第10話 決断の時
静岡から帰ってその日の夜
僕はずっと中東に行くべきか考えていた。多分、テンカさんとショウも同じだろうなと思っていた。
部屋で天井を眺めながら考えていると、携帯が鳴った
タケシ「ショウさんから電話?」
電話に出るとショウさんが早口で喋りだした
タケシ「テレビ!テレビ見てるか!?」
急いでテレビをつけろと言われ部屋にあるテレビをつけた。
ニュース番組が何やら中継を流している。ネット回線のテレビ電話なのか、画質がとても悪い。
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TV
キャスター「それでは、中東の国連キャンプに中継をつなぎたいと思います。田中さん!お願いします!」
田中「はい、こちら中東にある国連キャンプです。私は事件のあったスカイアンドリバーホテルにて自衛隊とボランティアの取材をしておりました。そして、事件に巻き込まれ、今、この国連キャンプに避難しています」
キャスター「どうやってそのキャンプまで避難したのでしょうか?」
田中「自衛官を拘束する代わりに、その他の日本人を解放する交渉が行われまして、私達一般人の中に私服の自衛官5人を潜伏させて、このキャンプまで避難することが出来ました。政府は非戦闘地域に派遣という事で自衛隊を送って
いましたが、全くのウソだったという事になります!」
キャスター「皆さんはいつ頃日本に戻られますか?」
田中「まだわかりません…私物やパスポートも全て奪われ、身分証もない状態で、自衛隊員の指示を待っていますので、日本に帰るのにも少し時間がかかりそうです!」
キャスター「ありがとうございました!気をつけて帰国して下さい!」
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電話の向こうでショウさんが喋りだした
ショウ「あの田中ってジャーナリスト、マズイ事言ってないか?」
タケシ「一般人に紛れて自衛官がいた事を話したのはマズそうな感じがしますね、事件は解決してないのに…」
ショウ「まあ、とにかく明日お前のオヤジの開発室に俺のチーム全員呼んであるから、ワタリさんからの件をどうするか決めよう」
タケシ「わかりました。このニュースで何も起きなければいいのですが…それでは明日」
何も起きない事を願いつつ、不安な気持ちで電話を切った
が、やはり
ショウとタケシの予感は的中していた…
〜中東 テロリストの隠れ家〜
ジョン「ファック!あのクソ野郎ども!殺してやる!」
かなり怒った様子でジョンが拘束している隊長に詰め寄った。
ジョン「隊長さんよ、逃した一般人の中に自衛隊がいたらしいな?」
隊長は目を合わせず無言で通した
ジョン「ふざけんな!」ドガッ!
ジョンは怒りに任せて隊長に殴る蹴るの暴行を加えた
息を切らせながらジョンは隊長に話した
ジョン「俺を騙した責任を取ってもらうからな」
ー 翌日 ー
僕たちはロボットの開発室に集まり自衛官救出要請をどうするか考えていた。
なつみ「いや、私たちが中東まで行くのキツくない!?かなり危なそうじゃん!」
タケシの父「そうだな、ロボットを動かす20キロ圏内だとテロリストとの距離もなかなか近い」
ショウ「まあ、ワタリさんも俺たちが動かないってなっても他の策は考えてるだろうけどさ…」
タケシ「もちろん断ってもいいと思います。僕たちは一般人だし、ロボットを動かせるだけですし」
テンカ「でもさ、あの15名の自衛官の写真見ちゃったらさ…今も拘束されてて、家族の人とかどんな気持ちなんだろうって考えるとさ…」
ユウ「子供がいる隊員もいるんですよね…不安でたまらないでしょうね…」
皆で話していると開発室の電話が鳴った。
父が電話に出ると僕に受話器を向けた
父「ワタリさんから電話だ」
皆が僕に注目した。
タケシ「ワタリさんどうも、ちょうど今…」
僕が電話に出て話し始めると割って入るようにワタリさんが話しだした
ワタリ「すみません、今そちらに映像ファイルのアドレスを送信しました。観てもらえないでしょうか」
父に話すと映像ファイルが観れるURLがメールで届いているのがわかった。
父がモニターに映像を流した瞬間、心臓の鼓動が速くなり全員が目を見開いた。
黒いターバンを顔に巻いた男が2人。その間にオレンジ色のツナギを来た日本人が座っている。
泣きながら日本人が文章を読み上げ始めた…
自衛官「…ここにいる日本人は…嘘の交渉をした…我々を裏切るのは…神を裏切るのと同じ…」
文章を読み上げる終わると黒いターバンの男が自衛官の体を抑え、もう一人のターバンがノコギリを取り出した。
テンカ「キャー‼︎‼︎」
テンカさんが声を上げた
モザイクもなく、暴れる日本人の首をノコギリで切り落とす残虐な行為の映像が流れる…
切り落とし、血にまみれた頭をカメラの前にターバンの男がドアップで映るよう持って来たところで映像は終わった。
ショウ「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああ‼︎‼︎」
ショウが叫んだ
僕は電話の受話器をこれ以上ないくらい強く握りしめ、歯を食いしばっていた。
ワタリ「子供がいる隊員です…」
僕はワタリさんに言った
タケシ「準備をしてすぐに中東へ行きます」
迷いはなかった。ひとりでも行ってやるって思った。1秒でも早く行かなければ、また誰かが殺される…
電話を切り、僕はチームの皆に話した
タケシ「僕は中東に行きます。強制はしません、ついてくる人はいますか?」
ショウ「行くにきまってんだろ‼︎‼︎」
ショウさんが叫ぶと皆が立ち上がり、誰ひとり欠ける事なく全員が中東に行く事を決めた。
つづく