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19話 共犯関係

「へぇー、ヴェルも家追い出されちゃったんだ! 大変な目にあったねえ」


「お互い様だろ」


 リオンにこれまでの経緯をざっくり説明すると、なにか含みのあるような顔をしながらうんうんと頷いた。

 とりあえず今は馬車があった場所から離れ、リオンの案内で洞穴のようなところで隠れている。

 なんで俺まであのハックという大男から逃げなきゃならんのかって感じだけど、どちらにしろ行く当てもなかったしこれはこれで悪くないのかもしれない。


「それで、キミはこれからどうするの?」


「どうするって……とりあえず町に行くつもりだが」


「うんうん、まあそうだろうね――で、お金はどうするの?」


「……金、か」


「分かっているか分からないけど、ぼくらみたいな子供が働ける場所なんて、どれもロクなものじゃないからね」


 なんというか、急に現実的な問題に戻ってきたな。

 確かにリオンの言う通り、子供が働ける場所――いや、子供が働かされている場所なんて、お世辞にも環境がいいとは言えないだろう。

 そんな中でも、お金を手に入れられなければ俺は死んでしまう。


 これが家出だったらもう少し準備とかできたと思うんだが、生憎と一方的かつ理不尽に追い出されてしまった身だ。備えなどあるはずもない。


「……そこで提案がある」


「提案、だと?」


「――ぼくと、組まないか?」


 その時、リオンの美貌がニヤリと笑った。

 これは悪いことを考えている眼。同時に何かに期待する目だ。

 なんというか、手のひらの上で転がされているようで腹立たしいが……


「ぼくとキミはお互い身寄りのない孤児だ。このまま何もしなければ野垂れ死ぬか、酷い目に合うのが容易に想像できるだろう?」


「まぁ、な」


「だから、ぼくがこれから行く街での生き方を教える。綺麗なやり方じゃあないけど、そんなの気にしていられないだろう?」


 俺は無言で頷く。この際手段など選んではいられないだろう。

 だが、その提案を受け入れる前に、絶対に確認しておかなければいけないことが一つある。

 それは勿論、対価の話だ。


「それでリオン。お前は俺に何を望むんだ?」


「――力。ヴェル、キミの力を借りたい」


「力……?」


「そう。力。戦っているところは見たことないけれど、相当な強さを持っているのは見れば分かる。そしてこれから先の逃亡生活で何事も起こらないなんてことはあり得ないだろう。正直ぼくはそこまで闘いが得意なわけじゃないから、ね」


「いやちょっと待て。俺だってそんな別に強くは――っ!?」


 強烈な殺気!

 俺は即座に【桔梗】を抜き――いや、間に合わない。

 剣を抜くよりも先に回避行動だ。


 俺の直感はそう判断し、地面を転がるように背後からの攻撃を回避した。

 次に体内から魔力を足へと送り、活性化。

 強引に体勢を立て直し、真正面から俺への奇襲を失敗して無防備となったその体に剣を――


「――ぐっ!」


「――何のつもりだ?」 


「……流石。やっぱり手を出さなくて正解だった」


 空中で無防備な姿をさらしていたリオンの体を一瞬で組み伏せ、その首筋に刃を置いた。

 リオンは苦々しい様子で顔を顰めるが、すぐに満足そうに口角を上げる。

 これ以上攻撃は仕掛けてこないだろうと判断し、俺はリオンを解放してやった。


「っ、いたたたっと。ごめんごめん、直接確かめたくて攻撃しちゃった」


「心臓に悪いからやめてくれよな本当……」


「あははっ、その割には随分余裕そうだったけど?」


 バカ言え。こちとら平和をこよなく愛する元日本人だぞ。

 フーリさんとの地獄の修行と今日の連続トラブルでだいぶ図太くなったとは思うが、争いごと全てに慣れたわけじゃないんだからな。

 リオンは全身に付着した砂埃を軽く払うと、そのまま俺に近づいて右手を差し出してきた。


「どうかな? ぼくに協力してくれれば、ぼくの持っている知識と情報を教える。同じ追われる者、失った者同士、手を組まないか?」


 俺はその手を、とることにした。

 これは思考放棄の行動なのか。はたまた運命の出会いと決断なのか。

 その答えは、まだ分からない。


「――よろしく」


「うん! よろしく、ヴェルマーク!」


 その時リオンが浮かべた満面の笑みは、先ほどの邪気と狂気を一切感じさせないほど輝いていた。

 俺のもしかすると口角が吊り上がって気味の悪い顔をしているかもしれないな。


 でも、繋いだばかりの俺たちの手は、壊れてしまいそうなくらい小さく、細かった。






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