看板娘は少女を拾う その4
「看板娘は少女を拾う その1」から「その4」まで一括投稿です。
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エルシアさんがおこった。
おうちにおくるっていうから、あんないしたら、とつぜんおこりだした。
エルシアさんは、ふしぎなひと。
おかねをもらうためにいった、ギルドというところでしょくいんをしてるんだって。わたしにやくそうとりのおしごとをおしえてくれたり、ときどきあまいものをくれたりするひと。
きっと、いけないことをいっぱいしたから、おこってるんだとおもう。
まず、たたかいにいっちゃったこと。
エルシアさんは、ぜったいきちゃダメっていってたのに、わたしいっちゃった。だって、みんなあぶないめにあっていたから、びっくりしちゃったんだもん。
さいきんできるようになった、てがピカってひかるやつをやれば、まものもびっくりしてにげていくかなっておもったの。こわかったけど、がんばったよ。
そういえば、エルシアさんはガルドスってひとといっしょに、うしろでたたかってくれた。ふたりがいなかったらわたしもあぶなかったんだって、あとでぼうけんしゃのおじいさんがおしえてくれた。ぜんぜんしらなかった。
でもたぶん、いちばんおこったのは、おへやのおそうじをちゃんとしなかったから。ママにもおかたづけちゃんとしなさいっておこられたのに、このおうちにきてからほとんどしてなかった。もともとばっちいから、いいやっておもったの。
でもね。
エルシアさんからは、こわいかんじがしない。しんぱいしてくれてるってなんとなくわかる。ほかのひとのなかには、こわいめでみてくるひともいるけど、エルシアさんはおこっていてもやさしいめをしている。
いつのまにか、そんなエルシアさんのおうちにいくことになった。
どうしてだろ? とってもふあん。
これからわたしどうなるんだろう、よくわかんないや。
―――
後にケトは語った。
あの時、あの人は怒ったわけじゃなかった。
あまりの惨状に、この子は放っておいてはいけないと、遠慮というものをしなくなっただけだった、と。どんなに気配に敏感でも、あの頃のわたしは、それすら分からぬ子供だったのだと。
ただまあ、その時点でのケトはやっぱりただの九歳児だった。
いくら優しい目をしていたといっても、突然まくし立てたエルシアにびっくりして、ちょっとだけ涙ぐんでしまったのは今でも内緒だ。
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