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異世界恋愛短編集

メイドと王子様は転生してもメイドと王子様でした

作者: 来留美
掲載日:2020/10/16

楽しくお読みいただけましたら幸いです。

 これはある国の昔、昔、大昔の話です。


 その国では王子様がいました。


 王子様はとても優しく、みんなに好かれる王子様だったのです。


 彼女1人を除いて。



「おい、(もも)。早くこっちに来い」

「分かりました。少々お待ち下さい。私にはたくさん仕事があるのですよ」


 私は王子様のメイドの(もも)です。

 本名は(もも)じゃありませんよ。

 この、俺様な王子様につけられた名前なんです。


 私が桃色の頬だったので(もも)になったそうです。


 さっきも言いましたが、彼はみんなに好かれる王子様なんです。

 私の前ではすっごく俺様ですが、人前に出ると、それはもう完璧な王子様なんです。


「はい、お呼びでしょうか?」


 私は仕事を片付け彼の元に近寄ります。


「今日は肩」

「なっ、またですか? 私じゃなくて、ちゃんとプロにしてもらった方が疲れも取れますよ」

「早く」

「承知しました」


 私は彼の肩を揉みます。

 彼は何かと私に命令をするのです。

 私じゃなくてもいいのにです。


 そんな彼と私が出逢ったのは、まだ私達が幼い子供の時でした。

 私は1人で生きる為に、靴磨きをしながら稼いでいました。


 そんな私の前に現れたのが小さな彼でした。


「お前の名前は今日から(もも)だ。俺と一緒に来い」


 その日、私は彼に拾われました。

 そして私は一生、彼に尽くすと誓いメイドになりました。


 私の前でだけ、彼はいつもの王子様ではありませんでした。

 彼は私を彼専属のメイドにしました。


 彼の身の回りは全て私が任されました。

 それから月日が経っても、私と彼はメイドと王子様の関係です。


 幼かった私達は、すっかり大人になりました。

 それでも私達の関係はメイドと王子様です。


 それから、私は立派なメイドになりました。

 そして彼も立派な王子様になりました。


 私と彼は当たり前ですが身分は全然違います。

 それでも彼は私を、ちょっとしたことで呼びつけるのです。


 そして私に言います。


「やっぱり桃といると落ち着く」


 私の頭を撫でながら。


 彼は王子様としていろんな物を背負っています。

 それは彼が生まれたときからです。


 彼には心の安らぎがほしいのでしょう。

 私がその安らぎになれるのなら私は喜んでなります。


 彼は、生きるのがやっとの私をあの日、助けてくれたのですから。


「なあ、(もも)


 彼は私の頭を撫でながら私を呼びます。


「はい、どうなさいましたか?」

「俺、もうすぐ結婚する歳になるだろ?」

「もう、そんな歳になられたのですね」

「結婚してもお前は俺の傍から離れないよな?」

「私はあなた専属のメイドなので、ずっと離れませんよ」

「それならいいか。結婚しても」


 彼は、結婚が何を意味しているのか分かっているのでしょうか?

