後奏21
戸口に現れたのは、己を失神させた張本人であった。
背の高い顔立ちの整った青年に、ミスカは頬を染める。
一方リリアはミスカの手をぎゅっと握りしめ涙目状態を
必死にこらえている。
ハルフォードは伏し目がちに部屋に入るやいなや
片膝をつき首部を深く垂れて静かに謝罪の言葉を述べる。
「先日は驚かせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
謝罪が遅くなったこと、重ねてお詫び申し上げます。
恩人に再会できると有頂天になり、我を忘れてしまった次第です」
「ルルカさんがあなたの?」
ハルフォードはすっと顔を上げ、はにかんだ微笑みを浮かべながら答えた。
「私が幼き頃、母を失い自暴自棄になったところを救っていただきました。
その後ずっと会いたいと願っていたのですがその機会に恵まれず、
ようやく会えると思っていた矢先の不始末だったのです」
青年の瞳には曇りがなく、態度や物言いから誠実さが感じ取れた。
ーこの方にとって、ルルカさんは本当に大切な存在だったんだわ!
それを、私、ぶち壊しにしたんだわ!
どうしましょう・・・
どうお詫びすればいいの?
心の中で葛藤していてじっと見つめられていることにも気づかなかったけれど、
小さなつぶやきで我に返った。
「お顔はそっくりですが、ルッカとはやはり違いますね」
目があった。
ルルカのことをルッカと愛称でよぶこの青年を見て、
初めて怖くないと思ったと同時に、胸がどきんとしたリリアなのだった。




