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僕たちの7日間戦争  作者: たまきまた
8/19

第8話 交 渉



〜東京都 首相官邸〜


スカイアンドリバーホテルが攻撃されて30分が経過し、防衛大臣が首相官邸に入り総理の元へ向かった。


「失礼します」


防衛大臣が執務室に入るとすぐに大泉総理が話し出した。


大泉総理「岡本大臣、被害状況は」


岡本大臣「現在、攻撃を受けた部隊からの通信は途絶えてしまいましたが、最終報告では負傷者多数で死者は3名出ており、3名とも地元民との事で日本人の死者は出ていません。ですが、通信が途絶えた今はどうなっているのかは分からない状況です」


大泉総理「なぜ非戦闘地域でボランティアと自衛隊が狙われたんだ!安全な地域での活動を条件にした派兵だ、もし死者が出たら大変な事になるぞ!」


岡本大臣「はい。事件が起きた地域は武装勢力の占拠している地域からは遥かに南側に位置しています。当地域では内戦より混乱から逃れた難民が多数集まっており、食料支援や医療支援、インフラの整備を実施していたのですが…当地域以外にも同様の支援を行っているPKO部隊は多数存在します。」


大泉総理「わざわざ日本の自衛隊を狙った根拠があると?」


岡本大臣「恐らく、日本の政府に対して犯人側から何らかの要求がなされる可能性が非常に高いです。こういったケースは以前、岡田というジャーナリストが拘束されイラン政府を通じて犯人と交渉し返還されたという事がありました。表向きには3億円程度の身代金と引き換えに解放となっています。」


大泉総理「ああ、覚えている。あの件も今は下火だが公になってはマズイ事が多数ある。掘り返されてはたまらんな」


岡本大臣「今回のケースは個人ではなく自衛隊やボランティアを狙った非常に特殊なケースと言えます。こういった場合は犯人側もリスクを負っている分、かなり大きな要求をしてくると考えられます…」


