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5話 銀喜多緋という者

 それが、緋との出会い。とてつもなく平凡で、それでも、僕にとってはかけがえのない思い出。僕の中で、きらびやかなもの。一番と言っていいほど、温かい記憶だ。

 

 あれから、僕は緋とともに学校生活を送ることになった。

 その過程で、一緒にこの陸上部に入らないかと誘われて、陸上部に来た。

 陸上部は、僕にとって、とっても居心地が良かった。先輩はみんな優しく、同級生も、みんなこんな僕に良くしてくれた。これら全て、緋のおかげだ。緋があのとき声をかけてくれたからこそ、今の自分が、この居場所がある。この恩を僕はどう返せばいいのだろうか。


 そんな静かで、温かいモノローグは、氷を持って帰ってきた緋の姿を見て、心のうちにしまっておく。こちらに駆けて来た緋は、無言て氷を渡してくれた。優しく称える笑みで。

 本当に、緋の表情筋はどうなっているんだと思うほど、いつも笑っている。微笑している時や、満面の笑みの時など、程度はあれど、本当にずっと笑っている。真顔の緋なんて見たことがないくらいだ。いや、あるのだろうが、それほど、笑顔を絶やさず、また笑顔が似合う人だ。そんな緋に、僕はいつも尊敬しているし、一番信頼している。

 僕だって、笑顔が似合う人になりたいと、緋を見る度思っていた。


 僕の一番の親友で、僕の目標。それが緋だ。


「あ、そういえば。蕾」


 唐突に緋がそう言って、言葉を紡いだ。


「この前、ていうか今日の昼にさ、他クラスの女子から、蕾ってどんな人なの?って聞かれてさ。まあそん時は、俺が蕾がどんなやつか思ってることを話してたんだけどさ。なんか、その子の真剣に聞いている表情見て、あ、これもしかして、脈アリなんじゃないかと思ってさ、蕾に。だから今度、紹介するよ、その子のこと」


 ただ、緋の口から紡がれていった言葉は、僕が想像していたものよりも遥かに、信じがたく、驚くべき内容だった。


「…い、いや。…いいよ。それに、なんか信じがたいし。僕なんかに興味を持つ女の子なんて、いるはずないし、それに……。もしそうだったとしても、何かありそうで…。自身、ないよ」


 今までこのような経験なんて、なかったから。そもそも、緋のように、同性で興味を持ってくれる人すら、今までなかったというのに。そんな僕が、興味を持たれるわけがないのだ。況してや、女の子にだなんて。いや別に、緋が嘘をついてるとは思っていないが。

 もしそうだったとして、僕は、うまくやれるだろうか。その子に直接会ってみて、その子に軽蔑されないだろうか。緋が思っているような自分になれるだろうか。

 そのすべてが不安で堪らない。そして、そう思ってしまう自分が、とてつもなく悔しい。


「そんなことないって。俺は、その子に蕾のありのままを話したつもりだぞ」


 緋は僕の思っていることを見透かしているように、そう続けた。


「それに俺は、蕾はもっと自信持っていいと思うぜ。蕾、イケメンなんだし」

「そんな事…っ!…一番、緋には言われたくないな。自分もイケメンなくせに…」

「まあ、それは否定しないけどさ」

「…そこはもっと謙虚になろうよ」

「はは。…まあでも、俺は蕾が思っているような心配事にはならないと思うな。その子も、蕾のこと少しは理解してたみたいだし。いい子だったよ」


 緋は、諭すように僕の背中を押してくれた。……本当に、緋には叶わないな。


「…緋が、そこまで言うなら…、一度、あってみるよ」


「そうか…!うん、そうしてくれ。はは」


 またもや、緋の笑みが一層に深まる。僕のことを思ってくれて、本気で笑ってくれている。なんて、嬉しいことなんだろうと、僕は心の中で御礼の言葉を告げた。

 それが顔に出ていたのだろうか、緋は変わらぬ笑みで、「おう!」と、言ったのだった。




 今回、そして前回と続いて、銀喜多緋という人物が、どんな人物なのかを、紹介するような感じの回でした。これからも、ずっと蕾に寄り添うような感じで、助けてくれたりする大切な人物です。皆さんにも是非好きになっていただきたいです!

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