 結婚すれば、いずれは子供ができて、私のことなんて忘れていくことを。


 それから少しして彼に婚約者ができました。

 隣の国の御令嬢です。

 気品溢れる美しい女性でした。


 御令嬢は彼と一緒にいたいと申し出、このお城に住むことになりました。

 御令嬢は彼から離れようとしませんでした。


 私は彼と2人きりになることが困難で、彼のことが心配になりました。

 何故なら彼は、息抜きができていなかったからです。


 そんな毎日を過ごしていた彼はとうとう、彼女から逃げて私の部屋へ来ました。


「ここは、あなた様が来るようなところではありませんよ。早く、お部屋へお戻りください」

「無理。疲れた。(もも)、いつもの」

「分かりました。終わりましたら部屋へお戻りくださいね」


 私は彼に頭を撫でられます。


「やっぱり落ち着く」


 彼は満足したのか、少しして自室へと戻っていきました。




 それから一週間ほどたった日、御令嬢は一度、自国へとお帰りになりました。

 その日はずっと、彼は私を離してくれませんでした。


「今日お前は何もしなくていい。俺の傍にいろ」


 私は彼の言葉の通り、傍から離れませんでした。

 私の傍で、彼は忙しそうに仕事を片付けていきました。


 仕事が落ち着いたので私は席を立ち、ドアの方へ歩きます。


「何処に行くんだ? 今日は俺の傍から離れるなって言っただろう?」

「少し休憩しましょうか? 私がお茶を淹れて参りますので」

「いらない。俺はお前だけでいい」


 彼は真剣な眼差しで私に言いました。


「私はあなたのメイドですよ? メイドはあなたの為に動きます」

「どういう意味?」

「そのままの意味ですよ。あなたが傍にいろと言えば傍にいます。あなたの命令は絶対です」

「何それ? それなら俺の言うことを何でも聞いてくれるんだな?」

「はい。それがあなた専属のメイドの仕事です」

「そう。それじゃあそのまま動くな」

「はい」


 彼は私へ近づき私の胸元のリボンを外します。


「なっ、何を?」

「動くな」


 彼が何を考えているのか分かりません。

 私に何を求めているのか分かりません。

 私は彼が怖くなりました。


「震えてる」


 彼はそう言って私の手を握ります。


「ごめん。俺は(もも)が、、、」


 彼は苦しそうに顔を歪め、言おうとした言葉を飲み込みました。

 そして彼は、私の聞きたくない言葉を口にしました。


「もう、(もも)を俺の専属のメイドにするのはやめるよ」


 私の体は固まりました。

 彼の専属メイドをやめたくないと体が叫んでいます。


 嫌なのに、私は彼の命令に背くことはできません。


「承知しました」


 私は、やっと動く体で自室へと戻りました。



 それから彼は結婚をしました。

 それはそれは、盛大な式でした。


 私は彼が結婚した日にメイドを辞め、小さな村に引っ越しました。

 村の人達はとても優しく、私はすぐ村に馴染みました。


 この小さな村にも王子様の噂は流れてきました。

 王子様には赤ちゃんができたそうです。

 元気な男の子だそうです。


 私はその日の夜、涙を流しました。

 私は今頃、気付いたのです。

 王子様が好きだと。


 でも、もう遅かったのです。


 私は彼のことを忘れようと過ごしました。

 すると、王子様への気持ちは少しずつ失くなっていきました。


 そして私も結婚をしました。

 可愛い女の子を産みました。

 私は、夫と子供と幸せに暮らしました。


 そして、私の人生は終わり、何十年も何百年も過ぎていきました。



 誰も私達のことなんて知らない時代。




「ハッピーハロウィン」


 女の子達が叫ぶ。

 私はハロウィンパーティーに参加中。

 みんないろんな仮装をしている。


 ナースに医者、アリスにウサギ、女性ポリスに警察官、巫女に神主。

 そして私はメイド服。


(もも)は今年もメイドなの?」

「そうだよ。お気に入りなの」

「でも毎年思うけど似合ってるよね」

「そう? 私、前世はメイドだったのかも」


 友達とそんな話をしていたとき、私は1人の人に目を奪われた。

 彼は王子様の服装をしている。


 彼も私と同じで私を見ている。

 私達はお互いに近づく。


 自分でも分からないが、何故かドキドキと鼓動が早くなっていた。


 彼の目を見つめる。

 彼も私の目を見つめている。

 目が離せない。


「「やっと会えた」」


 私達は口を揃えて言った。

 私達は一度も会ったことはないはず。

 なぜこんな言葉が出たのか分からない。

 彼も自分の言葉に驚いている様子だった。


「君の名前は(もも)?」

「はい。なぜ私の名前を?」

「分からないけど君を見たとき、頬っぺが桃色で名前は(もも)かなって思ったんだ」

「今時、そんなナンパのセリフ言う人いないですよ?」

「ナンパじゃなくて。俺は君を昔から知っているような感じがしたんだ」

「私もそんな風に感じました」

「俺達って出逢う」


「「運命」」


 また口を揃えて言った。

 私達は二人で笑いあった。



 メイドと王子様は転生しても偽物のメイドと偽物の王子様でした。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。

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