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赤月さん、鉢合わせする。

 

 昼食を食べ終わる頃には、すっかり打ち解けた雰囲気になっていました。話す内容は様々だったのですが、新しく知ることが出来たものも多く、とても充実した時間でした。


 会話の途中で知ったのですが、来栖さんは日本人とフランス人のクォーターらしいです。

 すすき色の髪色が綺麗で素敵だと伝えると彼女は少しだけ懐かしそうな顔をしながら、クォーターだと話してくれました。


 口調が淡々としているのは、お祖父さんの影響とのことです。

 小さい頃に本の読み聞かせをしてもらっていて、その際の単調過ぎる口調が移ってしまったと言っていました。意外にもおじいちゃんっ子らしいです。


 家族の仲がとても良いらしく、家族写真を見せてもらったのですが、美男美女でとても眩しかったです。


 また、奥村君は人と話すのが苦手というわけではなく、女子と話すのがあまり得意ではないそうです。なので、目を見て話せないことは了承して欲しいと言われました。


 その気持ち、よく分かります。私も人見知りが激しいので、たまに相手の顔を見ずに喉や鼻辺りを見ながら話す時があります。

 慣れるまで時間がかかるので、奥村君も無理をせずに慣れていって欲しいですね。


 白ちゃんとことちゃんは私に同級生の友達が出来たと言って、喜んでいるようでしたが、どの段階からが友達と呼べるものなのか分からないので迷うところです。


 来栖さんや奥村君と友達になりたいと思っているのですが、どのような過程を超えたら友達と呼べるのでしょうか。難しいですね。


 昼食の後はそれぞれが受講している講義が別だったり、時間が空いていたりしたので、途中で分かれることになりました。


 ちなみに私は、午後からは民俗学の講義です。

 

 前回は「日本各地に出没する類似している妖怪達」というテーマでの講義だったので、とても面白かったです。果たして、今回はどのようなテーマでの講義なのでしょうか。


 心を躍らせつつ、同じ講義を取っている大上君と並んで教室へと向かっていると、通路の向こうから何と米沢さんが他の女子学生達と一緒に歩いて来ているではありませんか。


「……」


 これはかなり気まずいですね。


 ですが、来栖さん達と一緒に班作業を明日行う予定だと伝えるチャンスでもあります。

 来て下さるかどうかは分かりませんが、同じ班員として誘うために声をかけるべきでしょう。……正直に言えば、凄く緊張しますが。


 すると、米沢さんのすぐ傍にいた女の子の一人が大上君の姿を見つけて、花が咲いたような笑顔をぱぁっと浮かべました。


「……あー……」


 大上君は相手に聞かれないような小声で呻いています。ですが、表情は爽やかなままで全く崩れていないので、さすがとしか言いようがありません。


「大上君~!」


「やぁ、こんにちは」


 この一瞬で猫を数匹程、被りましたね。声色が私や白ちゃん達と接する際とは別の声色になっています。


「大上君はこの後、講義?」


「何の講義を取っているのー?」


「今日の講義が全部終わったら、一緒に夕飯を食べに行かない?」


 女の子達は大上君を囲んで話し始めましたが、隣に立っていた私の存在は完全に無視です。むしろ、最初から私など見えていないと言った様子です。いえ、いつものことなので今更ですが。


 でも、歴史学部の学生だけでなく、心理学部の学生もいるようですね。学部は違っても受講している講義が被ることはよくあるので、特に珍しいことではありません。

 大上君という存在は学部が違っても認知されているようですね。


 私はすっと大上君から距離を取り、きゃっきゃと楽しそうにお喋りをしている女の子達の邪魔にならないように息を潜めます。


 ですが、米沢さんの方を見ると、彼女は無愛想な表情を浮かべているだけで、大上君の方に寄ってきている女の子達からは一歩だけ引いている様子に見えてしまいました。


「……」


 ぱちり、とお互いの視線が合えば、米沢さんは少しだけ顔を顰めました。


 あからさまなので、とても分かりやすいくらいです。やはり、私は彼女にかなり嫌われているようですね。

 複雑な感情が込み上げてきますが、私は曖昧な表情を浮かべるしかありませんでした。

 

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