第13話 DAY2 救出作戦②
モトジャが人質を発見した頃、敵のリーダージョンはまだタケシ達の侵入に気付いてはいなかった
〜 敵アジト北側広間〜
ジョンは小さな絨毯に膝をつき神に祈りを捧げている。
小さな声で何かを囁きながら何度も地面に頭をつけたあと、ゆっくりと立ち上がった。
ジョンが立ち上がると同時に周りがざわつき急いで広間を出る兵士達が目に入ってきた。
異変に気付いたジョンも走り出す
ジョン「なんだ!何ごとだ!」
走りながらジョンが言うと1人の兵士が叫んだ
兵士「無線が通じません!建物内警戒中です!」
ジョン「クソ!はやく人質を確認しろ!」
「ドゴン‼︎‼︎ズズズズズズ‼︎‼︎」
ジョンが叫んだ瞬間に爆発音が鳴り地響きで天井から砂埃が落ち全ての電気が消え真っ暗闇になった
ジョン「クソ!はやく人質を!予備の発電機をまわせ!」
広間から出ようとする兵士で出入り口が混雑している
暗闇のなか全員が叫びながら話しジョンの声もかき消される
ジョンが兵士を掻き分け倉庫を出る
人質のいる建物に入るとすぐに地下へ向かった
地下室にジョンが入ると何が起きたかはすぐに分かった
ジョン「ファッッッック‼︎‼︎‼︎」
兵士3人の死体が転がっており人質の自衛官が消えている
ジョン「まだ近くにいるぞ!探せ!」
〜 数分前 〜
タケシ「脱出ルートを確保する!突入して2階へ行くぞ!」
モトジャが人質を発見し、
タケシ、ユウ、トミィが中に入った
テンカとナツミはスナイパーライフルを持ち外から様子を伺う
階段の前にいたショウはタケシとトミィを2階へ送り、ユウと階段前の見張りを入れ替わった。
ショウは地下室へ走りモトジャと合流
ショウの到着と同時にモトジャは鉄の扉を足で蹴り開ける
「ドカ!」
勢いよく開いたドアに敵兵3人は驚き、銃を構えようとしたが、モトジャを見てさらに驚いた!
敵兵「ロ、ロボット!?」
油断した敵をモトジャが順番にビュ!ビュ!ビュ!と打ち倒す
敵を倒したモトジャとショウは人質の拘束をどんどんと解いていく
自衛官「うわぁああああ‼︎」
顔の黒い布袋を取ってもらった自衛官がロボットを見て驚いた!
モトジャのロボットが話し出す
「ニホンカラ、タスケニキマシタ」
ロボットが言うと自衛官達は目を丸くした
自衛官隊長「これは驚いた、、さ、さぁ、脱出しよう!」
2階に到着したタケシはトミィと共に2階の敵兵を倒していく
モトジャを見ていたタケシ達にもう迷いはなかった。次々と目に入る敵兵を撃ち倒し制圧して行く
タケシ「屋上に上がれるぞ!皆を屋上に誘導しよう!」
トミィ「了解!」
さほど広くない2階部分をすぐにタケシとトミィは制圧し屋上へのルートを確保した
モトジャ「人質と階段を上がって屋上に向かうぞ!」
タケシ「了解!フルトン回収のバルーンを展開開始!」
※フルトン回収システム(Fulton surface-to-air recovery system, 略称 STARS)1950年代に開発され、CIA、アメリカ空軍及び海軍により用いられた、地上の人間を航空機によって回収するためのシステムである。別名スカイフック。
ナツミ「あ!外!建物の外で無線使ってるヤツがいる!バレるよ!」
モコ「敵無線のジャミング開始!敵無線を無効化」
