3 家族
沢山の方に見ていただけて嬉しいです。
ありがとうございます。
拙い文章ですが、更新頑張りますので
よろしくお願いします。
「おはようございます。お父様、お母様、カールお兄様、ヨハンお兄様。」
豪華な装飾が施された食堂に入り、挨拶を済ませ自分の席に向かう。
おはようと返事をもらい、軽く微笑みを返す。
西洋の文化に通ずる世界観の世界なのだろう。
映画やアニメでみたような長細い机には、朝から豪華な洋食が並んでいる。
今日もとても美味しそう!とよだれがでそうになるものの、マリーナの微笑みは崩れることはない。
侍女が紅茶を注ぐのを横目に見ていると、
「今日は殿下がいらっしゃる日だな。くれぐれも粗相がないように。」
とお父様に声をかけられる。
顔を向けると、穏やかな表情をしながらも真っ直ぐ私も見つめる藍色の瞳がこちらを射抜く。
「もちろん存じております、シャルロッテ家の名に恥じぬ接待をさせていただきますわ。ご安心くださいませ。」
私と同じ髪と瞳の色を持つお父様は、シャルロッテ公爵家の現当主であり見事な手腕で領地の治安を維持している。発言こそ少ないが、その一言一言に風格がある。マリーナの尊敬する存在の一人だ。
淡いブロンドの髪をまとめ、ヘーゼルの瞳でこちらを優しく見守っているのはお母様。お父様譲りの瞳を持つ私とは対照的に、垂れ気味の瞳は全く異なる魅力を放っている。
「園庭でお茶会だろう?今日は冷えるから、暖かい服装で行くんだよ。」
そう食事を切り分けながら発言したのは、6歳上の長男のカールお兄様でありシャルロッテ公爵家の次期当主だ。お父様や私と同じ色の髪と瞳をもつお兄様は、あまり笑うことはないがいつも優しい言葉をかけてくれる。時折見せる優しい笑顔に、侍女のゾフィーがグゥッと声を出しているのはここだけの秘密だ。
「今日は俺も参加することにしたから。久しぶりにマリーナとみんなでお茶できるのが楽しみだなあ。」
そうお母様譲りなヘーゼルの瞳を揺らし、垂れた目尻をさらに垂らしながら笑いかけてくれるのは、次男のヨハンお兄様。
歳の差が2歳ということもあり、小さい頃はよく相手をしてくれていた。ヨハンお兄様と関わったものは皆、一見トイプードルのような人懐こい風貌に心を絆されるが、稀代の天才と称される宰相の叔父様を彷彿とさせる才を学園で発揮しているのだとか。油断ならないわと、マリーナは小さい頃から対抗心を燃やしていた。
「カールお兄様、ご心配ありがとうございます。気をつけますわ。」
「ヨハンお兄様も参加していただけるのですね。とても楽しみでございますわ。」
それぞれ返事をするとマリーナは紅茶を一口飲み、食事を小さい口に入れられるよう切り分ける。
今日は久しぶりに婚約者の第一皇子、デューク・トスカーナ様が我が公爵家にいらっしゃる日だ。
3ヶ月前に高熱で倒れた翌日から大量の花束と手紙とプレゼントが送られてきて、回復しましたと先月お礼の手紙を送ったところ殿下から公爵家に会いに行きたいから招待してほしいとお願いされたのだ。
(そこまでしなくても、きちんと婚約者として責務は真っ当いたしますのに。)
……これは政略結婚なのですから。
大好きな家族とその家族と共に誇りに思うシャルロッテ家のために生きると今まで頑張ってきたのだ。自分の我儘で殿下との婚約をどうこうする気持ちは毛頭ない。
(恋愛することは、きっとこの世界では叶わないだろうし…。私の胸の中にはまだ彼の記憶が残っているわ。)
真依が彼と過ごした5年間は確かに幸せを感じた大切な時間だった。たとえ最後の2年で苦しく泣いた記憶が多かったのだとしても、それもまた思い出なのだ。
私にはこの記憶があれば大丈夫、そう心の中で呟き朝食に集中した。