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4 園庭

(確かにあのままの格好では寒かったわね、カールお兄様はさすがだわ。)


春先にしては冷たい風を感じ、少し震えた腕を軽くさする。

朝食時には春めかしい淡いピンク色のドレスを着ていたマリーナだが、今は金色の刺繍が施されたお気に入りの黄色いドレスを見に纏っている。


ドレスと同色の帽子を少しあげると、雲ひとつない青い空が広がっていた。

いい天気でよかったわ、と薔薇が咲き誇る園庭の中に進むとロココ調の丸いテーブルと椅子が並んでいる。

テーブルの上に置かれたティースタンドにはマカロンやケーキ、スコーン、サンドイッチなど彩り鮮やかな軽食とお菓子が飾られていた。


(これなら大丈夫ね。)


デュークは甘い菓子を好むため、事前に確認をしにきたマリーナはひとまず安堵した。


「紅茶はヌワラエリアを準備してくれているかしら?」


ゾフィーに念のため確認をする。


「はい、マリーナ様。今年頭に収穫された最高級品で準備させていただいております。」


間違えなかった、よかった!とでも言いたそうな顔でゾフィーが答える。



ありがとう、と微笑むとまた固まっているゾフィーを横目にまたテーブルに目を落とす。

デューク様は昔からセイロンティーを好む方だ。

その中でも一際好きなのがこのヌワラエリア。日本で言う緑茶のような渋みがあり、甘いお菓子と大変合う。

茶器も東方の国から仕入れた物を準備しており、見た目はほぼ緑茶だ。

ティースタンドに目をやると、スコーンの横にはあんこがのっている。これもデューク様の好みで準備したものである。

ロココ調の家具に緑茶とあんこ、なんともへんてこだが無理矢理自分を納得させる。


(デューク様は東方の国にとても興味をお持ちなの。)




そんなことを考えていると、久しぶりの声が聞こえて思わず勢いよく振り向く。


「やあ、マリーナ。元気そうで安心したよ。今日を心待ちにしていた。」


「デューク様!もういらっしゃっていたのですか!お迎えにあがりましたのに……あっ」


焦ってついつい挨拶を忘れて返事をしてしまい

慌ててカーテシーを行う。


「ニニール国の太陽にご挨拶申し上げます。……デューク様、この度はお越しいただきありがとうございます。」


「相変わらず見事なカーテシーだね、マリーナ。でも今日は非公式だ、気楽にしてくれ。」


この世界では珍しい黒目をきらきらさせながら、眩しいくらい爽やかな笑顔でそう話すデューク様の髪の毛は晴天の下で黒く輝いており、つい記憶の彼と重ねてしまう。

触ったらどんな感触なのかなとつい手を伸ばしかける。


(な、なんてことを考えているの!)


そう我に帰ったマリーナは、伸ばそうとした手を頬に当てて、ありがとうございますと微笑み返した。






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