タケシ「ナツミ!テンカ!スナイパーで見える敵を排除しろ!」
ユウ「広間の奴らがざわつき始めたぞ!急いで!」
14名の自衛官が屋上に上がりタケシ達は全員にフルトンのバルーンを取り付けて行く
自衛官達はロボットの動きに戸惑いながらも身を任せるしかなかった
自衛官隊長「フ、フルトン回収されるのか!?」
ロボット「コッセツクライハ、カクゴネガイマス」
自衛官隊長「ハハ!骨折上等だ!」
体にバルーンをつけた自衛官がゆっくりと浮き上がる
モトジャ「ヨシ!全員空に上がるぞ!」
モコ「人質回収の機体が上空で旋回し待機してます!」
その時、北側広間の多数の熱源が一斉に移動するのがモニターのマップ上で確認できた
ユウ「広間からそっちに大勢向かうぞ急げ!」
人質が次々に空中に浮き上空へ飛び去って行く
モトジャ「ショウさん!電源を爆発して下さい!」
ショウ「了解!電気消えるぞ!」
ドゴン‼︎
C4の爆発音と共に辺り一帯の電気が消えて真っ暗闇になる
月明りと満点の星空に人質となっていた自衛官達が消えて行く
タケシ「ユウ!ロボットの脱出は間に合わない!アメリカ軍へ航空支援要請!空爆で建物を壊滅させろ!」
ユウ「了解!アメリカ海軍へ空爆要請!座標を送信!」
タケシ「ナツミとテンカは外に出てくる敵兵を注視しててくれ」
テンカ「了解!」
ナツミ「了解!」
〜その頃、地下室のジョンは〜
ジョン「探せ!まだ近くにいるぞ!」
怒り狂ったジョンは手に取れる物を掴み地面や壁に叩きつけてた
ひと通り物を投げ終えたジョンは息を上げながら指示を出した
ジョン「空港だ、空港へ向かう道路も探せ!」
ジョンはイラつきを隠せず、周りの兵士を突き飛ばしながら上の階へ戻った。
ジョンが地下室から1階に戻ると予備の発電機で少しだけ電気が復旧しオレンジ色の電球が弱々しく建物内を照らした
敵兵「ジョン‼︎これを!」
ジョンが声のする方に向かうと死体を引きずったような血痕がドアの向こうに続いている。
ジョンがドアから入ると1階の見張りが複数死亡しているのがわかった
ジョン「ファッッッック!」
ドガッとジョンはドアを殴り部屋を出ると、別の敵兵がジョンを呼んだ
敵兵「ジョン!2階!2階も皆死んでるぞ!」
ジョンは半分諦めたように歩いて2階へ上がった
階段を登り終えたジョンはすぐに屋上へ呼ばれた
敵兵「ジョン!屋上だ!屋上に、、、、」
ジョンは慌てて屋上に駆け上がった!
が…
屋上に上がったジョンは混乱した
ジョン「ワッツ ア ファック!?何だコレは!?」
ジョンの目の前に見慣れないロボットが5台並んで立っていた。
しかも5台とも皇室の貴族のように右手を振り、右向き左向きと頭を動かしている
ロボット「ハロ〜ミスタージェントルメン!ハウアーユー?」
ジョン「ファーーーーーーーッッッック‼︎‼︎」
喋ったロボットに激怒したジョンは腰に刺していた装飾付きのヘビーなハンドガン2丁を取り出し、
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
とロボットの破片が吹き飛ぶほど弾丸を浴びせた。
ジョンの周りにいた兵士も続いてズダダダダダダダとマシンガンでロボットに無数の弾丸を浴びせた!
