3話 かけがえのない思い出Ⅱ
「ねえ、君、名前なんて言うの?」
目の前に影ができたと思ったら、今度はそこから、厳密には僕の頭の上から、そんな声が聞こえた。僕は顔を上げて、その声の持ち主であろう人の顔を見る。
そこにあったのは、俳優なんかにも引けを取らない超絶美青年の顔だった。
「………」
僕は、驚いて、少しの間声も出せなかった。僕に声をかけてきた人が超イケメンだったというのも、もちろんあるのだけれど、それ以前に、僕に話しかけてくる人がいるとこに驚いていた。
「…えっとー、聞こえてた?」
「……!」
その一言で目がさ覚めた。というより我に返った。そして僕は恐る恐る尋ねた。
「僕に、なにか…?」
「あ、やっぱり聞いてなかった?」
「えっと…、ごめん」
「いいよ。それでさっきのことなんだけど、名前、なんて言うの?」
そこで、またもや驚いた。僕は、自分の名前なんて聞かれたことがなかったから。
だからだろう。テンパっていたのか、僕は、
「僕の名前なんか聞いて、なにか得ある?」
そう、聞いてしまったのだ。
言ってから、やってしまったと思った。
目の前の彼は、あっけに取られたような顔をした。いや実際、あっけに取られていただろう。
しかし彼は直ぐに、笑顔を取り戻した。それから、
「だって、これから仲良くなんのに、名前も知らなくてどぅすんだよ!」
そういったのだ。満面の笑みを浮かべながら。
そこで僕は、今までで初めてお感情を抱いた。