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僕たちの7日間戦争  作者: たまきまた
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第3話 父の誘い


翌日、僕は父の車を借りてテンカさんを迎えるため都内に向かっていた。


テンカさんの家まで片道1時間はかかるが、午後には父の会社に到着する予定だ。


僕は都内に向かう車の中で、朝のニュース番組の音声を聞いていた。

僕たちがニューヨークで活躍した事が連日報道されていたからだ。

毎日少しだが、僕たちの勝利インタビューがテレビで流れ、自分達の功績に鼻高々な気分だった。


昭和の時代にファミリーコンピュータが発売され、以後ゲーム業界は常に拡大してきた。映像技術の向上やインターネットが高速化するにつれてゲーム業界は映画業界に匹敵するほどの拡大を見せている。


アメリカではプロゲーマーが確立されているが、日本はまだまだ発展途上。

今回の僕たちの世界大会優勝や獲得賞金の実績は、沢山のゲーマーの夢に現実味を与えた筈だ。

参加者が増えて、業界が活発になり、プロへと後押しする業界も増えてく来るだろう。


実際、僕たち4人にはSNSのダイレクトメール等を通じて、雑誌やテレビ、ネット番組への出演依頼など色々な問い合わせが殺到していた。


テンカさんは元々芸能関係の仕事をしていた事があり、そういったマネジメントにも結構知識を持っていた。

今現在もテンカさんは芸能事務所を退いたものの、個人の動画配信と個人的な企業案件でかなりの収入を得ている。


ギャンブル好きなのが心配だが…


今日は僕たち4人チームの今後のメディア露出戦略を練る話し合いを持つ予定だった。


今後の4人については僕の頭の中でも沢山のイメージが湧いてワクワクドキドキが止まらない。


色々考えていると1時間はあっと言う間に過ぎ去り、テンカさんの家が見えて来た。約束の時間通りに到着できた。


近づいて行くと、家の前にテンカさんが立っているのが見える。

テンカさんはモデルの仕事もしてたくらい容姿端麗で、こう言っちゃ何だが黙って立っていると本当に息を飲むほど綺麗で美しい。


黙って立ってるとね…


テンカさんの横で車を止めると満面の笑顔ですぐに助手席に乗り込んできた。


テンカ「オッハー‼︎タケシ〜息してる‼︎あんた!ちょっと見た?ニュース!ニューヨークのニュース!私たち、マジやってんねって感じ!いや本当やらかしたよね私たち!私なんてもう鼻が高くなり過ぎてさ!ニョッキニョキなんだよねって事なんだよねって事なんだよねって事!ハッハッハッ!あっちょっと途中でコンビニ、ビニコン寄ってねビニコン!」


テンカさんは基本的に人の2.5倍くらいテンションが高く、それを受け止める人間もやはり、2.5倍の体力を要する。


タケシ「観てますよニュース!とりあえずコンビニ行きますね!」


たまに疲れるけれど、僕は明るくて社交的なテンカさんがとても好きで、しかも僕のような引きこもりゲームヲタにも、とても良くしてくれる本当に素敵な人だ。


コンビニの場所を考えながら僕はゆっくりと車のをスタートさせた。


タケシ「今日はすみませんね、オヤジの仕事場なんて誘ったりして」


テンカ「タケシのお父さんてさー、自動車関係?メーカーだったよね?何だろね〜新型車両でも見せてくれるのかな〜?なんかワクワクするね!オラワクワクすっぞ!ハッハッハッ!」


タケシ「自動車メーカーの開発室にいるんですけれど、24年間生きて来て初めてですね。オヤジの会社に行くなんて」


テンカ「へぇ〜タケシも初めて行くんだね、お父さんの会社。でも何かいいなーこういうの。私お父さんいないからさ、お父さんが働いてるところ見れるなんて、めっちゃイイじゃん!」