ジョンは弾切れをしたハンドガンをドガッ!とロボットへ投げ付けると、ふと我に返った。
ジョン「マズイ、人質がいないとなるとここは空爆されるぞ!全員退避しろ!」
ジョン達はアジトが危険と判断し避難を急いだ
〜その頃タケシたちは〜
モトジャ「くぅ〜あのリーダーみたいなヤツ、メチャクチャしますねぇ」
ジョン達の銃撃をモニターに映像が来なくなるまで観ていたモトジャが言った
タケシ「もうすぐ空爆が始まります。奴らも終わりですよ」
ナツミ「あ!何か車が沢山出て来る!あっちこっち出て行くよ!」
テンカ「かなりの台数!四方八方に4輪駆動車が出ていく!」
モトジャ「人質がいない上に場所がバレたんですからね、空爆されるのを察知したんでしょう」
ユウ「米軍戦闘機2機が到着!空爆が始まります!」
タケシたちはナツミとテンカのロボットからの映像に注目した。
ドゴン‼︎ドゴン‼︎ドガゴゴコゴ‼︎
暗闇の中に瞬時に火柱が立ち、黒煙が立ち上る
爆発音と地響きが20キロ離れたタケシたちのトレーラーまで響き渡った。
ナツミ「だめ、何も見えない」
テンカとナツミのロボットは爆発の粉塵に包まれカメラの画面は真っ黒な状態が続いた
その時、上空のC1輸送機から吉報が入った。
自衛官全員を無事に回収、米軍空母へ移送中との連絡だった
タケシ「作戦成功!やり遂げた!」
トレーラーの中が歓喜にあふれ全員が立ち上がって抱き合った
テンカ「アハハ!やったやった!」
ショウ「ほんと!ここまで来て良かった!やった!やった!」
皆が湧き上がるトレーラーの2階にクドウさんが入ってきた
クドウ「護衛チームが2台のロボット回収しに向かっています。終了次第退却しましょう。空港まで戻ります」
タケシ「わかりました。ナツミとテンカのロボットをこちらに走らせます」
僕たちは15分ほどで残りのロボットを回収し空港へ引き返した。
ワタリさんからも大喜びの連絡が入り僕たちは大きな達成感に包まれていた。
完全に成功して終わった雰囲気だった…
家に帰るまでが遠足…
小学校で習う事なのに、完全に浮かれてしまった僕たちがそこにいた
空港の駐車場にトレーラーを止めた僕たちはここで夜が明けるまで1泊することになっていた
テンカ「ねえ、タケシ、ちょっとさ外の空気吸いたくない?」
トレーラーの2階を片付けようかと考えて立ち尽くしていたタケシにテンカが言った
タケシ「そうですね、少しだけ」
僕とテンカさんはふたりでトレーラーを出て少し歩く事にした。
テンカ「うわ、やっぱこのトレーラーハウス、外から見るとバカデカイね。超カッコいい」
タケシ「ほんと、カッコイイですね、メチャクチャ欲しいですよ」
トレーラーを見上げた僕とテンカさんの目にさらに驚く光景が飛び込んできた
テンカ「ひゃー!凄すぎない!?この星!」
タケシ「ハハッ!すごい星空ですね!これは驚き!」
ふたりの頭上には見たこともないくらい満点の星空が広がり、白、赤、青と輝きの違う無数の星が星雲を作っているのが分かった
テンカ「感動だなー、東京では絶対見れないよ。外に出て良かった!」
タケシ「そうですね、こんな星空は絶対に見れませんね。僕も感動しました」
手を広げると吸い込まれそうな夜空を見ながら僕とテンカさんは歩きだした。
テンカ「なんかさ…スゴイ、寂しくない?こんなに綺麗なところなのにさ…人間は何やってんだろね」
タケシ「そうですね…この止まった星空を見てると…何てちっぽけで、バカなことしてんだろうって思いますね…」
テンカ「東京にいるとさ…何ていうか…生きて行くのも必死じゃん?生き方というか…立ち回りというかさ…自分を守りながら生きてて他人のことにまで余裕無くてさ…」
タケシ「べつに東京に限ったことじゃないですよ…いつからなんですかね…こんなに皆んなが自己中になって、同じ考えのコミュニティが出来て…違う考えの人とは戦争みたいになってますもんね…」
テンカ「アハハ…なんかさ…疲れたっつうか…泣けてきた…」
歩いていたテンカさんが立ち止まって肩を震わせながら泣きだした…
ヒッヒッと呼吸が乱れるほど泣きだすテンカさんを…
僕は見ていることしか出来なかった。
何というか…
