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第20話:いつもと違う場所で

目が覚めると、見覚えのない天井があった。


「あら、起きたのね」


声の方を見ると、保健室の先生がそこにいた。


「先生、私.……」


「軽い熱中症ね」


あぁ、そういえば私倒れたんだっけ。


自分の状況を徐々に思い出した。


「こまめに水分補給して、しんどい時はしんどいって言わなきゃだめよ」


「はい、すみません……」


「クラスの子が荷物持ってきてくれてるから、あれだったらお昼ここで食べちゃいなさい」


「ありがとうござい……えっ?」


今、お昼って……?


急いで持ってきてもらった鞄からスマホを取り出す。


時刻は12時17分。


そして、一件の通知も入っていた。


通知を見て、一瞬血の気が引いていくのが分かった。


≪先輩、今日は来れそうにないですか?≫



お昼になり、いつも通り旧校舎空き教室で待っていたが、遥の姿は一向に現れなかった。


「先輩、遅いな……」


時刻は12時15分。


いつもならとっくにご飯を食べ始めている時間だった。


心配になり、チャットを送ることにした。


≪先輩、今日は来れそうにないですか?≫


返事が来るまでの時間がいつもより長く感じる。


程なくして、スマホが小さく鳴った。


≪連絡遅くなってごめんね。 体育祭の練習で倒れちゃって、今保健室に居るの≫


「えっ……」


通知を見て、状況を理解した時にはすでに荷物を持って教室を後にしていた。


本能的に、今行かないとと思ってしまったから。


優は人目も気にせず廊下を駆け抜けた。


そのおかげか保健室にはすぐに着いた。


軽く息を整えて、ドアを開ける。


中には白衣を纏った保健室の先生、奥のベッドで体操着のまま不安そうにスマホを眺める遥がいた。


「先輩!」



「……え?佐久間君?」


驚きを隠せないまま優の方を見る。


「結構遠かったでしょ……?なんで……」


「先輩のことが、心配で……」


まだ息が整わないまま優は返事を返す。


そんな二人のやり取りを見ていた先生が椅子から立ち上がった。


「じゃあ先生はお昼買いに行ってくるから。君、あの子のこと頼んだわね」


先生は優にそう告げると、そのまま保健室を出て行ってしまった。


一瞬沈黙が流れる。


「あの……ごめんね。何も連絡できなくて……」


「そんなこと気にしないでください! 先輩に何もなければ、それで……」


最後の一言を言う時、少し気恥ずかしそうにしていた。


「……息、上がってるね……」


「えっ?それは……ここまで走ってきたんで!」


遥はその言葉を聞いて、まだ少しだるかった体に元気が戻ってくる。


佐久間君、私のために走ってきてくれたんだ……


そう思うと遥は何とも言えない、温かい気持ちになった。


遥はまだその気持ちがどこから来たのか分からなかった。


「お昼、ここで食べますか?」


「うーん……ごめんね。私まだちょっと食欲ないかも……」


「あっ、そうですよね!すみません……」


優は分かりやすく、「しまった」という表情を浮かべた。


「でも、いつもみたいにお喋りはしたいかも……」


優の表情はパァっと明るくなった。


「……はい!もちろんです!」


佐久間君、表情分かりやすくてちょっと可愛いかも……


無意識にそんなことを考えていた自分に気づき、少し顔が赤くなった。



—— 優は遥が寝ているベッドの横に座り、膝の上にお弁当を置き食べ始める。


「今日はリレーの練習だったんだけど、走り終わった後に急に目の前が真っ白になっちゃて」


「うわぁ、それほんとに危なかったですね。でもまだ街中とかじゃなかったのは不幸中の幸いでしたね。」


「そうだね、街中だと誰も助けてくれないかもだしね。 今度から気をつけよ……」


何気ない会話をしながら、優の目線は遥から目が離せなくなっていた。


初めて見る先輩の体操着姿。


少し汗に濡れてどこか艶っぽい雰囲気があって、なぜか目のやり場に困った。


「……? 佐久間君? 私、何か付いてる?」


「え!?いや、その……先輩の体操着姿、初めて見たなって……」


遥が自分が体操着姿のままのことに気が付き、少し恥ずかしくなった。


別に普通の体操着だが、優に言われた言葉に反射的に上半身を隠すようなポーズをとった。


「……佐久間君、なんか今のちょっと変態っぽいよ……」


「すっ、すみません!!」


焦っている優の姿を見て、遥は思わず笑ってしまった。


「焦りすぎだよ」


優は顔を真っ赤にしながら、膝の上のお弁当をじっと見つめていた。


「だ、だって、先輩がそんなこと言うから...」


いつの間にか二人は、自然と軽い冗談を言い合える仲になっていた。

今回の20話では、初めて「空き教室」じゃない場所でふたりが会話をすることになりました。


本当はもっとドキドキさせるようなイベントでもよかったんですが、あえて“静かな保健室でのやりとり”にしたことで、ふたりの距離の縮まり方がより自然に描けたかなと思っています。


それと、優の「走ってきた理由」と、それに対する遥の“温度の変化”──このあたり、少しでも伝わっていたら嬉しいです。


実は遥の体操着姿にドギマギする優のシーンは、書いてて一番ニヤけました(笑)


次回からはまた体育祭編の続きを描いていきますので、お楽しみに!



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