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2話 ピックアップ2つはやっぱり死亡フラグ

 リセットマラソン。通称リセマラ。

 主にゲームアプリにおいて、新規ユーザーに与えられる特典を利用してより有利な状態でゲームを始めるために何度も何度もアプリのインストール・アンインストールを繰り返すことを指す。


 そしてリセマラともっと密接に関連する要素。

 このリセマラという行為に意味を持たせるコンテンツ。

 それが〝ガチャ〟だ。


「くそっ! お前じゃないんだよっ! ちっ、またアンストか……」


 俺、御崎怜太みさきれいた21歳はそんなリセマラに病的なまでに取りつかれた愚かな大学生だ。

 そんな俺は正に、ゲームアプリ『スキルコネクトオンライン』略して〝スキコネ〟のリセマラをしている真っ只中である。


 このゲームはその名の通り、無数に存在するスキルを組み合わせて敵と戦う王道RPGなのだが、そのスキルにも当然ランク差――強さの格差が存在する。

 その中には当然必須級スキルとも呼ばれる、持っていなければ強敵とまともに戦えないスキルもあるわけだ。

 そのせいでガチャはゲームを楽しむ上で極めて重要な要素であるわけなのだが……


 数日前のアップデートで、今まで最も強かったスキルの一つを過去のものにする超強力なスキルが登場したので、俺はこれが欲しくてずっとリセマラを繰り返しているのだが……


「確率どーなってんだよ! ガチャ運悪すぎだろ俺ぇ……」


 見ての通り結果は全く振るわない。

 これでそろそろ100回目になるだろうか。

 俺は先ほど適当なキャラメイキングで生み出したばかりのキャラを見て舌打ちをし、アプリを強制終了させた。

 くそっ、ゴミスキルの方ばっかり引きやがって! そんなんじゃこの世界(ゲーム)でやっていける訳ねえだろうが。

 ったく。ハズレキャラは見ているだけでもイライラするけれど、確率アップしている二つのスキルのうちハズレのほうばかり出るのは本当に許せん。


 ……あぁ。ちなみにだが、俺はこのゲームをやるのは初めてじゃない。

 メインアカウントは別にあり、数いるプレイヤーの中でも上の下に位置するくらいの強さはある。

 だが、このゲームは基本的に新しく登場するスキルが強すぎて、そのスキルなしに長くやっているプレイヤーを、新スキルを手に新しく始めたキャラクターがあっさり追い抜くなんてことも珍しくはないのだ。


 だから俺はなるべく課金せずに上位の環境を楽しむために、こうして環境を一新する新スキルが登場するたびにリセマラを繰り返して楽しんでいるというわけだ。

 強いキャラほど愛着がわくので、過去のものとなったキャラにもう用はないってわけさ。


「……ってそろそろバイトの時間じゃん。あぁ、行きたくねえなぁ……」


 時計を見ると、そろそろ出勤しなければいけない時間となっていた。

 リセマラに勤しみすぎて満足に睡眠がとれていないために、体が重く力が入らない。

 とは言えバイトをしなければ生活費も課金する金も得られないので仕方ない。

 ひとまず体を起こし、若干乱れた髪を雑に整えてから家を出た。


 移動手段はバイク。

 2年前に中型の免許を取ってから乗り回している愛車だ。

 体がダルくても、コイツに乗って風にあおられれば少しは気分もすかっとするもの。

 目的地がバイト先じゃなければなおリフレッシュできたことだろうな……


 あぁ、それにしてもスマホを開きたい。

 早くリセマラの続きをしたい。

 これだけ時間を割いたんだ。意地でも出さないと落ち着くことなんてできるわけがない。


 交差点でバイクを停止させている最中、スマホが入ったポケットに何度も手が伸びそうになるが、さすがにそれは越えてはいけない一線だ。

 っしかし、この赤信号長すぎだろ。

 あぁ、イライラする。落ち着かねえっ!


「――っし!」


 ようやく交差点の信号が青になった。

 俺はスマホゲーで鍛えた反射神経で速攻ハンドルをひねる。

 さて、今日はどこでリセマラの時間を作るかな。

 そんなことを考えながら俺の愛車が交差点の中央に差し掛かったところで、


「――ん?」


 キーッと甲高い音が耳に叩きつけられた。

 思わず俺は左へ振り向いた。

 俺の視界には、赤色が映っていた。


「……ぇ?」


 気づいたら俺は、宙を舞っていた。

 あれ。俺は、なにを? バイクは?

 ハンドルを握る感覚は既にない。

 真っ白になりかけた視界の端で、愛車は俺を乗り捨てて遠くへ飛んでいた。


「――っあ!?」


 時間が止まったのかと思うくらいゆったりとした世界は、再び動きを取り戻した。

 気づいたら目の前にコンクリートの海が広がっていて、俺はそこに頭からダイブを決める寸前だ。

 ヘルメットは――意味ねえなこりゃ。

 直感的に分かった。これは無理だ。


「――っが!?」


 その予想は正しく的中し、体の後ろ側が凄まじい痛みに襲われると共に、俺は肺に溜まっていた空気を吐きだして声にならない声を上げた。

 遠のく意識の中で俺はようやく自分が事故にあったのだと理解した。


 全身死ぬほど痛いけど、もはやそれを痛いと感じる部分すら死んでいるのか、不思議と頭が良く働く。

 ぼんやりとした視界の端に前面が大きくへこんだ赤色のスポーツカーのようなものがあり、おそらくアレに撥ねられたんだろうなと察せたのもそのせいだ。


 あぁ、よく見たら他にも誰かいるじゃねえか。

 ありゃスーツ――じゃなくて学生服だな。

 男女数人のグループがまとめて轢かれちまったのか。


 かわいそうにな、って一瞬思ったけど、俺もめちゃくちゃかわいそうだったわ。

 俺の記憶では、信号は確かに青だった。だけど、青に切り替わる前からアクセルに手をかけていて、青になった瞬間発進した。

 だからきっと、若干の信号無視覚悟でギリギリを攻めてスピードを上げてきた奴に……


 あぁ、本当にツイてねえなぁ……

 運がないのは、どうやらガチャだけの話じゃなかったようだ。

 どうせならピックアップすり抜けにちなんで車もすり抜けてくれたらよかったのに。

 そんなくだらないことを思いながら、俺の意識は限界を迎えてそのまま闇の中へと落ちていった


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