タケシ「どうなんですかね…テンカさんまで連れてるのにショボイことだったらどうしようと不安でいっぱいですよ!オヤジ、マジ頼むって感じスネ!」


明るい性格のテンカさんの話しの端々から、それとは真逆の暗くて辛い過去が、時々見え隠れする。


お父さんがいない事や、お母さんを喜ばせるために小さな頃から芸能事務所に入り大人と仕事をして来たり、母に反抗して芸能界から逃げだしてグレた話しだったり…

何というか…

周りに明るく振る舞う事で、何かを守っているのか…自分を高めているのか…よくわからないけれど、もし、無理をしているのなら、いつかその反動で強烈に落ち込む日が来るんじゃないかと思い、僕はテンカさんをずっと気にかけていた。



車がコンビニを出てすぐ、いつもはスムーズな国道で渋滞が起きていた。

前の車を少し避け前方を確認すると、沢山の人が旗やプラカードを掲げて大きな声を上げている。


タケシ「あれは…何かのデモ行進かな?」


テンカさんはすぐにピンと来たようだった


テンカ「ああ〜あれだよ!あの自衛隊のさ、派遣がどうの〜とかのヤツじゃん」


ゆっくりとデモ行進の横を通過していると声が聴こえて来る


「自衛隊を戦争に行かせるなー!」「行かせるなー!」

「大泉政権は今すぐ解散しろー!」「解散しろー!」


なかなかの人数が大声を上げてデモ行進している。車を運転している僕からすると迷惑でしかない。


テンカ「あーコレコレ」

テンカさんがカーオーディオを指差した。ニュース番組だ


アナウンサー「国際テロ国家との争いを激化させるアメリカの要請を受け、政府が自衛隊の派遣を決定した影響により国会内は大荒れとなっております」


国会で質問に答える総理の声が聴こえてきた


大泉総理「今回の自衛隊派遣は、非戦闘地域での復興支援作業であり、インフラ整備や医療支援、食料支援を中心とした…」

説明している総理大臣の声をかき消す程のヤジが飛び交う


「嘘つけー!」「自衛隊を戦争に行かせるな!」「辞めろ!」などの声が飛び交い、かなり混乱した様子の国会を中継したニュースだった


僕もテンカさんも、全然このニュースを気にも止めていなかったし、関係ないと思っていた。



そう、あの日が来るまでは…



車の中で今後のチームの事を話し合っていると、あっという間に父の会社に到着した。

自動車メーカー本社というわけではなく、ここには自動車工場と開発部の施設がある広大な敷地だ。

入り口で父の名前を出すと駐車場を案内され、開発部の施設の前に父が迎えに出て来ていた。


車を止めるとテンカさんが真っ先に父の元に走って行った。

テンカ「お父さんお久しぶりです!スゴイ!作業着カッコイイ!技術者って感じ!」

父「テンカちゃんは今日も元気で可愛いねーハッハッハッ!」


そんな2人を見つつ、僕は外が暑いので早く中に入ろうと父の背中を押した。


入り口に入ると受付カウンターのような所で手荷物を預けるように言われた。


父「ここから先はカメラやスマホ、パソコンや記憶メディアとかが持ち込み禁止なんだ。すまないが預けてくれ」


テンカ「厳重ですねぇ コリャスゴイ所キタって感じ!」


父によると建物内は企業秘密だらけで、帰る時には口外しないと言う契約書にサインまで求める程だった。


僕とテンカさんは受付の対応に多少圧倒されつつ、ゲストの札を首から下げて父の案内する開発室に入った。


4つほどセキュリティロックのかかったドアを通過し、ようやく父が5つ目のセキュリティロックドアの前で足を止めた


父「ここだよ、さぁ入って」


中に入るとここで何が作られているのかすぐに分かった。


タケシ「ハハ!何だコレ!スゴイ!」


テンカ「アハハ!思ってたのと全然違うw車じゃないし!」


僕たち2人は見せられた物にすぐに興味を持った



つづく

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