大泉総理「救出に関する状況は?」


岡本大臣「部隊が攻撃を受けてすぐに国連PKO本部に通報し救援を願い出ていますが…恐らく救援の到着までに数時間はかかると思われる地域です。」


大泉総理「完全に不意を突かれているな。被害の拡大は確実という事か…」


岡本大臣「救援に時間のかかる地域を選んだかもしれませんが…とにかく、多くの情報を収集し対応に当たります。」


大泉総理「たのむ。新たな情報が入り次第すぐに報告を」


岡本大臣が席を立ち執務室から出て行くと、すぐに官房長官が入ってきた。


大泉総理「菅村(スガムラ)長官、報告は受けたか?」


菅村官房長官「総理、これが公になればかなりの混乱が起こります。特に日本人の死者が出た場合は政権転覆の可能性もありますな」


大泉総理「わかっている…派兵する為にかなりの大風呂敷を広げて来たからな…打撃は大きい…」


大泉総理はドカッと椅子に腰を下ろし目頭を押さえて天を仰いだ




その頃、、、、、



中東〜スカイアンドリバーホテル〜




「ニホンノミナサン!コンニチワー!ジュウヲステテ!イウ、トオリニ!シテ、クダ、サイ!」


武装集団のハンドマイクを通した声が響きわたる。


緊迫した状況の中、すぐに隊長が無線で隊員に指示を出した。


隊長「いいか、一般人の人命を最優先する。チャーリーチームはすぐに私服へ着替えて一般人に紛れろ。私は武装集団との交渉を試みる」


チャーリーチーム「了解!すぐに着替えます」


隊長「アルファ、ベータチーム全員カプセルGPSを飲み込め」


アルファチーム「了解!」

ベータチーム「了解!」



「ニホンノミナサンワ!ブキヲ!ステテ!デテ、キナサイ!」


相手のマイクの声が再び響く。カタコトの日本語が地下に隠れている日本人の恐怖を煽った。



隊長が敵に見えるように銃を置き、両手を挙げてゆっくりとホテルの外に出て行った。


隊長がホテルを出て敵との中間点に達したところで、

黒いターバンを顔に巻き全身黒の敵兵数十人の間から、花柄のシャツで両手に装飾の施されたハンドガンを持った黒人男性がヘラヘラと笑いながら出てきた


「ハッハッハッー!コンニチワー!アイムジョン!」


ジョンと名乗る男は隊長に握手を求めたが、隊長は挙げた手を下さなかった。

隊長とジョンはお互い英語で交渉を始めた


ジョン「大丈夫だから手を下ろせよ。無駄な戦闘をしなかったアンタを褒めてやるよ」


隊長「そちらの目的は何だ」


ジョン「ハッハッハッ!オレ達も別に全員ブッ殺すつもりはないよ!ただ、自衛隊は全員ついて来て貰おう。変なマネしたらここにいる全員ぶっ殺してやるがな」


隊長「その前に、中にいる一般人を解放させてくれ。特に日本人ボランティアが安全にこの地域を出るのを確認したい」


ジョンがゆっくりと隊長の眉間に銃をあて耳元で話し出す


ジョン「勘違いするな、状況を考えろよ?お前からお願いごとされる覚えはないんだよ、死にたいのか?」


隊長はまっすぐ前を向いたまま動じない様子で話す


隊長「私を撃った瞬間に我々のスナイパーがお前の頭を撃ち抜く。言っておくが、どうせ死ぬなら我々も黙ってはいない。お前と後ろの奴らを半分くらいは殺す力が残ってるぞ」


ジョンの目の前に赤いレーザーポインタが現れ、足元からゆっくり上昇しジョンの頭で静止した


ジョン「ハッハッハッ!オーケーオーケー!」


ジョンは笑いながら銃を下ろした


ジョン「じゃあまずそっちから5人、自衛隊をこちらに拘束させろ。一般人は解放させてやるが、もしこちらに攻撃するような事があればその5人を殺すぞ」


隊長「いいだろう。」


隊長とジョンが向かい合って立ったまま、ふたりの話し合いの通りに周りが動く。

自衛隊アルファチーム5人が拘束され、ベータチームが日本人をトラック2台に乗せて発進させ、現地人を解放し暗闇に消えるまで見守った。


ホテルに残ったのは隊長を始めとする自衛官15名のみになった。


ジョン「オーケーそれじゃ、ボディチェックを受けて全員あのトラックに乗れ」


隊長達はトラックの荷台に乗せられ頭から目隠しの布をかけられ手足を縛られた。



その頃、

日本人と共に生還した自衛隊チャーリーチームのトラックは、少しでも事件現場から距離を取るためデコボコの悪路を全速で走らせていた。


日本人ジャーナリスト「おい!どこに向かってるんだ!本当に逃げ切れるのか!俺達は助かるのか!」


自衛官「250キロ離れた場所に国連部隊のキャンプがあります。待ち伏せを警戒し少し遠回りをしますが、今はとにかくそこに向かいます。」


日本人ジャーナリスト「無線とか、助けは呼べないのか!?」


自衛官「わかってると思いますが、トラックに乗る前に全ての通信機器や武器は奪われました。それに、救援要請は既にしています。ホテルへ到着するのは数時間後ですが…」


日本人ジャーナリスト「くそ!あいつら俺のカメラとPCも全部持って行きやがったんだ畜生!自衛隊がここに来たのは失敗だったな!日本に帰ったら全て記事にさせてもらうぞ!」


自衛官は無言で車を走らせた。



〜事件発生の翌朝 日本静岡県〜


タケシ達は静岡県で宿泊していたホテルで朝食を取るためレストランに集合していた。


テンカ「おはようタケシ!」


タケシ「あ、テンカさんおはようございます!」


テンカ「ちょっと、朝のニュース見た?」


タケシ「いえ、今起きて来たばかりなので…」


チームの皆がレストランのテレビの前に集まっているのが見えた。


テンカ「昨日のさ、ワタリさん達の緊急のやつ、完全にコレだわ」


僕は皆の間を割って入りテレビのニュースを見た


ニュースキャスター「昨晩、夜遅くに公開されたこちらの映像には、武装勢力ISMLが日本の自衛隊員を拘束し、犯行声明と日本政府に対する要求が収録されており…」


タケシ「自衛隊が…拘束?」


ショウ「国連平和維持活動に行ってる自衛隊だな。中東で活動してた奴らが攻撃を受けて拉致されてる」


テレビに武装勢力の映像が流れた。

黒ターバンで顔を隠した男ふたりが銃を持ち、その間にオレンジ色のツナギを着た日本人が座り紙に書いた文章を読んでいる。


拘束された自衛官「どうか、我々を助けて下さい。我々は現在ISMLに拘束されており、酷い扱いを受けています。このままでは殺されてしまいますので、日本政府は次の項目を速やかに実行して下さい。」


素人が観ても完全に作られた文章を読んでいる感じだ。


自衛官「日本政府はアメリカに働きかけ、拘束されているムハマンド・ラビンを解放させろ。続いて、中東地域に展開しているアメリカ軍も撤退させろ。そしてISMLは全世界の同志を受け入れる準備がある。同志はここに集え」


ユウ「無茶苦茶な要求だな。お金でもないし、実現困難な要求だ」


タケシ「日本人捕まえてアメリカ政府動かせなんて、確かに無理あるな」


キャスター「事件を受けて首相官邸には対策室が設置され関係閣僚が集結しています」


官邸に入る閣僚たちがマスコミに揉みくちゃにされている映像が流れた。


マスコミ「安全じゃなかったんですか!責任を取るつもりはありますか!誰が犯人と交渉するんですか!アメリカは…」


どのチャンネルも同じ内容のニュースが流れており、事の重大さを感じた。


テンカ「こりゃヒドイね、そりゃワタリさんも急いで出て行くわ」


なつみ「まぁ私達は早く終わったからいいじゃん。もうご飯食べて帰ろうよ」


モコ「私も新大久保のタピオカ屋に早く行きたいです」


その時、タケシの携帯電話が鳴った。


画面にはワタリ局長の文字が出ている。


タケシ「ワタリさんから電話だ」


僕はすぐに電話を取った。チームの皆が僕に釘付けになる


ワタリ「おはようございます。タケシさん、ニュースはご覧になりましたか?」


タケシ「ええ、今観ていたところです。大変なことになってますね」


ワタリ「タケシさんのチームに少しご相談があるのですが…」



完全に嫌な予感しかしない電話だった





つづく









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