桜まみれ
桜まみれ
散った
花びら
風に
遊ばれ
すべて
日だまり
雨だまりに
落つ
新緑の季節を 肺いっぱいに迎えてもなお ぽつりと記憶のどこかで 桜を思い出すのは それだけ現実の桜に 心残りがあるからなのだろうか 満開のバラの香り ツバメが飛び交う青空 久しぶりに焼いたシフォンケーキ 宵に浮かぶ朧の満月 気をひくものは数多あるというのに 桜色の儚さだけが理由でよみがえってくるというなら それは間違いで記憶違い なんの心残りがあるというのだろう
散った
花びら
風に
遊ばず
すべて
日だまり
雨だまりに
浮かぶ
きっと私の中に桜があって いつも私はそれを見上げていて 私の中で永遠に咲いていて 私の中で永遠に散っていて 散った花びらに埋もれながら その冷ややかな肌寒さを保っている
いつまでも忘れずに
どこまでも桜にまみれて
そのまま浮かんでいたい
桜まみれの
春を越して




