後奏20
リリアとミスカのもとにマルーカ様が戻られたのは、
ちょうどお茶を飲んで一息ついたタイミングだった。
戸口を開いたままマルーカ様はリリアに問いかけた。
「リリアさん、あなたとどうしてもお話したいと申している方がおられるの。
入室を許可してもかまわなくて?」
ー今はミスカお姉様がご一緒ですもの。
恐くなんかないわ!
「はい。大丈夫です。
どうぞお通しして下さい」
そういうと、ミスカがリリアの手を励ますようにぎゅっと握りしめた。
そうして戸口にあらわれたのはー
一方こちらは、領主専用応接室。
側任えの青年が入れてくれたお茶をのみながら、世継ぎの君は
心配そうにつぶやいた。
「大丈夫かな、ハールは・・・
また、失神させていないだろうか?
素直なのはいいが、堅すぎるんだよな~
特に、女性に対して。
おそらく初恋の君の印象が強烈すぎるんだろうな。
まあ、無理ないか。
あれほどの舞を舞うのだからな・・・」
そう言ってあの時の舞のことを思い出しているのか、
ほんのり頬を染める若君を見て
ロイもあの時のことを思い出す。
グラディアス様に忠誠誓った時、
それ以外のことは捨て去ったはずなのに
舞をみたときの衝撃とその後の何ともいえない清々しさは
時がたっても鮮明に残っている。
まだどこかあどけなさを残しつつ大人へと変わりゆく少女の
みせた奇跡。
ー成長のあかつきには、さぞかし美しくなられることでしょう。
あれほどの強力なオーラを放っておいでなのですから
ハルフォード様が虜になるのも無理ありませんね。
それぞれがそれぞれの思考の海に沈んでいく中,
静かな雨音だけが静寂を破る。




