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赤月さん、発表の準備を進める。

 

 フィールドワークに参加してから数日が経ちました。私はフィールドワークで巡ったとある神社を発表のテーマに決めて、さっそく発表の準備に取り掛かっています。


 先輩達や梶原教授に発表の仕方や流れを訊ねつつ、自分なりに図書館でテーマに関する資料を集めては考察を書き連ね、まとめる作業に追われていました。


「なるほどねぇ。発表する際のパワーポイントだけでなく、配布するレジュメも自分で作らなければならないなんて、大変だね」


「つまり、私達はその誤字脱字のチェックと文章に矛盾がないかを見て行けばいいんだな」


 そう言って、力強く任せろと言わんばかりに胸を張っているのは親友でもあり、幼馴染でもある白ちゃんとことちゃんです。


 私が今度のオープンキャンパスで発表をすると聞くや否や、すぐに手伝うと宣言してくれたのです。


 なので、今は大学の構内で、その時間帯は空き教室になっている一室を使ってから、私が書いたレジュメに添削を入れてもらっていました。


 このレジュメには発表する内容についてまとめられており、発表当日はパソコンで文字打ちされたものをコピーして、参加している高校生達に配布する予定です。


「う、うん。二人とも忙しいのに手伝ってもらってごめんね。でも、教授に目を通してもらう前に二人に読んでもらえるなら、ちょっとだけ気が楽かも」


「せっかくの晴れ舞台だからね。千穂が恥をかくことがないように、しっかりと添削させてもらうよ」


「そうだな。当日の発表の日も、こっそりと歴史学部の学生に混じって千穂の発表を聞きに行くか」


 ことちゃんの提案に白ちゃんは強く頷き返します。


「それは名案だ。発表する姿を動画として撮っておこう」


「やめてっ! 恥ずかしいからっ! ……見に来るのはいいけれど、動画を撮るつもりなら、絶対に二人を発表の席に入れてあげませんっ」


「ふっ……。冗談だよ、千穂」


「まあ、目には焼き付けるけれどな。……それで、何でこの場にこいつがいるんだ?」


 突然、ことちゃんの声音が低いものになり、右手の親指の方向を私の隣に座っている大上君へと向けます。


「だって、赤月さんと同じ日に発表するからね。それに発表準備を手伝うって約束していたし。……あ、赤月さん。この文章の最後の行、変換ミスだよ。赤ペンで訂正しておくね」


「……ありがとうございます」


 大上君はさらっと、ことちゃんの冷たい視線を躱しつつ、私のレジュメに赤ペンで添削をしていきます。

 これが終わったら、大上君のレジュメを私が添削する番となっています。


「てめぇ、いつの間に千穂と仲良くなってんだぁ? そんなの、許した覚えねぇぞ、あぁ?」


 まるで昭和時代の不良の絡み方のようです。時代が時代ならば、ことちゃんは女子の番長になっていたでしょう。


「僕達が千穂と一緒に居ない時は、ずっと一緒に居るようだけれど、一体何を考えているのかなぁ、大上君は」


 白ちゃんが含みを交えた言葉で、冷めた表情のまま告げますが、大上君はにこりと笑みを返すだけです。


「嫌だなぁ。俺は赤月さんと協力しながら、発表の準備を進めているだけだよ。君達だって、赤月さんを手伝いたいと思って、ここに居るんだろう?」


 暗に、「だから、口を動かすよりも手を動かしたら、どうかな?」という言葉が聞こえた気がしたのですが気のせいですよね。


 ですが、ことちゃんはすでに戦闘態勢に入っているようで、整った顔が台無しになるほどの般若顔で大上君を睨んでいます。


 ことちゃん達と大上君の相性は最悪なようです。やはり、三人の顔を合わせるべきではありませんでした。


 ですが、先に発表準備を手伝うと言ってくれたのは大上君だったので、彼を除け者になんて出来るわけがありません。

 ……二人で発表準備をやるとことちゃん達に伝えた途端に即行でこの教室に来た時点で、何となくこうなることは分かっていましたが。


 私は一人、深い溜息を吐きながら黙々と作業を進めるしかありませんでした。

 

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