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百合子は英語が得意で、イギリスに留学していた経歴もあり、その時に理央と出会っていた。
彼女がイギリスに留学していた時のステイ先が、理央の家だったからだ。
だから、ある程度の理央の交友関係は把握していたし、あの家に地下室がある事も知っていた。
そして理央が変なものに傾倒している事も。
だが、誰かに迷惑を掛けるのものではなかったし、仲間内でその事について議論している程度だと思っていたから、敢えて何も言わなかった。
正直、彼等のファンタジックで歴史的背景などを交えながらの話は、そういう事に興味の無い百合子も純粋に面白いと思ったから。
その時は互いに高校生だった事もあり、たいして気にも留めてもいなかった。
二人が付き合い始めた時には、互いに大人になっていたし、その手の話もしなくなっていたから、すっかり忘れてしまっていたのだ。
まさか、益々のめり込み善悪の見境がなくなっていたとは、夢にも思わない。
理央が話していた内容は、まさに死産した娘の事だったのだから。
「あの時彼は言っていたの。娘が花嫁として連れて行かれたと。あの儀式は成功したとね」
儀式とは凛に悪魔を降ろすためのもの。
「まさかと思いました。確かに娘の死因は不明です。だけど、お遊びの様な悪魔儀式で娘が死ぬなんて誰も思わないわ!!」
百合子の言葉に、今度は理央が激怒した様に立ち上がり怒鳴った。
「お遊びとは何だ!!あのお方は実在する!現に凛の中に存在しているではないか!」
「なっ・・・凛の、中ですって?!」
「そうだ。偉大なるあのお方は、我が娘を花嫁とし我が息子に力を与えてくださったのだ!私は偉大なるお方の忠実なる僕であり、父となった。
いずれ器だけではなくその意思も我が主の支配下におかれ、そのお力をいかんなく振るい、我らが同志と共にこの世の支配者となるのだよ」
百合子は余りの事に愕然とした。
こんな荒唐無稽な事を言うような人ではなかった。確かに若いころから悪魔崇拝していた事は分かっていた。彼等の話の内容も、そこまでのめり込んでる様にも思えなかったから、麻疹の様なものだろうと気にも留めていなかった。ましてや日本人の百合子には「宗教の自由」という理念がある。
人様に迷惑をかけなければ、何を信仰しても構わない。犬だろうと猫だろうと、鬼であろうと妖怪であろうとだ。
だが、これは許せる範囲を遙かに凌駕している。
娘の死因が何であろうと、理央が殺したのだと言うのなら、百合子の中では彼が殺したことになるのだ。
ましてや、くだらない儀式とやらで娘は死んだのだという。そしてそれだけではなく、大切な息子にまで何やら仕掛けていると。
許せるはずが無かった。
あの会話を聞いてから、理央に対しては不信感しかなかった。
だから理央が不在中、彼の書斎に入り証拠を見つけようとした。
ただの与太話であって欲しいと願いながら。だが出てくるのは、当たり障りのないものばかりで、確実な証拠を見つけることが出来なかった。
やはりただの思い込みだろう・・・とホッとはしたものの、信じ切る事はできなかった。何故なら、あまりにも都合よく悲しく無情な出来事が重なったから。
今の彼のその言葉で彼女の願いは、信じたいと思っていた気持ちは、儚くも崩れ去ってしまったのだった。




