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18話 失っている者達

「――よし、アイツら行ったみたいだね。というわけではじめまして! 僕はリオン、よろしく!」


「何がというわけで分からないけど、俺はヴェルマーク――だ」


「うん? とりあえず長いからヴェルでいいよね!」


 うっかり家名まで言ってしまいそうになった口を押さえつけると、リオンと名乗った少年は不思議そうな顔をしつつも馴れ馴れしく愛称で呼んできた。

 そこまで悪い気分ではないが、それはどちらかと言えば戸惑いの方が勝っているからだろうな。


「見た感じ随分と小さいけど、何歳なの?」


「今年で7歳だが、大きさはお前もそんなに変わらないだろ」


「へぇー7歳か! ならぼくの方が2個上だね!」


 つまり9歳って訳か。

 地球で言えばどちらも小学生でただのガキでしかないんだが、お互いの見た目とこの状況からしてそんな感じが全然しないな。

 リオンもよく見ると腰に短剣を忍ばせているし、普通の子供とはお世辞にも呼べないだろう。


「で、リオンだったか。お前はなんであんなイカつい男に追われてるんだよ。あいつ物凄く苛立っていたぞ」


「いやー、それがさ! 聞いてよ! アイツったらふざけててさぁ……」


 そこからリオンが語り出した内容は、何故そんなに明るく語れるのか不思議でしかないくらい闇が深い内容だった。

 まず、リオンは3年前に父親が蒸発してしまった捨て子だということ。

「お前の顔を見ているとあの女(・・・)を思い出して虫唾が走る」というのが父親の口癖であり、言葉こそ濁しているがその女がリオンの母親であることは理解できた。

 リオンの父親は常日頃から顔を見たことすらなかった母親のことを深く憎悪しており、よく似た容姿を持つリオンはずっと疎まれ続けてきたそうだ。


 ただ、リオンを家から放り出すのではなく自分が出ていく選択を取ったのは最後の情のつもりなのだろうかと想像した。


「それからハック――あぁ、さっきぼくを追ってきたあの大柄の男のことなんだけど、そいつの下で裏の仕事をするようになったんだ」


 どうすればいいのか途方に暮れていたリオンを拾ったのがあの男だった。

 ハックはリオンを使える(・・・)と判断し、自らの手駒として使うべく様々な技術を教え、盗みや暗殺など様々な汚れ仕事をやらせた。

 その目論見は見事的中し、リオンは裏世界においてたぐいまれなる才能を発揮。その技術は着々と磨かれていった。


「結構すごかったんだよぼく! やらなきゃやられるって思って一生懸命頑張ったら割と何でもできちゃったんだ!」


「お前……よくそんな目にあって笑ってられるな」


「んー、泣くと煩いって殴られてきたからもう泣き方も忘れっちゃったんだよね……でもおかげで辛くて苦しいって気持ちもなくなったかな!」


 ……なるほど、コイツはメンタルが強いんじゃない。

 もうとっくに、壊れてるのかよ。

 言うなれば殺戮人形。地獄のような現実から心を守るために造られた人格。

 納得したくはないが、それならば一番頷ける。


「でさあ、あんなに頑張ってきたのにある日突然『お前を嫁に出す』なんてふざけたこと言われたんだよ!?」


「……は?」


 9歳で嫁に出す、だと?

 一体どこのロリコンだよと一瞬頭を抱えたが、自分の子でリセマラをするようなクズ貴族がいるくらいだ。

 己の地位とカネに物を言わせてその変態趣味を果たしている奴がいてもおかしくはないか。

 ……って、あれ? コイツ男じゃなくて女なのか! 天然ぼくっ娘なのか!?


「何の冗談かと思ったら、本当に豚みたいな貴族のおじさんに合わせられてさ……これでもぼく、いつかはハックのところから逃げ出して自由に生きるって夢があったから、流石にこんなところで一生を捧げたくはなくてね……」


「だから予定を早めて逃げ出してきた、と」


「そういうこと! まあその貴族はアイツと懇意にしていたみたいだから、ブチ切れて追いかけられてるんだよね……」


 激レアキャラを目の当たりにした興奮もかなりのものだったが、それ以上に話が重すぎて何というか一周回って冷静になっている気がする。

 普通こんな散々な目にあったら人生に絶望して全てを諦めているもんだと思ったが、コイツはまだ自由を夢見れていたのか。

 まともな人格と破綻した人格が混じったって感じなのか?

 なんというか得体のしれない不気味さを感じるが、顔には出さないでおく。


(……こいつ、楽しそうに会話しているように見せかけて一切隙がねえ。もし俺が対応を誤ったらすぐに殺せる。そう言われている気になるくらいには)


 剣を教わった者として理解してしまった。

 ただ適当に立っているように見せて、実際はすぐに動ける体勢を維持している。

 時折小さな動作を起こしつつも、視線は絶対に俺から逸らさない。


 なにより纏っている雰囲気がヤバイ。

 目には見えないが、殺しに対する躊躇いや怯えと言ったモノを一切感じないんだ。


「なるほど、そういうことなら頑張って逃げてく――」


「ぼくのことは話し終わったから次はキミの番だよ! さ、どうしてこんなところにいたのか教えてよ!」


「あ、いや……」


「……そこの馬車、キミがやったんでしょ? ここら一帯の裏社会はハックが仕切っているんだ。だからもし、キミがお偉いさんに後ろめたいことしちゃったなら――消される(・・・・)よ」


「――っ!」


 背筋がぞわっと震え上がる。 


 死ぬ(・・)よ?


 そう直接耳に叩きつけられたような気分。

 こういう奴が自分の情報を与えた相手を逃がすはずもない。

 同時にそれを深く忠告されているかのようで……


「――今更だけど、場所を移そうか! いつまでもここに長居するのは危険だしね」


「……そうだな」


 冷や汗を拭いながら、頷く。

 真正面の戦闘ならば負けない自信があるが、コイツにそれが通用するか分からない以上ここは大人しく従っておこう。

 なんというか、バッドイベントが連続しすぎて脳の処理が追い付かないな本当……






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