35 王都
お久しぶりです。ゾフィーです。
今日はなんと、マリーナ様に付いて王都に向かっています!
ご学友のエドワード様、エマ様と一緒に前々からお忍びで遊びに行く計画を立てていらっしゃったマリーナ様。初めての王都に興奮して眠れなかったようです。そういえば、急遽ポリーヌ様も一緒にお出かけされることになったとか。ご学友が沢山できてゾフィーはとても嬉しいです。
そんなマリーナ様は今は馬車に揺られ珍しくうとうとされています。(公爵家の馬車ではなく貸し馬車で向かっていますが、マリーナ様がお辛そうではなくて安心しました。)
実は後ろに続く王都行きの数台の貸し馬車には、公爵家に仕える護衛の方々が乗っているのですが…マリーナ様には内緒です。今日は伸び伸びと過ごしていただきたいなと思っています。
「寝顔もお可愛らしい…。」
おっと声が出てしまいました。…危ない。
素直に思いを伝えてくれるようになったマリーナ様は相変わらず高貴なお方ですが、なんだか以前より愛らしく妹が増えたかのような感情になってしまっています。
そんなマリーナ様の本日のお召し物は、いつもより装飾こそ控えめですがマリーナ様の髪色と合わせたオーダーメイドのワンピースと帽子がとてもお似合いです素敵です。いつもより巻かれて存在感ののある髪型もさすがマイヤー、お嬢様の可憐さが際立っています。
あ、王都が見えてきました。王都に降り立ちたいと当主様に初めてお願いしたマリーナ様。どうか1日楽しい日になりますように。
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「マリーナ様、到着しましたよ。」
ゾフィーに声をかけられはっと目を開ける。…楽しみすぎて寝てしまっていたみたい。
【真実の愛】の著者がポリーヌだと判明したのち、閃いたと元気よく挙手をしたエドワードが提案したのは
『元々行く予定だった王都観光にポリーヌも一緒に行き、噂の観劇を鑑賞しよう』という案だった。「これを機に仲良くできたらいいな」と笑っていたエドワード。観劇を鑑賞する理由は、客層や実際の声を把握できるからと言っていたけれど「ここまで来たらどんな話か気になる…。ロマンス小説を1人で読むのはちょっとなー。」とぼそっと言ったのが聞こえていた。
やり取りを思い出して少し苦笑いすると、一度深呼吸して馬車から王都に降り立つ。少し緊張しているのか胸がドキドキして手が震えてしまう。
勢いよく日差しが差し込み、顔をあげると大きな噴水とそれを囲うように人が行き交い沢山の出店で賑わっている風景が目に入った。街の喧騒に負けない大きな話し声に笑い声。こんなに活気ある都市だったなんて。マリーナの顔に思わず笑みが溢れる。
すると、「マリーナ!」と声が聞こえてそちらを向く。
すでに到着していた3人を見つけ早歩きで近づく。
手を振るエマとエドワード、少し気まずそうな顔をしたポリーヌがこちらを見ている。
「ごきげんよう!」
「…ごきげんよう。今日はよろしくお願いしますわ。」
「おはよう!私服かわいいー!」
「おう!」
挨拶を済ませ何かを察したエマがマリーナの後ろを覗き込む。
「あ、ゾフィーさん?!初めましてエマです。マリーナから話をよく聞いています!」
「は、はい!ゾフィーと申します。そんな話だなんて…とっても光栄です!」
きゃー!と賑やかに盛り上がっている。なんだかこの2人は系統が似ているのかもしれない。
「ふふっ。最初の行き先はエマが教えてくれたティーハウスかしら?」
「うん!朝ごはんがすっごく美味しいの!みなさん、ちゃんとお腹を空かせてきたかしら?」
「朝稽古から何にも食べてなくて倒れそう…。」
「私は前に一度エマとそこでお茶したわよね?朝ごはんは食べたことないから楽しみだわ。」
がやがやと向かう後ろ姿をゾフィーが満面の笑みで見つめる。
「ゾフィー?どうしたの?ほら、行きましょう。」
「はい!マリーナ様!」
たたたっとゾフィーはマリーナの横に行く。自然と笑みが溢れる。
「…マリーナ様。楽しいですね!」
「まだ着いたばかりじゃない。…でも、ふふっ。楽しいわね。」
2人はそう言って笑い合った。




