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「よりちゃん、あのひとのあたまの上に、なんかあるよ?」


その日は依子の元に相談者が訪れていた。

流石に祖母、両親ともに霊能力があるせいか、奏にもその才能はいかんなく受け継がれていた。

よって、依子は奏の能力を見極め導くために自分の仕事になるべく同席させるようにしていたのだが、突然そんな事を言い始めたのだ。

そして、相談者の・・・正確に言えば頭の上をじっと見つめ、突然泣き始めた。

突然の事に、困惑する依子と相談者。我が子の泣き声に吉祥が駆けつけ、あえなく奏は退場となったのだが・・・・

その後、号泣の訳を聞いた三人は柄にもなく戦慄する。


「あのおじちゃん、あした、しんじゃうの!」


翌日、彼は死んだ。彼が運転していた車にトラックが突っ込んで。


「可笑しいだろう?まるで漫画か何かの様に人の寿命が視えるんだ。ご丁寧に画面が出てきてその場面を見せてくれるんだそうだ」

これ以上驚く事は無いだろうと思っていた凛は、その言葉に息を呑んだ。

「テレビ画面と言うよりはゲーム画面に近いかもしれない。まるでHPやMPみたいに寿命は赤でギフトは緑のメーターで視えるそうなんだから」

「あの、ギフトって・・・」

「ギフトってのは、所謂、『徳』だ」

「徳?」

「う~ん・・・わかりやすく言うなら・・・・・・・貯金・・・そう、善の貯金だな」

「善の貯金、ですか」

「凛くんは『徳を積む』という言葉を知っているかい?」

「はい。善い行いをする事・・・だと」

「そう。簡単にざっくり言うならば、見返りを求めることなく善い行いをする事だ。人は意識してする場合もあれば無意識にする場合もある。それが貯金の様に貯まっていくのさ」

凛は小さく頷く。

「それがギフト。まぁ、私が命名したのだがね」

凛は余りゲームを好んではやらない為それほど詳しくはないが、テレビのニュースか何かの番組かは忘れたが格闘ゲームの画面を見たことを思い出し、あんな感じなのかと想像する。

「・・・あの、奏は常にそれが視えているんですか?」

常にそれが視えるという事は、かなりきつい事だ。

「いや、小さい頃は寿命が大体一週間位の者しか視えなかったのだが、年を取るにつれ力が強くなっていってね。視たくなくても視えていたそうだ。だが、中学生に上がる頃にはある程度コントロールできるようにはなった」


コントロールできるとは言っても人の寿命が視えるなど、気持ちのいいものではない。いや、かなり嫌な事だ。

顔にありありと出ていたのか、依子は苦笑を浮かべる。


「幼い頃の奏は、言葉にはしなかったんだが、顔に出てしまっていてね。―――たまたま知り合いだったのだが、病を患っていたんだ」




知り合いとは依子の夫の親友夫婦だった。

親友夫婦は依子や息子夫婦の特殊な事情も知っていてもなお、普通に付き合ってくれていた数少ない友人だった。

ある日、彼等が遊びに来ていた時、奏は親友夫婦の夫の方の頭上をじっと見つめ涙を流し始めた。

事情を知らない夫妻は驚き、依子たちは奏が余計な事を言う前に部屋へと下がらせた。

そして奏が語る言葉に、依子たちは頭を抱えた。


親友夫妻の夫の方が、一週間後に亡くなるのだという。

事故や事件なのではなく、病で。

だが依子たちは彼が病気だなどと聞いた事が無かった。今現在も元気そのものである。

依子の力も相当なもので、病や事故の予言は出来る。

だが元々は、過去を紐解き今現在の問題を解決する事の方が得意なのだ。

未来に起きる事もそこそこ正確に言い当てれるが、奏の様に鮮明な日時や原因までは難しかった。

それに依子達は普段、普通の何も視えない人達と同じように友人たちと付き合う事を心がけていた。

近しい人達はその事を知っているので、視てもらいたい時には改めてお願いすることにしており、公私の区別をつけているのだ。


ただ、今の奏にはそれは当てはまらない。

急激な力の暴走に近い、寿命を視てしまう力。


奏にはどんなモノが見えても、口には出してはいけないと言い聞かせ、あの日以来、家族以外には何が視えたのか言わなくなった。

だが、やはり表情には出てしまう。七~八才の子供に表情に出すななど言っても出来るわけが無いのだ。依子達も出来るとは思ってはいない。

大人達がいかにフォローするかに重きを置いていた位だから。

まさか、依子の夫の友人が・・・思いもよらない事に、彼等はどう対処すべきか頭を悩ませた。


「その時は、親友夫婦が本当にできた人達でね、理由を白状させられたんだ。私は最後まで反対したんだが、夫がね、言うべきだって・・・・」

彼等は翌日病院を訪れ、その日のうちに入院となった。

原因はすい臓がん。末期だった。

沈黙の臓器とはよく言ったもので、痛みが出た時には既に手遅れである事が多い。

だが彼には一切痛みが出なかったのだ。

手のほどこしようもなく、彼等は病院ではなく自宅で最期を迎えたいと言ったが、容態が急激に悪化してしまった。

「そんな時、奏が言ったんだ。寿命をのばすことができるって」

「え?伸ばす?」

「そう、ギフトを寿命に変換するんだそうだよ」

「えっと、つまり積み上げた『徳』を、ということですか?」


あまりな事に、言葉には出したものの、それを噛砕く様に頭の中で数回繰り返す凛なのだった。



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