あまりにも夜空が美しく…
小さな僕たちはあまりにも醜い…
流れ流されて行く日常に凄く悲しくなった…
大きく、美しく、止まって見える星空は…
真逆の僕たちの荒んだ姿を
よりはっきりと写し出しているように感じた…
テンカ「今日はさ…誰かの為に何か出来て、、本当に良かった。救って救われたね…」
タケシ「そうですね、、、他人事で済ませることもできましたけど…僕たちはここに来た…それで良かったと思います」
自分ではない誰かを守れたり、自分ではない誰かを幸せに出来て初めて、一人前なのかもしれないと僕は思った。
テンカさんの全てを理解して、全てを受け止められる、そして笑顔をあげられる男になりたいと、満点の星空に僕は強く願った。
テンカ「写真撮ろっか!」
涙を拭いたテンカさんが笑顔で言った
テンカ「この星空を忘れないようにさー」
タケシ「そうですね」
僕がポケットから携帯を出すと
テンカ「アハハ、私携帯トレーラーに忘れてきた!」
タケシ「僕ので撮って送りますよ」
テンカ「じゃあちょっと携帯貸して!私がまず撮ってあげる」
テンカさんが携帯を手に取り、アングルを探しながら僕から少しずつ距離を取ったときだった
「ドガッ‼︎」
僕の視界が急に飛び目の前が真っ白になる
耳の中でキーーーーンという音が強烈に回った
「キャァァァァアアアア‼︎‼︎」
というテンカさんの叫び声でブレブレの視界を取り戻すと黒ずくめの男数人が暴れるテンカさんを連れ去ろうとしているのが見えた
頭に激痛が走り、何かで殴られたのを理解した、、、
テンカ「イヤァァァァアアアア‼︎‼︎キャアァァァァアアアア‼︎‼︎」
静けさを切り裂くようなテンカさんの叫び声に僕の体がガクガクと反応するも、、全く立ち上がる事が出来ない、、、
男達がテンカさんを四駆の車に押し込み走り去ろうとするころ、異変に気付いた仲間たちの声が駐車場に響いた
ショウ「テンカ‼︎タケシ‼︎どこだ‼︎」
テンカさんを乗せた四駆の車が急発進をしてタイヤのキリキリ音で皆が僕の場所に気がついた
タケシ「ァァァァアアアア‼︎‼︎」
僕は振り絞って声を出した!
ショウやモトジャさんが僕に駆け寄ると同時に、バイクに乗ったクドウさんもやって来た
ショウ「おいタケシ!大丈夫か‼︎」
クドウ「タケシ君!」
モトジャさんに抱えられた僕は走り去る車を指さし
タケシ「テンカさんが…連れて…いかれた」
クルマを追いかけようとクドウはバイクを吹かしギアを入れた
タケシ「クドウさん‼︎」
僕はクドウさんを呼び止め、テンカさんが落とした僕の携帯電話を指さした
タケシ「あの携帯電話を!あの車の荷台に‼︎」
クドウは頷き、すぐに携帯電話を拾いあげ四駆の車を追いかけた!
暗闇を進むテールランプをクドウは追いかける
車は砂漠の悪路に入ると激しく揺れ、砂埃を上げながら飛ぶように車体が浮き上がる
クドウは悪路を物ともせずバイクで車との距離をつめる
スピードの落ちた四駆にクドウが追いつくと車の窓から黒ずくめの男が上半身を出しクドウに発砲してきた
パパパパパパパパッ‼︎と乾いた音と共に自動小銃の先が光る
クドウは右に左にと車の後方で位置を変える
車の揺れの激しさとクドウの動きで銃弾は全く当たらない
クドウはバイクを走らせながら左手にはめていた手袋を口で取り、左手でタケシの携帯電話を手袋の中に押し込んだ
車にバイクを一瞬だけ寄せて、四駆車の荷台に携帯電話の入った手袋を放り込んだ
車がカーブにさしかかり、助手席の窓から小型のRPGを構えた男がクドウを狙う
クドウ「ロケットランチャー⁉︎」
慌ててクドウはブレーキをかけたがバシュ‼︎という音と共に白煙を吐きながらロケット弾がクドウのバイクのすぐ横の地面に着弾‼︎
「ボゴン‼︎」
という爆発音と共にクドウとバイクが宙に浮き上がる
クドウは砂の上に叩きつけられ、そのすぐ横に上から降ってきたバイクが叩きつけられた
クドウが慌てて這うように逃げるとバイクが激しく爆発して炎上した
クドウ「クソ‼︎」
燃えるバイクが暗闇の砂漠をゆらゆらと照らす
クドウは何とか体を起こすが…
テンカを乗せた四駆車のテールランプは遠くに消えていった…
つづく