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幼馴染達、大上君を威嚇する。

 

 三人で静かにご飯を食べていると、まだ先程の話が続いていたのか、ことちゃんが一つだけ溜息を吐きました。


「……私だって、自分でも過保護だと分かっているけれど……。それでも千穂は人見知りだから、色々と心配なのよ」


 ラーメンを豪快に啜りつつも、ことちゃんはどこか不安げな表情を私へと向けてきます。


「でも、千穂だって、そろそろ幼馴染離れしないと、成長しないぞ? ……いや、幼馴染離れが出来ていないのは小虎の方か」


 もぐもぐと親子丼を口の中へとかき込みつつも、白ちゃんは冷静に言葉を告げます。

 すると、その言葉が心に突き刺さったのか、ことちゃんは顔をぐにゃりと歪ませます。


「ううっ、嫌だぁ! 私の小さくて可愛い千穂と離れるなんて……! せっかく、今まで千穂に近づく不埒(ふらち)な輩を滅してきたというのに! 大上伊織という、どこの馬の骨とも分からぬ奴が近づいて来るなんてぇっ!」


 もはや、自棄酒(やけざけ)ならぬ自棄(やけ)ラーメンのように、ことちゃんが食べているラーメンはあっという間に減っていきます。口の中に吸い込まれていると言っても過言ではありません。

 そう言えば、大食いが得意でしたね、ことちゃんは。


 ことちゃんはラーメンの器に入っているスープを全て飲み切ってから、どんっとテーブルの上に置きました。


「──つまり、恋人どころか、友達の関係も認めないってことかな?」


「そうだ! ええい、大上伊織め! 今度、会った時にこの右手で滅して──ん?」


 今、ことちゃんの言葉の前に聞き慣れた声がしましたね。目の前の白ちゃんからではありません。


 何となく、気配を感じた私が右隣りを見てみるとそこには笑顔の大上君がいました。


 いつの間に隣に座ったのでしょう。全く気配がなかったので気付きませんでした。気配遮断が上手すぎて引きます。


「やあ、赤月さん、こんにちは。今日のお昼ご飯は日替わり定食のハンバーグか。美味しそうだね! あ、一口、俺に『あーん』をしてくれたりは……」


「しません! ……それよりも、どうしてここにいるんですかっ」


「友達と一緒にお昼ご飯を食べたいと思うのは、普通のことだろう? いただきまーす」


 そう言って、大上君は彼のお昼ご飯であるかつ丼を食べ始めます。


「って、待てぇっい! お前……なに、勝手にうちの千穂の隣に座っているんだ? あぁ?」


 おっと、まるで目が合った瞬間に喧嘩を吹っ掛ける人のような言葉を吐きながら、ことちゃんが大上君を睨んでいます。


 でも、使っていた割り箸の先端を大上君へと向けて、ナイフのように扱うのは()めた方がいいかもしれません。


「君は赤月さんの親友で幼馴染の山峰小虎さんだっけ? そして、隣に座っているのが冬木真白君」


「げっ……。何で私らの名前を知っているんだよ……。気持ち悪い……」


「名前を知っているだけで気持ち悪いと言う言葉は初めて聞いたけれど、確かにあまりいい気分はしないね。……それで、どうしてここに居るのかな、大上伊織君?」


 白ちゃんは冷めた表情でにこにこと笑っています。

 ああ、これは機嫌があまり良くない時の表情ですね。女の子達に言い寄られて、あしらっている時と同じ顔です。


「理由? そんなの、赤月さんと仲良くなりたいからだよ。それに俺達は友達になったんだし、一緒にお昼ご飯を食べても不思議じゃないだろう?」


 そう言って、大上君は威圧と冷風をぶつけてくることちゃん達の視線を緩やかに流しつつ、かつ丼をもぐもぐと食べます。


 あ、人のご飯を見ていると、ちょっと食べたくなる気持ちが分かる気がします。……欲しがりませんし、あげませんけれど。


 それにしても何といいますか、この幼馴染二人を目の前にして、悠々と自分のやりたいことをやっている人は初めて見たのである意味、尊敬しますね。


 何せ、ことちゃんは先程から殺気のようなものを出して大上君を睨んでいますし、白ちゃんは吹雪を出しています。

 見ているこちらの方が、身体が縮みそうです。


 今は四月で穏やかな気候であるはずなのに、この場だけ凄く寒い気がします。気のせいではありません。

 

 

目次の下に扉絵を入れてみました。

興味がある方は、宜しければご覧ください。

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