと抱きしめたいという考えに、凛はハッとした様に顔を赤らめた。
そんな二人の様子に、込み上げる笑いを堪えるかのように口元を隠す依子。
依子のその様子を見て、照れと恥ずかしさから思わず睨んでしまう凛。
その視線に依子は場の雰囲気を変えるかのように、コホンと咳ばらいをした。
「奏、凛くんが困っている。ほどほどにしなさい」
「・・・わかった」
ハッとしたように離れるも、手だけは繋いだまま。
握られた手を見ながら、自然と凛の口元が緩む。
これほどまでとはね・・・
依子は感心した様に、二人を眺めた。
この二人の波長は、パズルのピースが欠けることなく、間違うことなく、きっちりはまったかのような完璧なものだ。
長く生きてきたが、初めて見る波長。
だが、これから先の関係は二人で築いていくもの。
親友になるのか恋人になるのか、はたまたどんな関係にもならないのか。
波長が合うからといって、必ずしも男女の関係になるとは限らない。
波長とは別に個々が持つ性格があるのだ。波長が合っても性格が、価値観が合わなければそれまで。
だが・・・と、二人を見て依子は思う。
気付けば親密になっていた・・・って感じかねぇ・・・
またも含み笑いを漏らす依子に気付かず、奏と凛は楽しそうに笑い合っているのだった。




