4話 かけがえのない思い出 Ⅳ
彼が放った言葉は、僕の奥深くまで浸透して、僕の心臓を暖かく包んだ。
僕は今まで、家族以外の誰かに、こんなに暖かい『何か』をもらったことがあっただろうか。いや、
なかった。寧ろ、冷たく遇われるとこがほとんどだった。
暗くて、なんか怖い。それは、僕がそんなふうに扱われるには、十分すぎる理由だった。
そんな僕に、彼は優しく接してくれたのだ。
彼のような明るく、イケメンで優しければ、周りに自然と人が寄って来てくれるだろう。にもかかわらず、僕のところに来てくれた。それだけで僕にとっては、堪らなく嬉しいことなのに、彼は、それどころか、名前まで聞いてくれるという。
他の人にとっては、そんな普通のことを…と思うだろうが、僕にとってはそうではないのだ。なにせ、僕に、程度はあれど、行為を向けてくれる人など、両親と妹しかいなかったからだ。
「……?…どうした。ほら、早く教えてよ。名前」
そんなふうに物思いに耽っていると、彼は、しびれを切らして、急かすように、糶がってきた。勿論、満面の笑みで。
「…あ、 蕾、です。東雲、蕾」
「蕾ね。おっけ。俺は銀喜多緋。これからよろしくな!蕾」
彼は…、緋はそう言って、二カッと満面の笑みで笑って、手を差し伸べた。
「え、あ…うん、よろしく」
僕は、その手を拒むことなどできず、戸惑いながらも、そっと伸ばされた手の上に自分の手をかさめた。
すると、緋は先程よりももっと、目を細めて、嬉しそうに言うのだった。
「おう‼」