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第10話:知らなかった一面

 少し進んだところで、遥はここが”お化け屋敷”だということに気付いた。


 優もどうやら気付いたようで、


「あの……ここってもしかして……」


 と、明らかに余裕のなさそうな表情になっていた。


「うん、お化け屋敷だね」


 遥は飄々と答えた。


「先輩はホラーとか、平気なんですか……?」


「う~ん、割と耐性はある方かも?」


「そ、そうなんですね~、俺も全然平気ですよっ!」


 明らかに平気そうじゃない様子に、思わず笑ってしまいそうになる。


「大丈夫?無理しなくても……」


「いや、せっかく来たんだし先進みましょう!」


 そういって優が勇足で先に進んでいった。



 —— 優が少し先を歩きながら、やたらと周囲を警戒していた。


 あれで全然平気は無理あるよ……


 遥はくすっと笑いながら、その背中を追いかけた。


 一つドアをくぐった瞬間


 ギィィィ!!


 と大きな音を立てながら後ろの、ドアが閉まった。


「うわぁ!?……音でおどかす系って卑怯ですよね~」


「もしかして佐久間君、怖いの?」


「いやいやいや、たかがお化け屋敷ですよ!?所詮、子供だましですよ!」


 今のはちょっと意地悪な質問だったかな?


 優が意地になったようにまた前進する、


 が、次の瞬間


 足元のセンサーが反応し、あのホラー映画に出てくる“呪われたあの子”みたいな顔の人形が垂れ下がってきた。


「うわあああああああああっ!?」


 急に目の前でのけ反られ、遥も急停止が間に合わず、軽く優を支える形になる。


「あっ、すみません!大丈夫ですか!?怪我とかしてないですか!?」


「私は平気だよ。佐久間君こそ大丈夫?」


 ベタすぎる展開に、また遥の鼓動が早くなる。


 見た目細いのに結構がっしりしてて、ちゃんと男の子なんだな……

 

ていうか、こういう展開って普通立場が逆のような気もするけど……


「佐久間君、やっぱり怖い?」


「……はい、正直めっちゃホラー苦手です...」


「ふふっやっぱり、じゃあここからは私が前歩くね」


「すみません、お願いします……」



 —— 遥が少し前を歩く形で進んでいく。


 時折後ろから「ヒッ!?」と小さく悲鳴が聞こえる。


 そのたびに遥は少し笑みがこぼれた。


 10分ほどそんなやり取りをつづけ、ひと際暗い部屋に着いた。


「ここ、暗すぎないですか……?」


「気を付けないとはぐれちゃいそうだね」


 その瞬間、前方に赤いスポットライトが照らされる。


 そこには真っ赤なドレスを着たフランス人形がうなだれる形で鎮座していた。


「あれ、絶対ヤバいやつですよね……」


「絶対ヤバいやつだね」


 とはいえ他に何も見えないので、人形に近づく二人。


 人形の目の前まで来ると、どこからともなく子供のすすり泣く声が聞こえてきた。

 軽く後ろを確認すると、優が生まれたての小鹿のように小さく震えていた。


「なんかしないといけないんですかね……?」


「うーん、何か仕掛けがあるようには見えないけどなぁ」


「周りも見えないですもんね、ていうかなんかさっきから泣き声大きくなってませんか……?」


 優が言い切ると同時に、人形が顔を上げ、


『許さない!!!!!』


 と爆音で言い放った。

 

一瞬、地鳴りのような重低音が響き、辺りが真っ暗に包まれたる。


 明かりが付くと人形はいなくなっており、代わりに正面に”EXIT”と書かれたドアが現れた。


「あ、出口だよ! ってあれ?佐久間君?」


 返答がないので振り返って確認すると、優が弁慶のように立ったまま固まっていた。


「お~い」


 と顔の目の前で手を振る。


「えっ!? どうかしましたか!?」


「あそこ、出口みたいだよ」


「あっ……出口!出口ね!は、早くこんなとこ出ちゃいましょう!」


 そう言って、そそくさと”眠りの標本室”を後にした。


「意外な一面見れちゃったな」




「結構本格的でおもしろかったね。……特に佐久間君の反応が 」


「……もう二度と行きたくないです」


 二人の会話にはもうぎこちなさは存在せず、それはもう普通の”友達”の会話だった。


 ふと時計に目をやる。時刻は17時を回ったころ。


「あ、もうこんな時間……」


「ほんとだ、待ち時間はあんまりなかったけど、なんだかんだ歩いたりで時間使いましたもんね」


「どうします?あと1個乗ると結構帰り遅くなっちゃうかもですけど……」

 確かに、時間的にあと1個乗るとかなり遅い帰りになってしまう。


 でも——


 もう少しだけこの時間が続いて欲しい。

 

やっと自然にしゃべれるようになったのに、またここで「またね」は嫌だ。

 

最後に何か乗らなくてもいい。

 

ベンチに座って話すだけでも。


 そんな遥の視界におあつらえ向きのモノが映る。


「……最後にアレに乗りたい、かも……?」


「っ!? アレ、ですか!?」


 優があからさまに動揺する。


 だって遥の指さす”アレ”は—— デートの定番中の定番”観覧車”だから。

ビビり優 vs ホラー耐性遥、お楽しみいただけましたでしょうか!?


実はこのお化け屋敷、書いてるこっちが一番楽しんでたかもしれません(笑)

そしてやっと“友達っぽい空気”に慣れてきたところで、まさかの観覧車!?


恥ずかしい展開に突入していく次回も、どうぞお楽しみに!



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