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本日は土曜日で学校も休み。昨夜の事で疲れてもいたので、ゆっくりとした時間の朝食となった。

綾瀬親子の今後の事は弁護士を通すという事で、吉祥が百合子を伴って別室に移動。

神威は元々、祓いの仕事が入っていたので出かけて行った。

そして凛と奏は、依子の仕事部屋へ。

昨日と同じように、何処からともなく白猫を取り出した。


「猫?」

まるでマジックの様に現れた白猫に、当然の事の様に戸惑う凛。

方や奏は「猫ちゃ~ん!」と剥き出しの腹をまふっている。

「この猫は、凛くんに憑いていた、アスモデウスだ」

「―――・・・・・・は?」

余りにもサックリとした説明に、意味が分からない凛はその猫を凝視する。

真っ白な毛並みの猫の目は赤く、悟りを開いたかのような、諦めたかのような、どちらとも言えない眼差しで(くう)を見ている。

「で、この猫に名前を付けて欲しいんだ」

「名前?」

「凛!かわいい名前にして!ユキとかミルクとか・・・アリスなんかも可愛いわね!」

鼻息荒く肉球を揉みながらまくし立てる奏の顔に、猫キックが炸裂した。

『黙れ!俺様にそんな軟弱な名を付けるでない!いや、そもそも俺様にはアスモデウスという名があるのだ!他の名はいらんっ!!』

突然、人の言葉で、しかも可愛らしい声で怒鳴り散らす白猫に、凛は信じられないとばかりに目を極限まで見開いた。

「あぁ、驚いただろう。これは、君に憑いていたアスモデウスをギリギリまで剥がして、君の使い魔として形成したものだ」

「・・・・使い魔?」

「まぁ、平たく言えば凛くんの下僕だ」

『誰が下僕だ!!』

「いや~ん、可愛い!!」

目の前の猫にメロメロの奏は、首と耳の後ろを同時に撫でまくった。


―――ゴロゴロゴロゴロ・・・


「静かになったところで・・・説明すると、凛くんからコレ(・・)を剥がそうとしたんだが、魂に癒着していて全ては無理だったんだ。だから、逆転の発想でコレ(・・)を凛くんが支配すればいいと思ってね。使い魔らしく猫にしてみたんだが、どうかな?」

どうかな?と聞かれても、凛にはなんて答えたらいいのか分からない。

昨夜、彼等の力を目の当たりにして現実離れしていると思ってはいたが、此処までやられてしまうと、凛が言える言葉は一つしかなかった。


「いいと、思います・・・・」


その言葉に、あからさまにほっとした様に依子が笑った。

「主従関係を明確にしないといけないから、名前を付けてくれないか。凛くんの好きなように付けるといい」

名前・・・困ったな・・・と思いながら件の猫を見れば、奏の膝の上でだらしなく伸びながら撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らし、うっとりした様に目を細めている。

何処からどう見ても、ただの猫だ。


これが、自分に憑いていた悪魔?しかも白猫?う~ん・・・・


頭の中では色んな名前が浮かんでは消え、最終的に残ったのが「―――シロ?」だった。

「見たまんまね。でも、まぁ、良いんじゃない?カッコイイの付けちゃうと調子こきそうだし」

「そうだな、どれ」と依子は、奏の膝の上でまどろむ白猫の額に人差し指を押しつけた。

「お前の名前は”シロ”だ。綾瀬凛を主とし、守り、服従せよ」


瞬間、白猫―――シロの身体が光り、硬直。すぐに弛緩した。

ぐったりしたその様子に、一瞬、死んでしまったのか?と思ったが、ぴくぴくと動く耳や足にほっとし、そんな自分に凛は驚く。

妹の命を贄に自分に取り憑いた悪魔。本来、好きになる事などないはずだった。

召喚など、バカげた事をした父親達の事は今も許す気はない。

自分に取り憑き、色んなトラブルを呼び込んだ悪魔の事も許すつもりなどなかった。


だが、このビジュアルは反則だ。


雪の様な白い毛並みはまるで無垢のようで。

まん丸なその瞳は、悪魔とは程遠いほど澄んだルビーの様に綺麗だ。

口を開けばその容姿とは相反する、威嚇する言葉と尊大な態度。

だが可愛らしい声が、全てを台無しにする。

小憎らしいとは思えど、恨むことなどできない。

そんな甘い自分が、ほとほと嫌になる。

だが、恨んだところでどうなるのだという自分もいるのだ。

完全に取り除く事が出来ないのであれば、付き合っていくしかない。

恐怖に慄く様な怖い容姿よりは、可愛らしい猫の姿で側に居てもらった方がまだ、この気持ちを納得させられる。


―――可愛すぎるから仕方がないのだ、と。


何を隠そう凛も、猫派なのだった。




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