生誕祭
聖堂の外へ出て真っ直ぐにのびる道を歩き、敷地入口の格子扉前に行くと、すでに何人かのシスターが待っていた。
クランフェリアは格子扉を大きく開放しながら、彼女達を敷地内へと迎えた。
「おはようございます、三位巫女神官様。今日はよろしくお願いいたします。」
シスター達が挨拶をした。
「こちらこそよろしくお願いしますね。お待たせしてすみません。」
「三位巫女神官様、こちらの殿方は?」
一人のシスターが俺を見ながら訊いた。
「中央部大聖堂から新しく派遣された、わたくしの補佐官となるヒツギ様です。わたくしの身の回りの世話も彼がしてくれます。」
身元のわからない記憶喪失の男だと素直に言ってしまうよりは、関係者として通した方が都合がいいだろう。
中央部の大聖堂や他の巫女神官達に対しても、後でいろいろと口利きや根回しができるのかもしれなかった。
クランフェリアは宗教的に神様に最も近い存在の一人なだけあって、シスター達は疑うこともなく納得した。
「七人の巫女神官には序列があって、わたくしは第三位を冠しています。それゆえ、シスターや信者の方々からは序列と巫女神官を合わせて呼ばれています。」
聖堂へ戻る道すがら、こっそりと教えてくれた。
ということは、補佐官である俺も公の場ではそれに倣って彼女のことを呼ぶべきなんだろう。
シスター達も加えて礼拝の準備を整えると、信者や街の人々も続々と聖堂敷地内へ集まってきた。
俺は聖堂の入り口で来訪者達を誘導しながら観察をする。
人が多いので何か問題が起きた時は率先して対処しなければならない。
聖堂の身廊に並ぶ長椅子が埋まり、礼拝の時間になると開始を告げる鐘の音が鳴った。
シスターや街の人達は黙想を始め、その間に俺はクランフェリアの元へと静かに向かう。
彼女は聖書台に立って聖書を開き、ゆっくりと言葉を口にした。
「主と神鎧と聖霊の御名において、聖なる教に悠久の栄光と繁栄を!我らに祝福と加護を!」
聖堂に差し込む光と相まって、大衆に語りかける少女の姿はとても神々しく見えた。
祈りの言葉を済ませたあと、シスターや信者達とともに讃美歌を歌い始めた。
聖堂内に楽器の伴奏に合わせた合唱が響き渡る。
クランフェリアの歌声はよく響き、聴き惚れてしまいそうだった。
何曲か歌い終えると彼女は少し休みつつ、聖書の一部を朗読し始めた。
その間、俺は台車を引いて献金用の袋を長椅子の端に座る人達へ渡していく。
この袋には信者や街の人々による寄付を入れてもらうことになっている。
気持ちだけの少額でも良いし、金を入れなくても良いらしい。
それを次々と隣の人に回して最終的にまた俺が回収をする。
そして聖堂をぐるりと一周して、再びクランフェリアの近くへ戻ろうとした時のことだった。
聖堂の中にいてもわかるほどの、大きな爆発音が響いた――