23 食堂
今日はなんとエマがランチに誘ってくれた。マリーナは自然と顔がにやけてしまいそうになるのを抑える。エマがぜひエドワードも一緒にと声をかけてくれて今は3人で食堂に向かって歩いていた。
公爵家ではモーニング、アフタヌーンティー、ディナーの三食が当たり前だけど学生の間は頭も体力も使うからランチもあるのだそう。確かに、すぐにお腹が空いちゃうわとお腹に手を当てる。
「2人はどこの食堂で食べているの?」
エマから質問される。
食堂は学園内に3つあり、昔貴族階級ごとに分けられていたという。もうその制度は廃止しているものの暗黙のルールがあり生徒たちはそれぞれの食堂に向かっている。エマはもしかしたらまだ知らないのかもしれない。
「いつもはすぐ近くの食堂に行っているの。よかったらエマさんがいつも使ってる食堂を教えてほしいわ。他の食堂にも行ってみたくて。」
上級貴族ばかりの空間では気をつかうかもとそう提案する。
「はい!」
とエマが返事をして案内してくれる。
「殿下とお兄さんはいいのか?」
横からエドワードに聞かれる。
この1週間、食堂まではエドワードと行くもののデュークとヨハンと食事をとっていた。いつも食堂にエドワードと到着する度に2人が怖い顔をしてエドワードを見てるのを思い出して苦笑する。
「約束しているわけではないからいいのよ。…エドワードは大丈夫なの?いつも一緒の方達は…。」
エドワードはつくなりふらふらといつも違う生徒の席に合流して食べていた。最初は気を遣ってくれてるのかと思っていたが、どうやら友達が多いのだ。
(学園ではいつも私に付き纏ってるはずなのに、いつの間に友達を作ってるのかしら。)
首を傾げる。
「俺は問題なし!みんな稽古で会えるから。」
「稽古?」
「うちの敷地内でうちのお兄さんが剣の稽古を昔からやってるんだ。そこに通ってる名家の子息たちなんだよ。誰かしらいるから一緒に食べているだけ。」
「それならクラスにもいるの?友達。」
「いるよ、普通に。」
ガーンと心の中で鳴り響く。怖がられてる仲間だと思ってたのに…。横でみんな群れたがらないからなーと笑っている。
そうこうしていると食堂に到着した。周りの視線を感じながら前へ進む。エドワードは気にしていない様子でメニューも違うのかな、と呑気に喋っている。
メニューを見上げる。
(ラ、ラーメンがある!うどん?!お、おにぎり??!なにここ!天国じゃない!)
普段使っている食堂は貴族の権力誇示らしい肉をふんだんに使った料理が多い。嫌いではないけれどもうちょっとバリエーションを増やしてほしいと思っていたところだった。
「ねぇエマさん。ここにある食事はどれも見慣れないのだけれど、とても美味しそうだわ。エマさんはよく食べていらっしゃるの?」
平静を装いながら聞く。
「はい。このあたりのメニューは平民も真似をして食べれるので私も小さい時からよく食べていました。」
やっぱり憧れは白パンやお肉でしたけどね、と笑うエマ。
「…そうなのね。楽しみだわ。」
(なぜ今まで知らなかったのかしら…!下級貴族の方達はこんなに美味しいものを食べていただなんて!…王都に行ったらもっと他のメニューもあるのかしら、行ってみたいわ!)
マリーナは1人大興奮で何を食べるのかメニューを凝視して考えていた。