2話 かけがえのない思い出 Ⅰ
ーー始業式、やけに長い校長先生のスピーチはどんな学校でも一緒なんだと思いながら、ぼーっとしていた。僕の周りには、浮ついた雰囲気でソワソワしている1年生達がいた。それも仕方ないことがのさと思いつつも、自分には無縁なものだとも思った。
中学の時から友達ができなかったのだから、いや、作っては行けなかったから、望みも何も無いのだ。そう、だからソワソワする必要もどうしようかと心配する必要も無い。気楽でいいと思えば、それほど苦ではない。
そんなことを考えていると、もう既に、担任の先生の紹介も終えていたようで、もう半分の生徒達が、体育館から去っていっていた。そして僕も。担任の案内の元、これこら学んでいく教室へと、足を動かした。
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教室での簡単なホームルームを終えて、今日はもう帰ってもいいらしい。
ちなみに担任は新任の女性の先生で、控えめに言ってとても美人な人だった。まぁよく漫画などにいる先生だ。こういう時に限って恵まれている。
そんなことはどうでもよく、案の定自分に寄ってくる人なんかはいなくて、もうそろそろ帰ろうとしていた。
思ってたんだ。それなのに、
僕が席を立とうとした時ーー
ーー目の前に、突然黒い影が現れた。